第12章 相反する二つの世界
刺すような午後の日差しが、半分閉まったブラインドの隙間からハルランの執務室に忍び込んでいた。エアコンが一定の音を立てて稼働しているにもかかわらず、空気は重く息苦しい。彼は机に肘を突き、前かがみになって、乱れ始めた髪に指を突っ込んでいた。
夜明けからずっとトリアに連絡を取り続けているが、電話には出ず、メッセージには既読がつかない。彼女のInstagramのストーリーすら、一度も閲覧されていなかった。
彼はスマートフォンを強く握りしめ、乱暴な動作で机に放り投げた。プラスチックとガラスがぶつかる硬い音が、静まり返った部屋に響く。暗い画面を見つめていると、空港で見かけた見知らぬ男の姿が再び脳裏をよぎった。背筋の伸びた体格、落ち着いた態度、そして、まるで昔から知っているかのように、ためらいなくトリアを抱き寄せたあの仕草。
「くそっ!」
朝から抑え込んでいた感情のせいで、ハルランの低い声はかすれていた。彼はこめかみを揉み、絶え間なく渦巻く思考を追い払おうとした。あの男は誰だ? トリアはいつからあいつを知っている? 俺の浮気がばれる前から、二人は親しかったのか?
どきどき……
突然、スマートフォンが震えた。ハルランは瞬時にそれを掴み取ったが、画面に「クラリッサ」の名前が表示されたのを見て、その目は失望に見開かれた。彼は一瞬息を止め、やがて通話ボタンを押した。
「ああ、分かったよ、ハニー」
彼は疲れを隠しきれない声で、無理に温かさを装って答えた。
「もしもし、あなた! ランチに迎えに来てくれない?」
ハルランは黙り込んだ。口を半開きにして、会議、締め切り、体調不良と、言い訳を探したが、どれも現実味がなかった。
「ハルラン?」
クラリッサの声が、少し鋭くなった。
「ああ……分かった。オフィスで待っててくれ」
彼はついにそう答えた。その声は平坦で、感情が抜け落ちていた。
スマートフォンを置き、ゆっくりと立ち上がる。椅子の背もたれにかかっていたジャケットを羽織った。部屋を出る足取りは重かったが、チームの作業エリアを通り抜ける際は、極力普段通りに見えるよう振る舞った。
エレベーターへ向かう廊下で、給湯室の方向から突然サンティの姿が現れた。ハルランは即座に方向を変え、早足で近づく。何も考えず、背後から彼女の腕を掴んだ。その勢いで、サンティは急に立ち止まった。
「ちょっと!」
サンティは即座にその手を振り払い、素早く振り返った。その目は不快感に細められている。
「気安く触らないで」
ハルランは半歩後ずさり、口を開きかけてはまた閉じた。笑みを作ろうとしたが、その表情はぎこちなく、ほとんど哀願するようだった。
「悪かった……ただ、トリアの様子を聞きたくて。彼女、元気にしてるよな?」
彼は少しうつむき、深く息を吸い込んだ。サンティは瞬き一つせず、無表情のまま彼を見据えている。
「あなたに関係ある?」
彼女は皮肉たっぷりに、低い声で言った。
「今はクラリッサがいるんでしょ? 彼女のことだけ考えてればいいじゃない」
ハルランは慌てて首を振った。
「俺はただ……知りたいだけなんだ」
サンティはため息をつき、冷淡に答えた。
「元気よ。あなたがいない方が、ずっとね」
彼女は背を向け、歩き出そうとした。
だが、ハルランは反射的に再び手を伸ばし、サンティの腕を掴もうとした。しかし今度は、サンティの反応の方が早かった。彼女が力強くその腕を払いのけると、ハルランの手の甲が壁に激突した。
「痛っ!」
ハルランは顔をしかめ、自分の手首を握りしめた。
「次触ったら」
サンティは振り返らずに言った。その声は低く、鋭かった。
「人事部に報告するから」
ハルランは言葉を失い、荒い息をついた。彼が何かを言う前に、サンティはすでに遠ざかっていく。彼は慌てて追いすがり、切羽詰まった声を上げた。
「待ってくれ、サンティ! あの男……空港でトリアと一緒にいた男は……誰なんだ?」
サンティの足が止まった。その体がこわばる。彼女はゆっくりと振り返り、眉をひそめた。
「どの男のこと?」
「あいつが彼女を助けた時、俺が—」
ハルランは言葉を詰まらせ、その先を続けることができなかった。
サンティは目を細めた。実際のところ、トリアが旅立ってから、彼女はまだ連絡を取れていなかった。
「あなたの言う男が誰なのか、知らないわ」
彼女は正直に答えたが、その声のトゲは消えていない。
「それに、興味もない」
彼女は再び背を向け、今度はさらに歩調を速めた。ハルランは手を伸ばそうとしたが、サンティは素早く身をかわした。指先すら触れさせない。付け入る隙は全くなかった。
ハルランは結局その場に立ち尽くし、宙をさまよった手は、やがて力なく体の横へと落ちた。彼は長く息を吐き出し、肩を落とした。
見知らぬ男と共に去っていくトリアの幻影が、再び脳裏にこびりつく。今度はさらに深い苦い感情が伴っていた。彼は完全に主導権を失っていた。
彼はゆっくりとエレベーターに向かって歩き、二度と振り返ることなく下りボタンを押した。扉が開き、中へと足を踏み入れる。その顔は虚ろで、答えの出ない焦燥の影だけが残されていた。
