元凶
谷に、休む暇はなかった。
光が消えた直後から、
原生種のドラゴンは動きを変えている。
単独で来ない。
二体、三体で距離を詰める。
「右!」
幸人の声。
龍が剣を振る。
鱗が弾け、血が飛ぶ。
倒れる前に、もう一体が来る。
「……数、減らねえな」
かんたが息を切らしながら言った。
その直後だった。
狙いが、明確に変わった。
一体が、龍でも幸人でもなく、
かんたに向かった。
「うわっ!?」
避ける。
だが、次の瞬間、別方向からもう一体。
逃げ道が、狭い。
「……やっぱ俺かよ!」
かんたが走る。
追う。
迷わない。
原生種の動きが、
はっきりとかんただけを追っている。
「囮にされてる!」
幸人が叫ぶ。
「違う」
龍は剣を振り抜きながら言った。
「狙われてる」
一体を斬る。
もう一体が、かんたに飛びかかる。
間に合わない。
「――っ!」
かんたが転がり、
牙が、すれすれで地面を抉る。
龍が割り込む。
首を断つ。
ようやく、間が空いた。
数を減らし、
血と死体が地面に残る。
八体のうち、半分以上が倒れていた。
「……休むぞ」
龍が言う。
全員、限界に近い。
岩陰に身を寄せ、
最低限の呼吸を整える。
そのとき、足音がした。
月城力嶽だ。
「……今のを見て、分かったか」
誰も答えない。
「原生種が、統率されている」
力嶽は淡々と言う。
「元は、一つだ」
龍が顔を上げる。
「……元凶か」
力嶽は頷いた。
「獣のドラゴン」
名前だけが、落ちた。
「龍の王だ」
その言葉に、空気が変わる。
「原生種や唯一種の発生源はコイツだ、
コイツによりドラゴンという存在を循環させている」
かんたが、唾を飲み込む。
「……じゃあ、そいつを倒せば」
「終わる」
力嶽は即答した。
「少なくとも、
この地獄はな」
龍は剣を見下ろす。
光のドラゴンの血は、
まだ刃に残っていた。
「……決まりだな」
幸人が言う。
力嶽は背を向ける。
「ここから先は、
狩りじゃない」
一拍。
「討伐だ」
谷の奥で、
遠く、低い咆哮が響いた。
まるで、
聞かれていたかのように。




