カマボコのドラゴン
六日後。
森を抜けた先で、妙な群れに遭遇した。
地面を這うように動く、平たい胴体。
脚は短く、羽はない。
飛ぶ様子もなかった。
その瞬間、頭の中に何かが流れ込むことはなかった。
「……弱いな」
龍が言った。
幸人は弓を構えたが、すぐに下ろす。
「名前、来てない」
「だろ」
龍は剣を持ち直す。
「カマボコのドラゴンだな」
「は?」
かんたが間の抜けた声を出す。
「前に、東方の島国の者だって言ってたやつがいてな。
そいつが言ってた“カマボコ”ってやつに、形が似てる」
「……羽もないし、ドラゴン感なくない?」
「名前が来ないなら、こっちで呼ぶしかない」
それで終わりだった。
戦闘は短い。
地面を這って迫ってくるだけで、速さもない。
矢は普通に通り、剣も通る。
数は多かったが、抵抗らしい抵抗はなかった。
群れは、あっさり倒された。
「……雑魚だな」
龍が言う。
その後、一体の死骸を見下ろし、かんたを見る。
「毒味」
「え?」
「毒味」
「いやいやいや、なんで俺!?」
文句を言いながらも、かんたは小さく切られた肉を渡される。
「少しでいい」
「それ少しの問題じゃないだろ……」
渋々、口に入れる。
しばらく待つ。
倒れない。
苦しそうでもない。
「……今のところ、平気」
「よし」
龍はうなずいた。
火を起こし、肉を焼く。
匂いは悪くなかった。
「普通に食えるな」
「俺、毒味役固定?」
「今のところな」
かんたは何か言いかけて、黙った。
その日は、羽のないドラゴンを食って終わった。




