表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Second life (仮)  作者: 壱弥
5/40

第4話:恩の為

主人公ステータス


名前:カエデ=アキノ←new!


能力


・言語理解Lv.1

言葉が理解できる。文字を読むことはできない。


・物質創造【防具】Lv.1

防具が作り出せる。特殊能力を付与できない。


・物質創造【武器】Lv.1

武器が作り出せる。特殊能力を付与できない。


・物質創造【道具】Lv.1

道具が作り出せる。特殊能力を付与できない。

…………なんで、こんなことになったのだろう?

俺は、縄でぐるぐる巻きに縛られて広場の中心に居ます。

本当に、なんでこんなことになったのだろう。



朝。俺は、今までの日課通り日の出前に目が覚めてしまった。


「まったく、もう朝練なんてないってのにな。習慣ってのは恐ろしい……っと」


二度寝というのももったいない。どうせ早起きしたんなら、自主練習でもしてみるってことで。

セラはまだ眠ってるみたいだし、勝手に家の外へ出てもまあ大丈夫だろう。

セラの家の裏へ回り、木に的を作って枝に引っ掛ける。


「弓矢。」


俺の手の中に、和弓と洋弓を足して2で割ったような弓と、ごく普通の矢が作り出される。弓道部だったから和弓専門だったけど、実戦で使うにはサイズが少し大きすぎる。そこで、サイズを少し小さくし、折りたためるように洋弓と合成してみたのだ。結果はまずまずといったところ。持ったところ、そこまで致命的な扱いにくさは感じない。

弓道八節。一つ一つの動作を完璧にすることを意識する。当てるのではなく、当たるという確信があるまできりきりと弦を引き絞る。

カッという快音を立て、的の真中へ命中する。何回か繰り返し、この調子ならこの弓でも何とかなると肩をなでおろした。

だからだろう。その一瞬、気が緩んだ瞬間に俺に飛びかかってきた人達へ対応できなかったのは。

そして、冒頭へとつながる。



「すぴー……むにゃむにゃ」


セラ・アーチボルトの朝はあまり早くない。

彼女の家はこの村唯一の服飾店であり、ぶっちゃけて言えば各々の家でたいていの服は自作してしまうのであまり繁盛もしていない。それゆえ、彼女は毎朝早起きとは言えない時間に起きるのが常だったのだが……


「セラーッ!! 起きて、起きなさい! なんでこんな時まであんたはぐーすか寝てるのよああもうっ!」


今朝は、彼女史上もっとも早く起きた日になりそうである。


「すぴー……むにゃにゃ」


「起・き・ろってのよ!」


訂正、いつも通りかもしれない。


結局。いつも通りの午前9時に彼女は起きた。



「ふわぁ……おはよ、リズ」


「おはようじゃなくてさぁ……あんた、火事とか起きたら間違いなく死ねるわよ」


「大丈夫よ、火事なんて起こさないもん」


「……まあ、いいわ。それよりもセラ、大変なの。今朝、あんたの家の裏で盗賊のスパイが捕まったのよ!」


「盗賊!? それ、本当なのリズ!?」


この平和な村において、もっとも忌み嫌われ恐れられるのが、近くの山に住み着いた盗賊団だ。街道を通る獲物が少ないといっては、この村へ略奪しにやってくる。盗賊どもは武器を持っているから逆らえず、ただ家の中へ閉じこもって自分のところへ来ないよう祈るしかない。

私の両親も盗賊にやられ、私は天涯孤独の身になったのだ。


「本当よ! 黒髪黒目の、ちょっといい顔の弓を持った男が捕まったって。今は広場に転がしてて、男衆が逃げないよう見張ってるわ」


「くろかみ、くろめ?」


どうしよう、なんだか嫌な予感がする。というか、嫌な予感しかしない。


「ちょっと待ってて。家の中見てくるから」


「私も行くわ。誰か忍びこんでたら最悪でしょ」


見るのは家の中というか、ただ一つの部屋だ。昨日会い、記憶喪失と知った彼、カエデに貸した部屋。

バタン! と全力でドアを開ける。ノックなんてしてる暇はない。カエデがベッドで寝てるはず……!


