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The-Dragons  作者: イグアナ


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23/23

停滞

 獣のドラゴンは、追ってこなかった。


 それが、かえって不気味だった。


 拠点は、谷から少し離れた岩場にある。

 仮の場所だ。

 防御も、快適さも最低限。


 それでも、生きて戻れた。


 かんたは、まだ眠っている。


 呼吸は安定しているが、

 目を覚ます気配はない。


「……予想より、重いな」


 幸人が言った。


 弓の整備をしながら、視線は外に向けたままだ。


 龍は、力嶽の前に立っている。


「想定は?」


 力嶽は、少し間を置いた。


「下だった」


 即答だった。


「余裕でな」


 それ以上、言い訳はしない。


「俺の想定では、

 初動で一人は動けると思っていた」


 龍は思い出す。


 幸人が吹き飛ばされた瞬間。

 かんたろうが貫かれた瞬間。


「……現実は違った」


「違いすぎた」


 力嶽は言った。


「格が違う。

 あれは、ただの王じゃない」


 拠点に、沈黙が落ちる。


「だから、今は行かない」


 力嶽が続けた。


「かんたは寝たままだ。

 人数も、力も足りない」


 龍は頷いた。


「……やることは?」


「鍛える」


 短い答え。


「戦い方を変える。

 身体も、判断もだ」


 その日から、訓練が始まった。


 派手なものはない。


 走る。

 重いものを運ぶ。

 剣を振る。


 同じ動きを、何度も繰り返す。


 幸人は、距離と位置取りを徹底的に詰められた。


「撃つ前に、

 立ち位置を考えろ」


 力嶽の声が飛ぶ。


 龍は、受け身と踏み込みを繰り返す。


「力任せは、もう通じない」


 何度も、地面に叩きつけられた。


 夜になると、拠点で最低限の生活をする。


 食う。

 寝る。

 見張る。


 単調だ。


 だが、緊張は切れない。


 かんたの横には、

 いつも誰かがいる。


 力嶽が、手をかざしている時間もあった。


 長い。


 本当に、長い。


「……すぐには起きないな」


 幸人が言う。


「ああ」


 龍は答えた。


 外で、風が鳴る。


 獣のドラゴンは、まだいる。


 だが今は、行かない。


 行けない。


 力嶽は、焚き火を見つめたまま言った。


「勝つための準備だ」


 誰も反論しなかった。


 停滞は、

 次の戦いの前触れだった。

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