謎の男の名はの名は[かんた]だった
朝の空気は、冷たかった。
火はすでに落ちている。
灰の中に、かすかに熱が残っているだけだった。
龍は目を覚まし、身体を起こす。
昨日の痛みは残っていたが、動けないほどではない。
少し離れた場所で、幸人が立っていた。
金属製の黒いアイガードはそのまま。
弓を点検し、矢を確かめている。
「朝だな」
龍が言う。
「ああ」
それだけだった。
ふと、地面に横たわる影が目に入る。
昨夜、森から出てきて、弓を向けられた途端に倒れたやつ。
まだ動いていない。
龍は近づき、軽く蹴った。
「……起きろ」
反応がない。
もう一度、少し強めに蹴る。
「おい」
その瞬間、影がびくっと跳ねた。
「うわっ!」
勢いよく起き上がり、後ずさる。
足をもつらせ、尻もちをついた。
「な、なんだここ!?」
慌てて周囲を見回し、二人を見て固まる。
剣を持った男と、弓を構えた男。
次の瞬間、そいつは両手を上げた。
「ま、待って! 敵じゃないから! たぶん!」
龍は顔色を変えない。
「たぶん?」
「いや、その……」
言葉に詰まり、視線を泳がせる。
幸人は無言で弓を少しだけ持ち上げた。
「ひっ……!」
そいつは一歩下がり、そのまま座り込む。
「……かんたです」
小さな声で言った。
「名前?」
「うん。たぶん」
龍と幸人は、一瞬だけ視線を交わした。
「……どうする」
「連れてく」
幸人は短く答えた。
「え、ちょ、ちょっと待って!? 俺、戦えないから!」
「知ってる」
幸人はそう言って、弓を下ろした。
朝の森に、風が吹く。
こうして、三人目が加わった。




