冥帝
森が、終わっていた。
木は途中で折れ、地面は沈み、空気が冷たい。
音が、ほとんどしない。
三人は足を止めた。
その瞬間だった。
頭の奥に、重たい何かが落ちてくる。
言葉ではない。
だが、はっきりと理解できた。
――冥帝のドラゴン。
龍は、息を吐いた。
「来たな」
幸人は弓を構える。
かんたは、無言で一歩下がった。
影が、地面の奥から浮かび上がる。
闇のドラゴンよりも大きい。
動きは遅いが、圧が違う。
踏み出すだけで、地面が沈む。
幸人が矢を放つ。
――弾かれた。
音すら、鈍い。
龍が距離を詰め、剣を振る。
刃は当たった。
だが、止まった。
押し返される。
次の瞬間、冥帝のドラゴンの腕が振り下ろされた。
龍は避けきれず、地面に叩きつけられた。
衝撃で、息が抜ける。
幸人が位置を変え、連続で矢を放つ。
どれも、決定打にならない。
「……硬い」
冥帝のドラゴンが、ゆっくりと頭を向ける。
視線が合った。
かんたは、完全に固まっていた。
次の一撃が来る。
そう、全員が理解した。
だが――
冥帝のドラゴンは、そこで動きを止めた。
低い音を立て、地面に伏す。
眠るように。
場違いな沈黙。
「……?」
誰も、理由が分からない。
冥帝のドラゴンは、そのまま動かなかった。
三人は、距離を取る。
戦いは、終わっていない。
ただ、止まっただけだった。




