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プロローグ

「……い、おーい、お兄ちゃーん?」


誰かが呼んでいる。


ああ、せっかく寝ていたのにうるさいな……


「うるせ……あと5分……」


いや、10分、30分……1時間半……


「──起きろやクソ兄貴ィ!!」

「ったぁ゛あ゛!?んだよ……誰がクソ兄貴だ誰が!」

「起きなかったお兄ちゃんが悪い」


突然、耳元で叫ばれたかと思えばげし、と思い切り体を蹴られた感覚があり、飛び起きる。

思わず不機嫌になりキレながら見れば、呆れた様子の実弥がいた。


「お母さんが面倒臭いからって私に起こすの代わりにやれって言うの、はあ、いっつもあんた寝坊助だからやりたくないのに」

「黙っていればすらすらと……今何時?」

「ん」


アラームを見ると、時刻は……


「……どうしてもっと早く起こさなかったぼけみやァ!!」

「起きなかったのはお前だろクソ兄貴!」


ぎゃーぎゃー言いながらもすぐに移動し、登校の準備をし始めた。



「はあ……なんとかなった〜!」

「全く、お兄ちゃんは朝が弱いの何とかならないの?」

「一生治らん」

「即答?!」


通学路をとぼとぼと歩きながら、何とか忘れ物もせず、いつも通りの時間で向かうことが出来る。

実弥とたわいもない話をしながら、信号が青になったのを見て、渡ろうとするが──


ふと、見えたのはスピードが緩むことのないトラック。


考える前に


勝手に体が動いて──


「──ッ、実弥!!!」


ドォン、と。


 鈍く、重い衝撃が全身を駆け巡った。


 熱い。痛い。いや、痛いという感覚すら通り越して、感覚が消えていく。

 視界が真っ赤に染まり、地面に叩きつけられた衝撃で肺の空気が強制的に吐き出された。


「……お、にぃ……?」


腕の中を見る。


 俺の腕の中で、実弥が目を見開き、信じられないものを見るような顔でこちらを見上げていた。


(……生きろよ、実弥)


 声にはならなかった。

 ただ、最期に妹を助けられたことを確認出来て、安心した。


 薄れゆく意識は、深い闇の中へと溶けていく。



──晴れ渡る空の中、赤子の声がひとつ響いた。


(うう……なんだよ、せっかく気持ちよく眠ってたのに)


 その声に顔を顰めつつも不機嫌そうに和也は起きようとする……のだが、起きれなかった。何かがおかしい、身動きが自由に取れない。そして視点も何やら変なのだ。


 ──ベットの中で確かに寝ていた。


 しかしここはベットの上では無い。何か柔らかく温かいものに包まれている感覚だ。


 そして先程から聞こえる赤子の声……それは自分自身のものであったのだ。


「───おぎゃぁ!おぎゃぁ!!」


「生まれましたよ奥様!ご無事です!」

「ああ、ああ!よかった、本当に良かった……!」

「───おぎゃぁ、おぎゃぁあ!!」


赤子の泣き声、安堵した声、喜ぶ声……様々な人の声が耳に入る。

ここは病院なのだろうか?

何故赤子の声がする?


「───おぎゃぁ、おぎゃあぁ……」


……待てよ、待てよ。

まさかとは思うが、まさか……


「名前は……決めました。この子の名前は……アムール。アムール・カーネリアンです!」


「……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?!!?」


新しく生まれ変わってるーーーー!?


うそだろ、そんなのありかよ!なんかこの展開どこかで見たことあるぞ、よくあるな○う系じゃん!マジで嘘だと言ってくれ……


(実弥のところに帰っ……あ……)


状況把握に必死で、思わず現実逃避しそうになるが妹のことを思い出し、突き落とされる。


──そうか、もう、戻れないんだ。


あの時、たしかに感じたのだから。命が消えゆく感覚を。身体がぼやけていくような、あの恐ろしい感覚を。


「……」


一瞬、もう一度死ねば戻れるだろうか、なんて馬鹿みたいなことを考えるが、そんな時、目の前の母親らしき人と父親らしき人の幸せそうな笑顔を見た。


「ふふっ、とっても元気ね!ディア、これからの将来が楽しみだわ」

「ああ、そうだねレア!この子は君に似たとても美しい眼をしているね。いい炎使いになりそうだ。」


「……」


こんな、いかにも今が一番幸せです!といった様子の夫婦を裏切るような行為は、流石に、自分がどんな状況であろうと無いな、と思った。


そうなると、もう、自分はここで生きるしかないんだ。


この、日本ですらないどこかで。


俺はまた、ゼロから始めなければいけない。


「……」


拝啓、かつての母さん、父さん、元気にしていますでしょうか。


俺は今、多分人生の中で一番絶望しています。

初めましての方は初めまして。何番煎じですが異世界転生物を書きました。これからも不定期で更新していきますので何卒ご贔屓に……

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