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UnfairCity  作者: やきたらこ
二話~突然振ってかかった災難~
7/16

強襲

 週末、土曜日の日中の事だった。

 仕事が休みの、月雲由斗つくもゆうとは特に用事も無く街を歩いていた。

(プライベートの友達が少ないのも考えものだな)

 仕事仲間は沢山いるが、プライベートの友達といえばアイリス・マクロウェルくらいしか思い浮かばない。遠い異国の地なのでしょうがないのだが。


(『裏では色々』とか評判悪いけど、この街も中々いいところなんだよな)

 出店で商売に精を出すボテ腹中年店主。大きな公園で遊びまわる子どもたち。多くの人が休日の中、仕事に勤しむ美人キャリアウーマン。

 誰もが自分のしていることに、いきいきとしていた。

(ギャングの奴らも、『シャバには手を出さない』みたいに配慮してるんだろうな)

 ならず者たちが好き勝手すれば、この平和な人々は唯では済まない。

 感謝しつつ―感謝することに疑問を覚える月雲だったが―信号が青に変わったので、歩みを再会させる。


 そろそろ帰ろうか、と思った月雲は狭い路地(近道)へと足を踏み入れた。

 その時、向かって来る人物が一人。歳は月雲より少し上くらいだろうか。変わった風貌で、黒のスカート、黄色のセーターの上に医者が羽織るような白衣を纏った女性だ。不審なことに、黒いサングラスと白いマスクで顔を覆っている。

 特に面識もない通行人なので、別に意識もせず通り過ぎる。

 しかし、


 白衣の女はゆらりと力無く月雲へ倒れかかった。

「だ、大丈夫ですか?」

 咄嗟に抱きとめる月雲。対する白衣の女は薄く笑っただけだった。

 不気味な人だな、と思いつつしっかりと抱きとめる。

「立てますか?」

 返事は無かった。代わりに、


 鋭く、冷たい感触が月雲の左腹部に刺さった。その後、燃えるような痛みがこみ上げ、月雲は顔をしかめる。

 そんな月雲の耳元で女は小さく囁く。

「(大きな声をあげるとどうなるか?)」

 すぐに刺さった物をぐりっ、と動かす。

 その少しの動作だけで、月雲の全身を鋭い痛みが駆け巡った。右腹部の周辺に痛みがわだかまるが、既に何かを刺された箇所は痛みを通り越して麻痺していた。


 視線を確認すると、医療用のメスのようなものが刺さっていた。

「(……何の……………つも…りだ?)」

 途切れ途切れの言葉を繋げる月雲。しかし答えは返ってこない。

「(これから、私の家へ来てもらうわ。抵抗する権利は無い。すればどうなるか?)」

「痛ッ!!」

 ぐりぐりとメスのようなものを動かす白衣の女。

「(分かった、分かったから。ついていきますよ)」

 月雲の言葉を聞いた白衣の女はゆっくりと慎重に、歩き出した。それに合わせて月雲も歩く。なによりも腹を引き裂かれたくない。



「乗って」

 ピンク色の一般的な乗用車だ。車種は……月雲が知る由もない。

 されるがまま、後部座席に押し込まれる月雲。

 勢い良くメスを引き抜く白衣の女は、白い布を月雲に渡してこう言った。

「これで、場所を抑えてて」

 引き抜かれた時は、痛みがもう一度全身を駆け巡ったが、今はじんじんと熱を感じるだけだ。

 白い布を押し当てると、じんわりと赤い染みが広がった。

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