黄昏時の画廊茶館
メニューを乗せたイーゼルを店内に入れると。
今日の営業はお終いです。
「瞳子ちゃん、お腹空いたの」
先ほどから、カウンターへと突っ伏している遙さん。
「ケーキが食べたいの」
突っ伏したままで、ぴくりとも動かない遙さん。
「はいはい」
可愛い結衣ちゃんみたいです。
私は肩をすくめて頷くと。
ととんっ! と、弾むような足どりで。
よいしょっ! と、開く大きな冷蔵庫の大きな扉。
まぁるいフルーツケーキを取り出しました。
色とりどりの果物を挟んだ、ふわっふわのスポンジを、
キルシュの香りが上品な、たっぷりの生クリームで包みました。
刃を温めたナイフで、手早くケーキを切り分けようとしましたが。
(ええと……これで足りるのでしょうか?)
私は、ほうっと溜息をひとつ。
「瞳子特製、フルーツたっぷりのケーキです!」
私はぺこりとお辞儀をひとつ。
ホールのまま、ケーキをカウンターの上へと置きました。
「お腹を空かせた遙さん、どうぞたくさん召し上がれ」
「いい香り、とっても綺麗ね。食べるのがもったいないわ!」
甘い香りにくすぐられ、飛び起きて歓声を上げる遙さん。
(でも、食べちゃうんですよね?)
ひとくち食べれば、心がふわっと温まる。
甘~いケーキには、少しほろ苦いブレンドを添えましょう……。