訓練-1
朝だった。
月城力嶽は、すでに立っていた。
動いていないのに、近づきづらい。
「始める」
それだけ言って、背を向ける。
「え、なにから?」
かんたの声は無視された。
最初は走りだった。
ただの走りではない。
坂。
岩。
ぬかるみ。
止まれば、蹴りが飛んでくる。
「止まるな」
月城の声は、近い。
いつの間にか、すぐ横にいる。
龍は歯を食いしばって走った。
足が重い。
肺が焼ける。
幸人は無言で続く。
だが、呼吸が乱れている。
かんたは、早々に転んだ。
「無理無理無理!」
起き上がろうとした瞬間、視界が揺れた。
「立て」
月城が、かんたの背を踏む。
「はい!!」
昼になった。
休憩はなかった。
次は剣だった。
龍が構える。
「違う」
月城が一歩で距離を詰め、剣を叩き落とす。
「力を出す前に、姿勢が死んでる」
何度も。
叩き落とされる。
立て直す。
また叩き落とされる。
腕の感覚がなくなっていく。
次は弓。
幸人が構える。
「撃つな」
月城が言う。
「狙うな。感じろ」
「……は?」
矢を放った瞬間、月城が横から弾いた。
「甘い」
その繰り返し。
夕方。
かんたは、何も持たされなかった。
「え、俺は?」
「逃げろ」
「は?」
次の瞬間、石が飛んできた。
必死で避ける。
足がもつれる。
転ぶ。
「死ぬぞ」
月城の声が落ちる。
夜。
三人は地面に転がっていた。
誰も、すぐには動けない。
「……これ、何日やるんだ」
かんたがかすれた声で言う。
月城は答えなかった。
代わりに、朝が来た。




