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UnfairCity  作者: やきたらこ
一話~巻き込まれる少年~
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ディナーへの招待

「お疲れさまでした」

 片付けに専念しつつ、先輩上司たちを見送った。残ったのは一番下っ端の月雲由斗つくもゆうと品川修司しながわしゅうじだった。

「さっさと終わらせちまおう」

「おぅ」


 せっせと、資材や道具類を片付ける月雲と品川。

 月雲が最後の資材を片付けた直後だった。

 突如、アメリカの有名アーティストの曲が荷物置き場から微かに聞こえてきた。それを聞いた品川は、からかい調で言った。

「お呼びだぜ、王子様」

「そんなんじゃねぇって」

 荷物の方へ向かう月雲。

 そんな彼の背中へ声が投げかけられた。

「今日はもうあがっていいぞ〜後はやっとくから〜」

 その優しさに甘えることにした月雲は手を振り返す。

「ありがとう!! この埋め合わせはいつかまた!!」

 品川はサムズアップをすると、作業に戻ってしまった。



 さっさと荷物をまとめ、職場を後にした。

(アパートで待ってる? 急がなきゃ)

 駆け足でボロアパートへと向かった。




「遅い……どれだけ待ったと思う?」

「ゴメン、アリス。仕事で長引いちゃって」

「まぁ、いいわ。早く着替えてきてね。汗臭いその格好じゃ車に乗せられないから」

 アイリス・マクロウェルに指された方を見る。

 影で見えなかったからだが、アパートと隣接する別の道に大きな大きな黒の長い車が。

「これは…………セレブの方が乗る金の方舟では?」

 頬を赤らめたアイリスは腕組みして言った。

「そ、そんなんじゃないわよ!! いいから着替えてきて。時間が無いからシャワーはいらないから」

「お、おぅ」

 頷いた月雲は急いで階段を駆け上がった。




 LEDの光の渦を切り裂き、黒のリムジンは進む。そのリムジンの中の月雲は、アイリスの隣に座って萎縮していた。

 暗い赤のTシャツの上に黒のパーカーを羽織り、普通のジーンズ地のパンツ。靴は黒のスニーカーと、いたって平凡な服装だった。隣のアイリスはビシッときまったスーツだった。どうしても見劣りしてしまう。

「もう少し、マシな服無かったの?」

「いやぁ、申し訳ない。なにせお金が無いもので」

「そういえば、私が割ったガラスの修理代弁償してなかったわね? いくら?」

 言うと、軽く小切手の髪をスーツジャケットの内側からヒラリと取り出し、テーブルでボールペンを構えている。

「そんな、悪いよ」

「悪い事したのは私よ?遠慮しないで、ほら」

 その後月雲は申し訳なさそうに金額を伝え、大金の価値の紙切れをしっかりと受け取った。

「これが、セレブの力なのか………………」

「お母様とお父様の力よ…………汚い金」

 ぼそりと吐き捨てる。捨ててしまいたいくらいだが、誰かの為に使えるならまだ使い道はあるという。

「やっぱ価値観が違うのかねぇ」

「なんのこと?」

 月雲は頭の後ろで両手を組み、言葉を続けた。

「俺ならお金はいくらあっても足りないけどな。ヤクや武器には手を出さないけどな」

 苦笑交じりに言うと月雲はテーブルのグラスに一口付ける。

「苦ッ!! 甘いのか? ってかワインかよ!!」

「あら、お酒は十六からよね? そういえばジャパニーズは二十歳からだっけ? ぶどうジュースとでも思った?」

 クスクスと笑うアイリスを苦笑いで睨み、ぐいっとグラスの中の物を飲んだ。

「分かった。俺、中々どうしてお酒には弱いみたいだ。軽くクラクラしてきた」

「いえ、ユートは標準よ。アルコール度数少し高めですもの」

 と、アイリスは言うが、優雅に飲むその姿は中々様になっている。


「着いたわ」

 中々大きな家だ。崖っぷちに建っており、少し突き出した形になっている為、ベルエムシティを一望出来る景色は凄そうだ。

 リムジンから降りた月雲は一つ疑問を口にした。

「ここに、一体何の用が? 」

 アイリスは何の気も無しに答えた。

「私の家よ? ディナーにでもと思って」

「先に言ってくれよ、もう少しはマシな服はあったわ」

 アイリスに連れられ、家へ入る。

 いつものクセで靴を脱ぎそうになるが、我慢我慢。


 続く、大きな部屋にいたのは二人の男女。一人は白髪の混じった壮年の男だが、老いはほとんど感じない。もう一人は、まさにキャリアウーマンといった金髪の女性だ。その髪色は月雲の傍らに立つアイリスと似通った色調だ

「紹介するわ。ユート・ツクモ。私の命の恩人よ」

 大袈裟なのでは? と思うがペコリとお辞儀。一歩前に進み出たのは中年の男性。

「娘を救ってくれてありがとう。私はフレドリクソン・マクロウェル。フレッドと気軽に呼んでくれ」

 差し出された手を握り返す、月雲。その手はシワが刻まれていたが温かかった。

「私はミレイユ・マクロウェル。本当に感謝しています」

 同じくらいの年齢のキャリアウーマンとも握手を交わす。夫同様とても温かかった。

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