光-1
光は、最初からそこにあった。
強まるでもなく、消えるでもない。
ただ、一定の明るさで、谷を覆っている。
影が、正しく落ちない。
龍は剣を構えたまま、動けずにいた。
視界はある。
だが、距離が信用できない。
一歩踏み出す。
思ったより、地面が遠い。
「……くそ」
剣を振る。
感覚だけを頼りに。
空を切る。
次の瞬間、衝撃が来た。
横からではない。
上でもない。
どこから来たのか分からないまま、
龍の身体が弾かれ、岩に叩きつけられる。
息が抜ける。
立ち上がろうとした瞬間、
視界が白く弾けた。
焼けるような光。
反射じゃない。
直撃でもない。
それでも、目が追いつかない。
幸人の矢が飛ぶ音がした。
当たったかどうかは、分からない。
「……見えねえ」
声が、少し遠い。
歩く音がする。
ゆっくりだ。
それなのに、近い。
ただ歩いているだけで、
空気が押し返される。
原生種の気配が、周囲にある。
だが、近づいてこない。
ここだけが、別の場所になっていた。
龍は歯を食いしばる。
剣を握る手が、熱を持っている。
火傷じゃない。
圧だ。
前に出れば、致命傷。
下がれば、追われる。
判断する時間が、与えられていない。
光の向こうで、
何かが、頭を下げた。
次に来るのは、
確実に重い。
龍は、足を止めた。
攻めるか。
耐えるか。
まだ、答えは出ていない。




