力比べ
その日の夜。
火は小さく、周囲は暗かった。
かんたは地面に座り、枝をいじっている。
龍が、ふと口を開いた。
「お前、弱いだろ」
一瞬、沈黙。
「……は?」
かんたが顔を上げる。
「弱いって言った?」
「言った」
「いやいやいやいや!」
勢いよく立ち上がる。
「俺は強いから! 本気出してないだけだから!」
そう言って、かんたはどこからか妙な物を持ってきた。
丸い板。
ロープで吊るされ、軽く固定されている。
「パンチの力を測るやつ!」
「……測れるのか、それ」
「測れる(らしい)!」
測定方法は単純だった。
板を殴って、どれだけ飛ばせたか。
横に刻まれた印は、一つでだいたい俺が使っている長剣の1/5程度だ。
「俺からいく!」
かんたが構え、思いきり殴る。
――ゴン。
板は揺れ、少しだけ移動した。
「……一、二、三……」
かんたが数える。
「十二!」
自信満々に言った。
龍は何も言わず、次に出る。
一撃。
音と同時に、板が視界から消えた。
ロープが切れ、装置ごと倒れる。
「……壊れたな」
幸人が言う。
「じゃ、じゃあ次は幸人で!」
幸人は無言で一歩前に出る。
一撃。
今度は、支柱ごと倒れた。
しばらく、誰も喋らなかった。
「……もう一回!」
数日後。
かんたは、少し形を直した装置を持ってきた。
殴る。
板は前より飛んだ。
「百六十!」
満足そうに言う。
龍は、うなずいた。
「前よりは、な」
「だろ!?」
幸人は弓の手入れを続けている。
夜は静かだった。




