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The-Dragons  作者: イグアナ


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21/23

 谷の最奥に、それはあった。


 館だった。


 石造りで、崩れてはいない。

 だが、手入れされた形跡もない。


「……ドラゴンの巣にしちゃ、整いすぎだろ」


 かんたが呟く。


 扉は、最初から開いていた。


 中は暗い。

 外の光が、ほとんど届かない。


 一歩踏み込んだ瞬間、

 空気が変わった。


 重い。

 湿っていて、息がしづらい。


「……嫌な感じするな」


 幸人が低く言う。


 進むしかなかった。


 足音が、やけに響く。

 壁には、何かが染みついた跡がある。


 臭いは、血と腐臭が混じったものだった。


 どれくらい歩いたか分からない。


 そのときだった。


 ――圧。


 言葉にする前に、

 身体が理解した。


 前方の闇が、動く。


 巨大な影。


 頭の奥に、

 確実な“理解”が落ちてきた。


 獣のドラゴン。


 龍は剣を抜いた。


「来るぞ――」


 言い終わる前だった。


 轟音。


 次の瞬間、幸人の姿が消えた。


 吹き飛ばされた。


 壁に叩きつけられる音が、遅れて届く。


「幸人!」


 声をかける間もなかった。


 黒い影が、横から動く。


 鈍い音。


「……っ」


 かんたの腹が、貫かれていた。


 牙か、爪かは分からない。

 ただ、確実に“抜かれている”。


 血が、床に落ちる。


 まずい。


 龍は即座に判断した。


 このままでは、全滅する。


 ――力嶽。


 背中の装備に手を伸ばす。


 弓でも、剣でもない。


 小さな金属筒。


 火打石付きの信号筒だ。


 力嶽に言われていた。


 「届く合図を用意しろ。

  音と光なら、必ず分かる」


 龍は噛み石を叩いた。


 甲高い音。


 同時に、

 赤い火花が天井へと走る。


 瘴気の中でも、

 はっきり分かる光。


 その瞬間だった。


 背中に、

 強烈な衝撃。


 肺の空気が、一気に抜ける。


 視界が、前に投げ出された。


 床が、迫る。


 意識が――


 途切れる寸前、

 低い咆哮が、確かに聞こえた。

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