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第16章 古い章を閉じる書類

 三日後……。


 木陰のある道沿いに、シャニアの職場の黒いセダンがゆっくりと停車した。目の前には、朝の光を反射してきらきらと輝くアルカディア・プライム・サヌール・ビルのガラス張りのファサードがそびえている。


 ハンドルを握るシャニアは、車の流れを妨げないよう、あえて正規の車寄せには入らなかった。


 トリアは深く息を吸い込み、膝の上に置かれた茶色い封筒を指先でそっと握りしめた。中には、サンティが速達で送ってくれた卒業証明書の原本と、身分証明書のコピー、そして昨晩修正を終えた履歴書がきれいに収められている。


 今朝の彼女は、七分袖のクリーム色のブラウスに、ストレートカットの黒いパンツを合わせていた。髪はゆるくまとめ、耳元に数本の遅れ毛を残している。


「本当に中までついて行かなくていいの?」シャニアがハンドルに手を置いたまま振り返った。


「ええ、シャニアさん。それに、もう自分の職場に向かわなきゃいけないでしょう? 私のせいで遅刻したら大変だから」トリアは柔らかい声で答えた。


 シャニアは誇らしげに微笑んだ。「分かったわ。いい? 何かあったらすぐに電話するのよ」


「はい」トリアは力強く頷いた。


 トリアは車のドアを開けて降りた。歩道に少しの間立ち止まり、サヌール特有の潮風を肌に受ける。左手首の華奢な腕時計に目をやり、約束の十分前に到着したことを確認した。


 意識を集中させるために大きく深呼吸をしてから、彼女は一切の躊躇なく自動ドアを通り抜けた。


 エントランスに入ると、数日前に言葉を交わした警備員が再び機敏な動作で立ち上がった。


「おはようございます。何かお手伝いしましょうか?」警備員が愛想よく尋ねる。


「おはようございます。人事部のバスカラ部長に、応募書類を提出しに参りました」トリアは落ち着いた声で答えた。


「ああ、それでしたらロビーで少々お待ちください。バスカラ部長は先ほど到着され、こちらに向かっているところです」警備員はそう言って、ソファのエリアへトリアを案内した。


 トリアは頷き、ふかふかとした大理石模様のソファの一つに腰を下ろした。待ち時間の間、慌ただしくなり始めたオフィスの様子を観察する。


 ほのかなラベンダーの香りが再び鼻腔をくすぐり、そのリラックス効果のおかげで心拍数は一定に保たれていた。


 ほんの数分後、入り口のドアが開いた。中に入ってきたバスカラは、優雅に座っているトリアの姿をすぐに見つけた。


「トリアさん! 時間通りですね」バスカラが彼特有の親しみやすい笑顔で声をかけた。


 トリアはすぐに立ち上がり、丁寧にお辞儀をした。「おはようございます、バスカラ部長」


「おはよう。さあ、すぐに手続きができるよう、私の執務室へ行きましょう」バスカラはついて来るように手で合図をした。


 トリアはバスカラの隣を歩き、エレベーターホールへ向かった。ドアが開くと同時に二人は中へ入る。バスカラが三階のボタンを押そうとしたその時、エントランスの方から慌ただしい足音が近づいてくるのが聞こえた。


