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Second life (仮)  作者: 壱弥
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第3話:居候、誕生

主人公ステータス


名前:


能力


・言語理解Lv.1

言葉が理解できる。文字を読むことはできない。


・物質創造【防具】Lv.1

防具が作り出せる。特殊能力を付与できない。


・物質創造【武器】Lv.1

武器が作り出せる。特殊能力を付与できない。←new!


・物質創造【道具】Lv.1

道具が作り出せる。特殊能力を付与できない。←new!

「すいませんでした」


開口一番、謝罪。

あの人外を地で行く幼馴染ならともかく、普通の、しかも女性に対して不審者撃退スプレー(辛さ2倍)をかましたのだ。

謝っても謝っても足りることはないだろう。


「もういいってば。ほら、目も普通に見えるし」


「そっか。それは本当によかった」


彼女はすぐ許してくれた。……正直、拍子抜けである。

どちらかと言えば、敵意や悪意でなく好奇心とかそんな感じの感情が溢れんばかりに出てるし。


「で、あなたの名前は? どこから来たの? 職業は手品師よね!?」


ねえねえとキラキラした目で聞いてくる。

スプレー吹きかけた負い目もあるし、正直に答えたいところだが……異世界から来たって言うのは×、現在どんな状況なのかがわからない以上下手なことも言えない。となると、


「ああ、俺の名前は秋野 楓……いや、逆かな? こっちだと楓 秋野かもしれない。君の名前は?」


話を逸らす、もしくはすり替える…!


「カエデ=アキノ? 初めて聞くタイプの名前ね! 私の名前はセラ=アーチボルト。セラって呼んでいいわよ」


「俺もカエデで良いよ。ところでセラ、聞きたいことがあるんだけど」


「私の方が先よ! ねえ、どこから来たの? あの泉に行くにはこの村を通らなきゃ森を突っ切るくらいしか行けないのよ? それに物を出すのは手品なの?」


話を逸らす作戦、失敗。仕方ない、あまり嘘はつきたくないんだが。


「それが、さっぱり覚えてないんだ。名前以外、どこから来たのか何をしてたのか、全く自分でもわからないんだよ」


必殺、記憶喪失大作戦……!

とりあえず全部忘れた。で押し通す!


「本当に!? 初めて見たわ、記憶喪失なんて。さぞかし不安だったでしょう?」


大丈夫? とこちらを疑うどころかいたわるセラ。

どうしよう、良心とかが凄まじい悲鳴をあげてるんだけど!? ああ、気を抜くと洗いざらい喋ってしまいそうだ……!

しかしこちらも命が懸かっている。良心には眠ってもらって、同情されてる間に寝床と食料、出来るだけの情報を獲得せねば。


「体に問題はとりあえず無いみたいなんだけど、今どんな状況なのかも全然わからないんだ。出来ればでいいんだけど、寝られそうなところと常識とかについて教えてくれる人、紹介してくれないかな?」


こうなったら最悪、馬小屋だろうが寝られりゃ良い。最重要は情報だ。まずはこの世界の常識について、さらにその後は掘り下げて情報を集めなければ、おちおち外も出歩けやしない。


「大丈夫! ここに住めばいいわ! 常識も私が教えてあげる!」


……りょ、良心が……もはや砕け散りそうだ……


「いいの? 俺、しばらくは役に立てないぞ?」


「大丈夫大丈夫! 少し働いてもらうかもだけど、住むのに不自由はさせないから!」


「ごめん……お世話になるよ」


拝啓。お父さんお母さん、俺は外道になりました。ごめんなさい。


どこかへ行くにしろ、この村で過ごすにしろ。

俺は、セラに出来るだけの恩返しをすることを誓った。

俺の異世界一日目は、こうして終わった。

明日から、本格的に活動していこう……



「すいませんでした」


私の家に着いていきなり、彼はまた頭を下げた。

私に何か吹きかけたことを気にしてるみたいだけど、あれは私も悪いのだ。

背後からはぁはぁ言いながら近寄られたら私だって攻撃するだろう。

別に後遺症みたいなのがあるわけでもなし、気にしないでほしい。そのことを伝えると、


「そっか。それは本当によかった」


ふわりと、今まで硬かった表情が解け、彼は微笑んだ。正直、ドキドキしたけどそれよりも聞くことがある。


「で、あなたの名前は? どこから来たの? 職業は手品師よね!?」


少し勢いよく聞き過ぎたかもしれない。

我ながら、焦ると歯止めが効かなくなる癖、直らないだろうか……


その後、彼の名前を聞いた。こちらの、少なくとも村の近くじゃ聞いたことのない系統の名前だった。

この近くじゃないならどこからカエデは来たのか、も聞いた。

その問いにカエデは、最初硬直し、何か葛藤するような憂いのある表情を浮かべてとんでもないことを言った。


「それが、さっぱり覚えてないんだ。名前以外、どこから来たのか何をしてたのか、全く自分でもわからないんだよ」


それが、カエデの事情。硬い表情も当たり前だ、それは異世界に一人放り出されたようなものだ。そして、私はただの好奇心からその心細さを暴いたのだ……!


「体に問題はとりあえず無いみたいなんだけど、今どんな状況なのかも全然わからないんだ。出来ればでいいんだけど、寝られそうなところと常識とかについて教えてくれる人、紹介してくれないかな?」


カエデはそう言った。周りのことなんて何もわからないのに、それに対応するために。


(私が……私が助けなきゃ)


「大丈夫! ここに住めばいいわ! 常識も私が教えてあげる!」


「いいの? 俺、しばらくは役に立てないぞ?」


こんな時までカエデは私を気遣った。私は、彼の傷をえぐったというのに!


「大丈夫大丈夫! 少し働いてもらうかもだけど、住むのに不自由はさせないから!」


そう、不自由はさせない。自己満足でもなんでも構わない。自分がしたことに責任を取る。私の良心が壊れないように。


「ごめん……お世話になるよ」


こうして、両親が死んでから初めて。

私の家に“家族”が住むようになった。

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