「………………!!」


「何これ。あんた一人暮らしなのになんで布団があるの? やっぱり忍びこまれてたんじゃない!」


リズが何かをヒステリックに叫ぶ。それどころじゃない。


「ちょっとセラ?顔色悪く……って大丈夫!? 真っ青じゃない! もう大丈夫だから、忍びこんでた奴は捕まったから安心して!」


リズが私を見て心配する。それどころじゃない。

部屋は空っぽ。カエデが持っていたスプレーが机の上に置いてあるだけ。


「リズ……? その捕まった人、どうなるの?」


悪寒が止まらない。冷や汗が吹き出る。血の気が下がっているのが自覚できる。


「どうなるって……村長が、10時になったらみせしめにするって言ってたけどってセラ! どこ行くの!?」


走る。もう日は昇っている。服を着替える余裕もなく、サンダルをつっかけ、私は広場へ向けひた走る。



参ったな。それが現在の感想。とりあえず捕まってる以上は殺されはしないだろうと思ってたが……


「準備のためかよ、縛ってたのは」


がらがらとひきずられて来たのは数々の拷問具。のどかな村には似合わない禍々しさを誇るそれらは、次々と俺の隣へ並べられている。

爪剥ぎ、鞭、ガロット、猫の手、車輪、その他もろもろ。

間違いなくいっそ殺してくれと泣き叫ぶであろうものがずらずらと。


「あー、おっさん? 何度も言ってるけど俺は盗賊なんかじゃないって」


「ふん、この期に及んでまだそんなことを言っているのか。もう貴様は助からないんだ。最後に盗賊団のアジトでも教えれば少しは楽に死ねるかもしれんぞ?」


……本当に参った。手が縛られた状態じゃ道具を出しても使えないし、周りをがっちり囲まれてちゃ縄を切っても無駄だ。


「では、これより盗賊のスパイにたいし、尋問を始める!」


尋問じゃねー拷問だと言いたい。

正直に言えば、逃げることは可能だ。武器を作って、ひたすらぶつければ良い。そうすれば俺は逃げられるだろう。ただし、この村の男全ての命と引き換えにだ。

そしてそれは絶対にできない。セラに恩を返すと誓った以上、俺は村人を傷つけることはできない。


「まずは爪剥ぎからだ。どうだ、アジトを言わないか? そうすればこんなことをされなくても済むぞ?」


「あいにくアジトなんて知らなくてね。知らないものは教えられないだろう?」


「……馬鹿め。後悔するぞ」


正直に言ったのに馬鹿呼ばわりされた。軽く落ち込んでる間に縄が少し解かれ右手が爪剥ぎ器にセットされる。5本全ての指を対象にしてるあたり、元の世界より早く済みそうだ。……もっとも、その分痛そうだけど。

歯を噛みしめる。うっかり舌でも噛んだら余計痛いからな。


「いくぞ……はっ!」


ドン! ブチブチブチィッ!!


「……っが、ぐぎぃいいいい…!」


ハンマーが振り下ろされる。俺の爪が宙を舞う。

歯を噛みしめ過ぎて、唇から血が流れるのを自覚する。今はもうない爪がずきずきと頭まで達するように痛すぎて、唇を切った痛みなんてこれっぽちも感じないが。


「次は左だ。本当に言う気はないのか…? 今ならまだ……」


「楽に死なせてやるってか? 馬鹿かあんた。ここまできたら最初から知らないか、最後まで言わないかだよ」


あぶら汗がだくだく出てくるが、虚勢を張って苦笑して見せる。


「そうか……もう何も言わん。場所を言いたくなったらすぐに言え。止めてやる」


「はっ……優しすぎて涙が出るね。止めるついでにVIP待遇でもしてくれれば最高だ」


こっちの挑発にも乗らず、宣言通りに無言でハンマーが振りあげられる。狙いはもちろん、俺の左手の爪を剥ぐための拷問具―――!!


「だめーーーーーーーーーーーーーー!!」


その叫び声で、ハンマーが振り下ろされることはなかった。


「ようセラ。良いタイミングで助けてくれるじゃないか」


まるで囚われの姫と騎士みたいだ、と自嘲する。

こっちがお姫さまで、微妙に手遅れなところがなっさけなくて笑いどころだ。

こうして、俺に対する尋問もとい拷問は実に中途半端に終わりましたとさ。



呼吸も置き去りにして走る私が見たのは、大きく振りあげられたハンマー。


「だめーーーーーーーーーーーーーー!!」


恥も外聞もなく叫ぶ。あれが振り下ろされたら駄目だ。二度と自分が許せなくなってしまう。

こちらを驚いたようにみんなが見る。ハンマーを持っていた村長も目を丸くしてこっちを見ていた。

止まった……! 安堵してカエデを見る。

カエデもこちらを見て、


「ようセラ。良いタイミングで助けてくれるじゃないか」


何事もなかったかのように、私に笑いかけた。


そのあと、必死に説明した。カエデと出会ったこと、カエデが記憶喪失なこと、力になりたいこと。

カエデは村長に何か耳打ちしてからポケットに手を入れ、どこかへ出かけてしまった。みんな罪悪感があるだろうから、それはカエデの優しさだったんだと思う。

村の人はみんな、やっぱり罪悪感に駆られているみたいだった。特に男の人はそれを見ていたせいか、真っ青な顔をして何か話し合っていた。


「わかった。彼には村の全ての者で謝罪させる。この村の全てをもって、彼の記憶が戻るよう協力する。必ずだ」


村長はそう言って、家に帰るように言った。男の人達は残されていたけれど、道具を片づけるんだと私は深く考えることはなかった。

思えば。この時少しでも考えていれば良かったんだ。必要以上に村長たちが青ざめていた、その理由を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