第2話:最悪な出会い
主人公ステータス
名前:
能力
・言語理解Lv.1
言葉が理解できる。文字を読むことはできない。
・物質創造【防具】Lv.1
防具が作り出せる。特殊能力を付与できない。←new!
「……鉈」
手の内に鉈を作り出す。
林の中とはいえ道なのに、整備されてないようで蔦や木の枝が邪魔でしょうがないのだ。
軽く振るうだけでこの鉈は邪魔なものを薙ぎ払う。
「仮にも道なら整備くらいはしておけよな……」
自分で言うのもなんだが、俺は普通の、普通の! 男子高校生だ。当然身体能力も幼馴染のように人外でじゃない。そんな俺が鉈を軽く振るうだけでばっさばっさと蔦やら枝やら切り払える理由。
能力の本(仮名)曰く、鉈に特殊能力はつけられない。少なくとも今はまだ。
ならばどうするか。
「ち、切れ味もう鈍ったのか」
特殊でなければ良い。この鉈の場合、切れ味を鉈に許される最大最高、文字通りの極限まで上げた状態である。
その結果、鉈でありながら斬鉄剣も真っ青な切れ味を得ているのである。
「長持ちしないのが欠点だよなぁ……」
切れ味の落ちた鉈をぽい、と放り投げながらひとりごちる。
現実に有り得る範囲しか作り出せないせいで、ある程度で切れ味も普通になってしまう。
投げ捨てるのは、うん、悪いとは思うけど持っていられないし、この能力作り出すことは出来ても消すことは出来ないっぽい。
「鉈」
さて、さくさく進みますかね。
※
「えええぇーい!!」
水を汲んだ後、全力で私は彼を追いかけていた。
理由なんて只一つ、この水瓶を持ってもらう!
しかし、なんだかいつもに比べてもの凄く進みやすい。
少し考えて、その理由に思い当たる。
いつも視界を遮っていた蔦や、頭にぴしぴし当たってうっとうしかった枝なんかが軒並み落とされているのだ。
「チャンース!」
全力で水瓶を引きずり、地面に跡をつけながらもスピードを上げる。
なんとしても、これを運ぶのを手伝ってもらう!
※
それに気づいたのは、しばらく歩いてからだった。
ずりずりずり。はぁ……はぁ……はぁ……
間違いない、変態だ。
荒い息、何かを引きずり歩く音。
うわぁ、異世界来たと思ったら魔物とかじゃなくて変態とエンカウントした……よし、撃退しよう。
「不審者撃退スプレー」
俺の手の内には真っ赤なスプレー缶。辛さ増量200%。
喰らえば悶絶間違いなしの一品だ。
ずりずりずり。はぁ……はぁ……はぁ……
後数メートル。
ずりずりずり。はぁ……はぁ……はぁ……
後数歩。
ずりずりずり。はぁ……はぁ……はぁ……
角を曲がって現れた女にスプレーを吹きかける!……って女?
「ぎゃああああああっ!? 目が、目がぁっ!!」
「あ、やべ」
水瓶を引きずっていた、金髪ツインテールの女は、某ラピュタ王みたいな悲鳴を上げ、目を押さえて陸に揚げられた海老よろしくのたうちまわっていた。
……やってしまった。
で、5分後。
「ごめんなさい」
一分の隙もない土下座をする俺の姿があったとさ。
※
ずりずりずり。ずりずりずり。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
全力で彼を追いかけ始めて数分、前を歩く足音が消えた。これが意味するのは。
(休憩、もしくは私に気づいた。どちらにせよ、早く行くべき!)
重い水瓶を引きずり、少しでも早く早くと歩を進める。
もう腕も足も疲れきっている。こうなったら何がなんでも手伝わせる! と意気込んで角を曲がる。
その瞬間、目に入ったのは赤い霧。
文字通り目に入ったそれは、とんでもない痛みを私に与え―――
「ぎゃああああああっ!? 目が、目がぁっ!!」
私は、 何もかもかなぐり捨ててのたうちまわった。
これが、私とあの人との出会い。一生忘れることのない、史上最低最悪のファーストコンタクトだった。
5分後。
水が零れるのも構わず一心に目を洗い、やっと目を開けられるようになった私が見たのは、
「ごめんなさい」
やたら綺麗に平伏す男の姿だった。
……とりあえず、踏んだ。
また泉へ戻って水を汲み、男が出した荷車に水瓶を乗せて村へ帰った時にはもう日が暮れていた。
…………本当に、最悪だ。