「待ってください!」


 反射的に、バスカラはドアが閉まらないよう手で押さえた。少し息を切らした男性が乗り込んでくる。


「ありがとうございます、バスカラ部長」男性は少し乱れたシャツを整えながら言った。


 バスカラは軽く頷いた。「どういたしまして、ユダ君」


 その名前を聞いて、トリアの胸がかすかにざわめいた。呼吸を整えたばかりのユダが、バスカラの隣にいる人物へと顔を向ける。瞬時に、彼の視線がトリアの目と交差した。


 ユダの表情は一瞬で劇的に変化した。驚きから安堵へ、そして頬にほんのりと朱が差す。少し身なりが乱れた状態でトリアに会ってしまったことに、彼は照れを感じていた。


 しかし、それは長くは続かなかった。彼は小さく微笑み、とても優しい声で挨拶をした。


「おはよう、トリア」


 トリアもその微笑みに応えた。彼女の顔をより生き生きとさせる、心からの笑顔だった。「おはよう、ユダ」


 二人の間に立っていたバスカラは、すぐに眉を上げた。彼は面白がるような、探るような表情でユダとトリアを交互に見つめた。


「おや? 君たち二人は知り合いなのかい?」バスカラが興味深そうに尋ねる。


 ユダは頷き、リラックスした、しかし礼儀正しい口調で答えた。「はい、部長」


「昔から?」バスカラは、この興味深い情報を逃すまいとするかのように再び尋ねた。


 ユダはゆっくりと首を振った。一瞬だけトリアに視線を送り、再びバスカラを見る。「いえ……つい最近です。昨日、ジャカルタからの飛行機が偶然同じだったんです」


 バスカラは納得したように何度も頷き、意味深な笑みを口元に浮かべた。「なるほど。世間は狭いものだな」


 チンッ


 デジタル表示が三階を示すと同時に、エレベーターの到着音が狭い空間の静寂を破った。ドアがゆっくりと開き、温かな照明と整然とした床が広がる廊下が姿を現す。


 ユダが先に足を踏み出した。彼は少し立ち止まり、礼儀正しい動作でバスカラとトリアの方を振り返った。


「それでは、私は先に行きます。バスカラ部長。トリアも」ユダが別れを告げる。


 トリアは短く頷いて応え、バスカラは親しげに短く返事をしただけだった。その後、トリアはバスカラの後に続いて廊下を進み、昨日も訪れた重厚な木製のドアの前に到着した。


 執務室に入ると、バスカラはすぐに自分の大きな椅子に腰を下ろした。一方のトリアは、彼のデスクの真正面にある来客用の椅子に座る。


 トリアは背筋を伸ばしつつも硬くならず、両手を膝の上に静かに置いた。それは、彼女の中に再び芽生え始めた自信を示すしぐさだった。


「書類は持ってきましたか?」バスカラが話を切り出した。その声はプロフェッショナルでありながらも、親しみやすさを帯びている。


 トリアは持参した封筒を、両手でバスカラの方へ差し出した。


「こちらが書類です。すべて揃っております」トリアが言う。


 バスカラは封筒を受け取り、中を開けて一枚ずつ確認し始めた。室内の空気が急に静まり返る。バスカラが卒業証明書の原本、身分証明書のコピー、そして履歴書をめくる紙の擦れる音だけが響いていた。


 バスカラの表情は中立を保ち、その目はトリアのジャカルタでの職務経歴を一行ずつ素早く読み取っていく。


 トリアにとってはかなり長く感じられた数秒が過ぎ、ついにバスカラの口元に小さな笑みが浮かんだ。彼はしっかりとした軽い音を立てて、茶色い封筒を閉じた。


「すべて揃っています。何の問題もありません」バスカラはトリアを見つめながら言った。「明日から出社してください。アルカディア・プライム・サヌールへようこそ、トリアさん」


 その言葉を聞いて、トリアの顔に柔らかく心からの笑顔がぱっと広がった。


「本当にありがとうございます、バスカラ部長」トリアはそう言って手を差し出した。


 バスカラはその握手に温かく応じた。「どういたしまして。君ならこの会社に良い貢献をしてくれると確信していますよ」


 間髪入れず、バスカラは机の上の受話器を取った。内線番号をいくつか押し、落ち着いた声で話し始める。


「ユダ君、少し私の執務室に来てくれないか」


 再びその名前が呼ばれたことに、トリアは少し驚いた。それから間もなく、部屋のドアがゆっくりと開く。新たな任務を引き受ける準備ができているかのような小さな笑みを浮かべ、ユダが入り口に姿を現した。


「何でしょうか、部長?」ユダが礼儀正しく尋ねる。


 バスカラはトリアの方へ視線を向けた。「ユダ君、トリアさんを管理チームのところへ案内してやってくれ。他の同僚たちに紹介して、彼女のデスクを教えてあげてほしい。明日から彼女は働き始めることになった」


 バスカラは一瞬トリアを見てから、再びユダに視線を戻した。「君たちはもう知り合いだろう。だから、君が案内した方がトリアさんも安心できると思ってね」


 ユダは力強く頷き、その笑顔はさらに真みを帯びた。「承知いたしました、部長」


 トリアは椅子から立ち上がり、少しの間ユダを見つめた。彼の眼差しはとても穏やかだった。彼女の胸の内に安堵感が忍び込む。少なくともこの新しい場所で、完全に孤立しているわけではないのだ。


 トリアは再びバスカラの方を向き、軽くお辞儀をした。「改めて、ありがとうございました、バスカラ部長」


「どういたしまして、トリアさん。また明日会いましょう」バスカラが親しげに返す。


 トリアは背を向け、ユダの後に続いて部屋を出た。背後で木製のドアが閉まった瞬間、彼女は自分の足取りが以前よりもずっと軽くなっているのを感じた。


 ジャカルタから背負ってきた重い荷物は、あのドアの向こうに置いてきたかのようだった。それに代わって、サヌールの地で芽生え始めた新たな希望が彼女を満たしていた。


新しい職場でのスタート、緊張しますね。ユダさんとの距離がまた縮まりました。これからどんな日々が待っているのか、一緒に見守っていきましょう。ブックマークしていただけると嬉しいです。

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