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Prologue
〜Prologue〜
轟々と燃え盛る業火。
降り注ぐ雨はその炎を消せないでいる。
炎から少し離れた場所。頬にすすを付け、泣き崩れる少年がいる。
彼が抱きかかえるのは二人の男女。
――父さん――母さん――
少年はありったけの声で叫ぶが、二人は目を開けない。
――交通事故――
残酷な四文字が少年の頭の中でぐるぐると巡る。
少年は叫び続けた。雨の中、両親を奪った炎の前で。ひしゃげて燃え盛る二台の車の前で。
無能な警察は少年に目もくれず、ずさんな交通整備に勤しんでいる。
野次馬たちは少年に同情的な視線を向けるが、誰も助けようとはしない。
高校一年生の夏の出来事だった。
あれから一年の時が過ぎた。英語も大分喋れるようになったし、社会でやっていけそうだ。