最小単位の英雄
遠くでサイレンの音が聞こえる
俺は出勤用のリュックサックに財布とスマホを入れ充電器もきっちり入れてた
今見るとなんか余裕あった感じに見えるな
実際そうなのだろう…俺が楽観的すぎるのか脳内麻薬の作用か生命の危機という物語くらいでしか接する事がないような状況に現実感がわかずなんとなく大したことなく日常に戻れるだろうなんて思考放棄して楽観視をしてた。
もしいま想起している俺がこの時に戻れるなら俺は冷静に傘を取って転んだと見せ掛けて自分の喉を貫くだろう
己は冷静と嘯きたらればをかたるのは滑稽だな。
そんなこんなで冷静さ何て微塵もなく俺は獣と同じただの生存本能でどうにか玄関までたどり着いた所で限界らしく冷たいタイルの上に座り込んでいると背中でドアを叩く振動とインターホンが聴こえた
俺の日常が終るお迎えだ
「んふふふ」
人生での禍福の記憶が文字通り血が沸騰し溢れた頭を駆け巡り笑みが溢れた
限界だと思っていた俺は立ち上がりドアのロックを外し自力て外に出たんだ。
生存本能てすごいよね
雪が揺る直前の鼻がいたくなる北国特有の空気を感じながら助かると思った。
この場面を今想起して改めて感じるよ
何より尊く美しいかけ替えの無い命を懸命に守ろうとするという英雄、其は全ての生物に寄り添う己という最小単位の英雄の姿なのだろう…
「ありがとう小さき英雄、お前のお陰で今俺は命を拾った」
そして死にかけている俺へどうか言わせて欲しい
「さよなら俺の未來こんにちは新しい人生」きっと後悔するぞ英雄」
どうでも良い自分語りだ
本当に限界が来た俺は一歩もふみだせず鍛え抜かれた濃厚な雄の薫りがする命の繋ぎ手である良い男、救命救急士の肩を借りながタンカへ背中を預けた。
「向日さん向日さん」
良い男に名前青生年月日体調や良い男の指の数やらをたすまねられ其に応答する。
ちゃんと真面目にこたえましたよ
良い男達かま言うにはなんでも俺の住居の周辺こと「何もない事で県民達には有名な町には対応出来る病院が無いらしく30分ほど離れた総合病院に運ばれるらしい」
俺は一生この町の事を何も無いではなく救急車が運べる病院が無い町として覚えているだろう
そんな事情から俺と良い男達のドライブは延長コースとなった
「向日さん向日さん」
「向日さん」
延長コースとなった俺に良い男達からのコールがなり止まない社内ここはアイドルの握手会ですか?
「向日さんご家族に連絡するから電話番号いえますか」
両親には伝えないで
と言いかける俺を良い男の視線が止める
目と目が会う瞬間俺が女だったら好きだと気付いたかもしれないほど真剣な眼だったふざけたこと言ったらこの人はキレると確信出来るほどに
俺は素直に家族の連絡先の電話番号を諳じて伝えた。
「向日さん向日さん」
そうだよ俺が向日さんだよいま貴方の横で死にかけてるの
定期的にくる向日さんコールにファンサービス宜しくと応えていくなかでマナーのなっていないファンが突然
「コードブルーコードブルー」
聞いたことある
何かそれめっちゃカッコいいな俺に言わせてとなんか変な余裕が出てきたせいなのか
「あの勤め先に出勤できないと連絡を」
なんて心底どうでも良い要望をする俺はきっと車内で一番注目されるワガママアイドルとは言えないかな?
黙れ
このときは自分はまだ日常に片足くらいは立ってるとおもっていたんだろうな幸せ者めお前は片足で新しい現実でたっていくしかないんだよ、。
この後、至極当然であるが社畜精神に侵された俺の要望は「そんな場合じゃない」とにべもなく却下された。
この後も何度か向日さんコールにこたえたのだが救急車の乗り心地が糞な事と車内の機器がゆれてる事しか覚えていない。
そんなこんなで救急車、救命救急士のシステムと技術のお陰で病院まで命を繋いだのだ。
車内の揺れと振動がきえた
「つきましたよ向日さん」
何がだ俺の命運がか?
ちょっとブルーになってきてるな
あーあそろそろかな?
