ルーチェの力
だんだん意識が戻ってくる。
そろそろ起きようとすると突然
ピュッ
と言う音と共に鼻に痛みが走った。
ちょうど、プールで鼻に水が入った感じだ。
「にゃあああ⁉」
「あ、やっと起きた。」
「何すんだルーチェ!」
「だって、ヒエンが2日も起きないから。」
いやいや、ルーチェ?だとしても、どうしてそんなに地味な起こし方を?
「私、エルフィン呼んでくる。」
「分かった。いってらっしゃい。」
トテトテと走ってルーチェはエルフィンを呼びに部屋を出た。
あれだけみると子供なんだけどなあ…
さて、今のうちに状況を整理するか。
まず、ここはいわゆる異世界のレスティア
ここには様々な種族がいる
精霊や神様が普通に認知されている
魔法がある
おそらく、いろんな神話に出てきた生き物もいる
エルギニウスさん曰く、すべての精霊眷属魔法が使える
身体能力が地球の頃より高くなっている(これはあくまでもこの間のワイルドボアと戦ったときの感覚だが)
「ヒエン!大丈夫⁉」
「のわあああ⁉エルフィン?いきなり入ってくるな!びっくりするだろ!」
状況を整理して考え事をしているときにいきなり入ってきたからびっくりした…
「ヒエン殿、やっとお目覚めになられたか。」
「あんたはたしか…ガイルだったっけ?」
「はい。先日は失礼いたしました。」
「あー、別にいいよ。それと、その話し方やめてくれないかな?固っ苦しくて仕方が無い。」
「ヒエン、それは無理な話ね。ガイルは昔からこの話し方だから。」
えー、マジで?こういうのと話すの嫌なんだよね…
「ヒエン、私も忘れないで。」
「ああ、ルーチェ悪かったな。呼びに行かせて。」
そういっておらはルーチェの頭を撫でた。
「ん…許す。」
「ヒエン殿、突然で申し訳ありませんが、あなたの力をお貸し頂きたいのです。」
本当に突然だな。それと、俺は病み上がりだぞ?
「理由は?」
「それは光精霊眷属魔法が関係あります。光の精霊は浄化の力を持っています。」
「つまり、浄化したい人か何かがあると?」
「はい。その浄化して頂きたいのが姫…エルフィン様のお母様、すなわち、ここフロンティーネの森の長耳族の族長であるセルヴァ・フォン・フロンティーネ様です。」
え?
「フロンティーネの森って俺がルーチェやエルフィンと会ったところで合ってる?」
「ええ、そうよ。」
「そして、エルフィンが姫?族長の娘?」
「ええ。」
これは……
「失礼しまっしたあああああああああ‼」
俺は病み上がりにも関わらずベッドからダイビング土下座をした
「え?ちょっと、いきなりどうしたのよ!」
「いや、まさか姫様とは知らずにいろいろ失礼なことを言ってしまったから、一族そろって処刑されるとおもって…」
「そんなことしないわよ!むしろあなたは私の命を救ってくれたんだからむしろこっちが感謝しなきゃならないくらいよ。」
「そうか。そういってもらったら気が楽になった。」
本当に良かった…異世界にきて2日で死ぬとかマジ勘弁だからな。
「ねえ、そろそろ話しを戻すわね。ヒエンに私のお母さんを浄化して欲しいの。」
「どうして?光の法陣魔法とかないの?」
「それがね、法陣魔法があるのは炎、水、風、雷、大地の五種類しかないの。」
「光と闇はやっぱりなんか違うのか?」
「光と闇の精霊は法陣魔法が作れないのよ。光と闇の精霊眷属魔法は本当にごく一部しか使えないの。」
「どうして?」
すると、ルーチェが
「そこは私が説明する。私達光の精霊と闇の精霊はみんな眷属支配の儀式ができるのが、産まれつき決まっているの。自分の魔力と適合するひとしかできないのよ。適合するかどうかは私の声が聴こえるかどうかで決まるの。ちなみに、眷属支配の儀式をしたあとは他のひとでも私の声は聴こえるわ。」
「へえー。でも、どうしてルーチェはどうして異世界の住人である俺がその適合する者だったんだ?普通はこの世界の奴とだろ?」
「それは私にも分からない。」
本人にも分からないんだったら仕方が無いか。
「ルーチェ、とりあえずエルフィンのお母さんのところに行こう。」
「わかった。」
「ありがとうヒエン。」
「こっちです。」
そこから10分ほど歩いたところで
「ここです。」
ここかあ。なんとなくだけど禍々しいっていうかなんというか…
「ヒエンも分かる?ここすごく嫌な感じ。あいつの力の感じもする。」
「あいつ?」
「そう、闇の精霊デネブラ。」
「闇の精霊か。ルーチェが浄化だとすると、デネブラは呪い的な感じか?」
「そう。多分、エルフィンのお母さんはどこかで闇の精霊眷属魔法を受けたんだと思う。」
「そうか。よし、とりあえずやってみよう。」
「ごめんね。会ったばかりのヒエンにこんな事頼んじゃって。」
エルフィンはうつむいてそう言った。
「何言ってんだ別にいいよ。これは俺とルーチェがやりたいからやるんだ。」
「あ、ありがとう…」
「ヒエン、かっこつけすぎ。」
いやいや、ルーチェ?それは言わないでおこうよ。うわ、なんかすっげえ恥ずかしい。
「と、とりあえずそろそろ本当に行くぞ。」
「頑張って。ヒエン、私はここにいるから。」
「ルーチェが来ないと使え無いだろ!」
「チッ…」
舌打ちしやがった…
ギィっと言う音を立てて扉が開き、俺たちは部屋に入った。
「ハァ…ハァ…ガイルですか?ここには誰も入れるなと…⁉誰ですかあなたは!」
「俺はヒエン・アサギリあんたの娘のエルフィンに頼まれてきた。今からあんたを浄化する。」
「浄化?何を言っているのですか?光の精霊眷属魔法が使えるわけではないのでしょう?」
「使えるから来たんだよ。ルーチェ。」
「うん。やっぱりデネブラの影響だよ。今デネブラ自身はいないけど、力の痕跡がある。」
「な⁉ルーチェ?ルーチェとは、光の精霊ルーチェですか?」
やっぱり驚くよね。
「さっき言ったように、今からあんたを浄化する。そのままじっとしていてくれ。」
「わかりました。では、お願いします。」
ふぅ、集中だ。この人からこの嫌な感じのする力を出すイメージ。
《我が願いしは聖なる光。闇の力を祓い癒しを与える祝福の力なり。光の精霊ルーチェよ我が魔力を糧とし、我が願い叶えたまえ。》
すると、セルヴァさんをワイルドボアのときと同じように光が包み始めた。すると、
「ギュオオオオオオ!」
セルヴァさんよ体から黒い犬みたいなのが出てどこかへと飛んで行った。
「今のは?」
「多分、デネブラの劣化種だと思う。」
それよりも成功したのかな?
「大丈夫ですか?」
「ええ。先ほどまでが嘘のように体が楽です。」
よし!成功だ!
「よかったねヒエン。」
「ああ。エルフィン達を呼んできてくれ!」
「わかった。」
ルーチェが呼びに行くと、すぐさま
「お母さん!」
「セルヴァ様!」
エルフィンとガイルが入ってきた。
「よかった。よかったよぅ…お母さん助かったんだね。」
「ルーチェ、出るぞ。今は二人だけで話させてやろう。ガイル、ちょっといいか?」
俺の意図を察したのかガイルは
「かしこまりました。」
そして俺たちはバタンと扉を閉めた