揚げエシャロットとローリエの香りがキッチンから漂い、シャニアの家をささやかな温もりで満たしていた。トリアがフライパンの火を止めたばかりで、皿に盛られた目玉焼き乗せナシゴレンからは、まだ白い湯気がゆっくりと立ち上っている。
彼女は木べらをコンロの脇に置き、料理をダイニングテーブルへと運んだ。その視線が、テーブルの上に置かれた自分のスマートフォンをかすめる。
画面は朝から点滅を繰り返していた。十八件の不在着信、数十件のWhatsAppのメッセージ、そしてハルランのアカウントからのInstagramのDM。そのすべてが、懇願や質問、あるいは繰り返される哀れっぽい言葉で埋め尽くされている。
『どこにいるんだ?』『心配してる』『あの時一緒にいた男は誰だ?』
トリアは一つも開いていなかった。まだ直視する覚悟ができていない傷口のように、通知が積み重なるのをただ放置していた。
彼女はテーブルの脇で立ち止まり、ゆっくりと手を伸ばしてスマートフォンに触れた。指先が画面の上でためらいがちに宙を舞う。ハルランに応えることにまだ慣れきっている彼女の中の小さな一部が、返信しろと背中を押す。しかし、ようやく安堵の息をつき始めた彼女の中のより大きな部分が、その動きを引き止めていた。
決断を下す前に、玄関のドアが開く音がした。潮風が入り込み、それに続いて早足の足音と明るい声が響く。
「すごくいい匂い! 何を作ったの、トリア?」
トリアは小さく肩を跳ねさせ、すぐにスマートフォンをテーブルに置いた。シャニアがサンダルを脱ぎながら入ってきて、仕事用のバッグを下ろし、リビングのテーブルに置く。彼女の髪は少し乱れていたが、その瞳は明るく、エネルギーに満ちていた。
「目玉焼き乗せのナシゴレンです、シャニアさん」
トリアは答えた。
シャニアはすぐにテーブルに近づき、皿の上の料理を見て目を輝かせた。
「わあ! 自分で作ったの? これ、ジャカルタ風のナシゴレンね? ケチャップマニスが入ってて、エシャロットがカリカリで……」
彼女は小さく笑い、木製の椅子に腰を下ろした。
トリアも向かいの席に座った。二人は心地よい沈黙の中で食事を始めた。シャニアは昼休みの時間を利用して、わざわざ家に戻ってきていた。トリアの様子がまだ少し心配だったのだ。
何口か食べた後、シャニアはゆっくりとスプーンを置いた。
「それで……これからのこと、何か考えた?」
トリアはうつむき、皿の上のご飯を見つめた。
「まだです……どうしたらいいか分からなくて。ジャカルタに戻る心の準備もできていません。でも、ここにいて……これ以上シャニアさんに迷惑をかけ続けるのも嫌で」
シャニアはゆっくりと頷き、優しく、しかし何かを思案するような目でトリアを見つめた。数秒が過ぎ、やがて彼女の表情が変わり、何か名案を思いついたようだった。
「それなら……しばらくの間、ここで働いてみるのはどう?」
トリアは顔を上げ、少し眉を上げた。
「働く? バリでですか?」
「そう。昨日、知り合いと話したの。バスカラっていうんだけど、ある会社の人事部長をしててね。今、オフィスの事務員を探してるらしいの。仕事内容はそんなに重くなくて、書類の整理とか、メールの対応、社内の連絡係くらい。給料は標準的だけど、ここで生活するには十分よ」
トリアは黙り込んだ。指先でスプーンの柄を弄りながら、視線を宙にさまよわせる。頭の中で天秤にかけていた。私はまた働ける状態なのだろうか? 新しい日常に向き合うだけの強さが、今の私にあるのだろうか?
シャニアは彼女を見つめ、静かに言った。
「お金のためだけじゃないわ、トリア。働くことは気分転換にもなる……あいつのことばかり考えずに済むようにね」
トリアは大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。少しずつ口角が上がり、小さく、心からの笑みがこぼれる。
「分かりました……やってみます」
彼女はシャニアを見つめた。その瞳には、かすかな光が宿っていた。
「面接はいつですか?」
「このランチが終わったら、すぐに行くわよ」
シャニアは即答した。
トリアは目を丸くした。
「えっ? 今からですか? でも……準備しないと。だって――」
「大丈夫よ」
シャニアは卵焼きをかじりながら、言葉を遮った。
「カジュアルな面接だから。彼のオフィスで会って、五分か十分くらい話すだけ。正式な書類は後からでいいの。大事なのは、あなたが直接行って、本気だってことを示すことよ」
トリアはまだためらっているようだったが、シャニアの目にある確信を見て、その迷いは徐々に崩れ去っていった。彼女はゆっくりと頷き、今度は先ほどよりも少しだけ大きく微笑んだ。
「はい。準備はできています」
シャニアはついに満足そうに微笑み、再びナシゴレンを食べ始めた。テーブルの上では、トリアのスマートフォンが暗い画面のまま静かに横たわっている。それはまるで、置き去りにされ始めた過去のようだった。忘れたからではない。ただ、前に進むことを選んだからだ。
ジャカルタとバリ、対照的な二人の状況でした。トリアが新しい一歩を踏み出します。応援よろしくお願いします。ブックマーク忘れずに。