「揺れます」「動きます」
到着後、事務的な確認を尻目に視界から車内が過ぎ外の冷たい空気を一瞬かんじたと思ったらが直ぐ白の天井に視界がかわる。
そうしている内に何人かに囲まれ、院内をキュリュキュリュ音を響かせながら運ばれていくドナドナ向日
「コードブルーコードブルー」
それ病院でも言うのね
聴こえる会話によると、とりあえす俺はCTを撮られて救急病棟に入るらしい。
慌ただしい移動の後になんかくるくるする機械に入れられたあと最初見たのとは違う医者2号がやって来た
「向日さん被核出血です。」
ヒカクてなんやねんスマホさんと別離中なんだよこっちは、それとも常に他人と自分を比較してブルーになってた俺への皮肉か?
という言葉を飲み込んで
「あのどこが出血しているですか?」
と当然の返答をしたのだが
医者は説明する時間より処置を優先して取り敢えず脳の大事な所という事だけ伝えられ俺の輸送が再開された。
俺は後に負の7日間と呼ぶ事となる呻きと叫び声が慌ただしく機械音にハーモニーした半死人達のオーケストラが会場事救急病棟に到着し其処で機械とチューブに繋がれた。
俺の血管が見えにくいと五回も刺して女を俺は日常帰るまで絶対に許さない
こんな感じでもこのときははまだ俺の心は明鏡止水で極楽気分だったといえる。
なんたって乱れ突きナースに
「勤め先に出勤できないと連絡を」何てどうでも良いことを頼む余裕があったのだから。もういい、休め俺、
乱れ突きナースは俺の入院生活でまだやらかすがそのネタは後にとっておこう。
あっ俺のメンタルが囁く
「コードブルーコードブルー」
「向日さん」
乱れ突きじゃ無い方の白衣では無いが俺のメンタル破壊地獄の第一歩の背中を押す事になる天使の降臨だ
救急車内でもされた質問をいくつかくりかえしされ
「向日さん左腕上ります」
元気良くはいとはならず武道で苛めぬいた腕は固定された柱のようにわずかな角度も作れない
「難しいね」
「握れる?」
天使の手を握り潰すおもいで力を込めるが子猫ほどの力も出ない
天使に悪気や悪意何て微塵もなく単純のマニュアルかつエビデンスに基づいた評価を行っているだけのは十分理解しているが己がもうダメだと言われているようで消えてしまいたく、なんとなく日常に戻れるとたか括っていた俺は肉体というもっとも単純な現実に対して麻痺と言う絶望がへびの如く麻痺側から心臓に向かってはい回るような不安感とともに胸に潰されそうな重さがあるのに機械は心臓に異常は無いと静かに機械音を奏でている。
これは本当に堪らなかった自分の四肢と言うどうやっても逃げられない絶望、こんなにも苦しいのに医学的には元気に脈打心臓と問題無しを表示する機械
「向日さーん」
はい向日さんです、今、貴女の眼下で絶望しているの…
なんでも両親が到着したらしく面会を行うらしい。
正直救われると同時に困った
唯一の家族だ嬉しく無い訳無いが苦労させた上に障害者の両親にしてしまった罪悪感が胸に百足をながしこまれたようなうずきとなって胸を締め付けらるている俺になげかけられる
「麻痺ですんで良かった」
「命あればこそだよ」
仕事にかまけて少しあってなかった両親だ
「こんな会い方になってごめんなさい」
少し声がでにくい
「謝るな良かった」
言葉のおかしさに気付いているようだ
優しい両親だ夢に固執してその夢にも敗れて引きこもった俺を信じて学校に通わせてくれ資格を取るまで支えてくれた人達だ私に何があっても見捨てないだろうという俺の持つ信頼感で心が軋む
心を振り絞り言わないといけない事がえる
「え…」
言葉になる前につまる
急変したら延命はいらない
俺はこんな事を宣うつもりだった
言わないとでも言えないアンビバレントが廻るなか
「ありがとう」
其しか言えなかった
面会は非常に短かった、
感染症が理由らしいが今想起して書いる段階ですら俺は両親に会えていない。
小さき英雄、俺を両親にあわせてくれてありがとう、
でも1つだけ約束して欲しい
もし次があるなら両親に電話をかけてすこし話したあと眠ろう。
そんなどうしよう無い俺の入院1日目はそんな感じで終わっていった