ハルマゲドン二人前でお願いします〜出来るだけの世界〜
亀井とは人類の総称だった
不動産屋で働いている知人が家賃の取り立てにいくというのでついていった。築40年くらいのボロアパート一階に住む亀井(仮名)というおっさんで、小学生の息子と2人暮らし。3万8千円の家賃が半年以上たまっており、3ヶ月間音信不通なんだとか。
部屋の鍵が開いたままだったので「亀井さーん、亀井さーん」と台所までズカズカ入ると、中は荒れ放題で洗濯物や食べくさしのコンビニ弁当、日用品が散乱しており、サラ金から追い立ての電話が鳴っていた。ボーっとしていると、奥の部屋から『亀井一輝』という名札のついたガキがニョロっとでてきたのであった。すかさず知人がそのガキに「お父さんは?」と話しかけようとすると、ガキは思いっきり名札を隠しながら「亀井はもう一人います...。僕は三階にすんでるほうの亀井ですから...」と、小さく雨の中外へ走り去っていってしまった(ちなみにこのウチには三階は存在しない)。それにしてもこの息子もさぞかし不協和音な名前を授かったものであーる。
こども目線から見ると、武富士やアイフルや闇金と同じく、私たちも単なる取り立て屋に過ぎないんだなあと思うと、なにやらさもしい気持ちになり、知人に「なんとかならないもんかねぇ?」と聞いたら、知人は「なんとかしたらウチが倒産しちゃうんだよネ~」といたって真顔で答えた。
ところで、そんな知人の働く不動産屋は先週、小倉に住む田中というじじいに30万円詐欺られたばかりだ。遺産相続で27億の大金が入ったので知人の不動産を通じて巨大な老人施設を建てたいという取引話。早大狙いの小学生が北京ダック喰いながらイスラエル語で『そんなアホな話ありえへんやろ』とツッコミを入れたくなるお粗末な展開が以下だ。
どうやら田中「大金を手にしたら色んな人が金目当てに寄ってきましてね。人間不信で死にたくなりました。その点、こちらの不動産はお金目当な話をせず、親身に話を聞いてくれる人間味のある昔ながらの立派な店だと噂に聞きまして、はるばる北九州からやってきたのです。手に入ったお金は、家がなくて住む場所に困っている同世代の老人の役に立ちたいと言うことで、老人ホームとちょっとした自分の家を建てたいと思っています。アラっ? どうやら財布をなくしたようです。財布の中には家の権利書と現金50万が入っていたんですが...困りました。もしかしたら、そちら様とも面白い仕事が出来るかもしれないと思ったのですが」
そこで知人「ところでおくらお困りなんですかねぇ?」
どうやら田中「たったの30万円」
翌日知人は廃人になったそーだ。
ちなみに本日、亀井のウチへお昼の12時から3分おきにキッチリ電話を鳴らしていたら、親父にとうとう繋がったらしい。
亀井「月末までに出来るだけ払います。出来るだけ払います」
知人「出来るだけっていくらなら払えるんですか?」
亀井「出来るだけ払います」
知人「5万だったら払えるんですか」
亀井「出来るだけ払います」
知人「出来るだけ払いますって具体的にいくらなんですか」
亀井「月末に出来るだけ払います」
知人「出来るだけっていくらなら払えるんですか?」
亀井「出来るだけ払います」
とのやり取りだったそーだ。
取り立てが仕事の始どというこの知人も、一時期脳味噌がアレになったそーで、どーでもいいセールスのおっさんにさえ「いきなり邪険にせず、とりあえず丁寧に聞いてあげて丁寧に断る。お互いさまの精神」で接した時期があったらしい。そのお陰で「絶対売れんやろ、こんなもの」と小学低学年ですら確信するであろう、100円ショップで売っているような記念品用の時計や、コーヒー模様のボストンバッグを百個ずつ買わされたそうだ。
しかし毎週ウチにくる『ハルマゲドンご存じですか?』のおばさん。だから毎回二人前くれって言ってんだろが。さっさとハルマゲドンくれよ。それに第一声がハルマゲドンじゃチョット工夫が足りないねーんだよ。ウ◯コ喰えウ◯コ!!
『10円でもいいから払います』。自分の弱さと向き合えたら世界は広がっていくだけの物語〜世界とはそのような小銭の積み重ねで出来ている~




