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第20話

そこは真っ白いトコだった。

目の前にいるただ一人を除いて、そこに色はない。

「やっほー、チトセ! 初めまして、かな?」

「あんたがキュレオリア?」

「うん、そう。キューちゃんでもレオちゃんでも好きなように呼んでね♪」

ちょっと待て、こんなにテンション高いキャラだったのか? キュレオリアって……。

大人しそうな外見してるクセに。何か力が抜けるなぁ。

「……あんた、さっき何か力貸したでしょ」

「うん。だって絶体絶命の大ピンチだったじゃない? 普通はああいう所でカッコイイ王子様とか従者とかが助けに入るのが王道だと思うんだけど、それも望めなかったんだもん。ちょっとくらいなら、いいかなぁって」

「いいかなぁって、オイ。あんた、ずっと見てたワケ?」

「まさか。ずっとじゃないよ。ビューが私を起こそうってした時からかな?」

「それって、ほぼずっとじゃん。つーか、何で出てこなかったのさ。陛下はあんたに会いたがってたんだよ」

「あはっ、そうみたいだね」

「あはっ、ってあんたね」

「だって、私もう死んじゃってるんだもん。もう四十年も前にね。今はチトセが私の魂を持ってるワケじゃない? 私はそんな出しゃばりじゃないもん」

「ふん、あっそう。つーか、あんたがあのワガママ自己中を育てたんでしょ? 一言、文句言わせてもらうからね」

「う〜ん、ごめんねぇ。でもビュー、普段はしっかりした子だよ?」

「……知ってる」

いくらあたしに会いに来ても、公務だけは絶対手を抜かないって、ジュトーの兄さんが言ってた。

そしてキュレオリアが、ちょっと困ったような顔をする。

「結局、私がビューを捨てちゃった形になるしね。いくらビューが魔王になった後とは言っても、なってからの方が寂しかったと思うし、何度謝っても足りないくらい、悪いと思ってるよ」

「それでもいい、恋だったの?」

「うん。私は後悔してないよ。権力なんかより、あのひとの方が大事だったんだもん」

「相手、人間だって?」

「うん。旅人でね、行き倒れてた所を私が見つけて、地上の別荘で看病したの。その後はもう、恋に落ちるってこういうことなんだって思ったくらい唐突にね、好きで好きでたまらなくなっちゃって、でもすごく悩んだんだよ。私は魔族で、しかも魔王の姉でしょ? これでも結構魔力強いんだよ。寿命は多分、あのひとの何十倍もあったと思う。結局、二人して死んじゃったけどね。あのひとね、東の人間の国の王弟だったんだって。兄王に追われて、この国まで逃げて来たけど、追っ手に見つかっちゃってね。次に生まれ変わる時は、あのひとと同じ人間に生まれたいなぁって思ってたら、本当に人間に生まれ変わっちゃって、起きた時びっくりしたもん」

「……いいの?」

「何が?」

「だから、ホントにあんたが表に出なくて」

「やっだなぁ、チトセったら。いいって言ってるでしょう? それにあのひとがいない世界に生きてもしょうがないもん。このまま何度も生まれ変わってたら、きっとあのひとにまた会えると思うんだ」

そう言うキュレオリアの目は、キラキラ輝いてて、なんか眩しい。

ちょっと羨ましいんかな、あたし。

「私はチトセと同じ魂だけど、同じひとじゃないよ。核が同じだけ。ビューもそれを分かってると思うよ。自分を捨てた私より、きっとチトセのことが大事だよ、今は」

「それ、微妙に嬉しくない。あたしはこっちも嫌いじゃないけど、帰りたいんだってば」

「う〜ん、ビューの姉としては、残念って言っておくね。って、そろそろかな」

「は? 何が」

「あのね、私は本来は眠ってるっていうのかな? そういう状態なの。なのに無理矢理起こされちゃって、一つの魂が二人の人格を動かすのって負荷が結構かかるのね。魔力も私が使っちゃったし、そろそろまた眠る時が来るの」

「お別れってコト?」

「だから違うってば。私はチトセの中にいるから。でももう出てこないよ。多分、私が眠ったら姿も元に戻るんじゃないかな」

「ホントに?」

「うん。あれは私を起こそうとして、私が拒否したから体だけ起こされちゃった状態なんだもん。あっ、そうそう。一つ、チトセに頼みごとしたいんだけど、いい?」

「内容によってはね」

「大丈夫だって、そんなに難しいことじゃないもん。手紙をね、渡して欲しいの。今チトセが使ってる部屋の、白い鏡台のひきだしの奥にあるから。それをビューに渡して欲しいんだ。四十年前、渡せなかった手紙」

「オッケ。分かった。渡せばいいんでしょ?」

「有難うチトセ! じゃ、そろそろ眠るね。最後にチトセと話が出来て良かったよ。ふつつかな弟だけど、よろしくね! 根は悪い子じゃないから!」

「ちょっ、待てや! コラ! 消えるな! よろしくねじゃねぇだろ! オイ!」

「あははははは、ば〜いば〜いき〜ん♪」

「いや、マジであんたが起きたのはあの時か! だったら何で、いつもあんぱんにコテンパンにされてるばいきん野郎の捨てゼリフが言えるんだ!?」

うおっ、引っ張られる! つーか弾き跳ばされる!

白の世界がぐちゃぐちゃに混ぜた絵の具みたいに歪んでるじゃん!

ぎゃあぁぁぁぁぁぁ! 目が回るし!

ヴぇ、気持ちわるっ!

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