第18話:それは手品…?
朝。俺はものすごく寝不足だった。
「あらぁ、眠そうねぇ?」
「昨日ちょっとありまして」
受付のお姉さんにまで心配される始末だった。でも、本当にね、む……
「おはよう」
「おお、おはようマオ。顔洗ってこい」
「ん」
目が真っ赤だった。泣きはらした目。どうせうだうだと、自分が悪かったとか考えてたんだろう。
「おっはー……なんだ兄ちゃんか」
「朝からうざいテンションだなオイ。マオなら目真っ赤にしてたから顔洗いに行かせたぞ」
「あーあ。俺の癒しが……まあいいや。兄ちゃん、準備できたぞ」
「了解。じゃ、朝飯食ってからショーの開幕といきますか」
悪いなマオ。あいにくシリアスな展開なぞさせはしない。愉快に痛快に、ハッピーエンドといこうじゃないか。
※
「れでぃーすあんどいらないけどじぇんとるめーん!! 今日は兄ちゃんの手品ショーにお集まりいただき感謝しまーす!」
ウザい司会はジャック。指示はとりあえずテンションを上げろ。……自分のテンションだけ上がってやがるけど。
観客はマオと路地裏レディアンドボーイズ。朝食の後、「アタシ、もう一緒に居られな」とかちょっと感動台詞の途中でマオを問答無用で捕獲。路地裏ズは道すがら捕獲。
会場は城壁から少し外へ出た、開けた土地。
「え? あ、え? あの、カエデ? いったい何を」
混乱気味のマオ。
「わーい手品手品ー!」
喜んでる子供たち。
舞台は整った。あとはまあ、チートを使ってご都合主義に解決するだけだ。
「ではでは! 兄ちゃんから一言!」
「えー。みなさん、お集まりいただきありがとうございます。これより、あるものをこの何もない原っぱに出現させようと思いますよー」
芝居がかった動作で大仰に一礼する。わーわーきゃーきゃー!と観客が騒ぐ。
「3」
「2」
「1」
カウント1で大きな布を観客にかぶせる。ぎゃーぎゃー言いだしたけどちょっとの間は混乱して外すどころじゃないだろう。そして、ちょっとの間があれば十分過ぎる――!
「0」
ばさっと布を取り去る。そこに現れたものは、
「すっげー! 家だ、家がある!」
「違うよ、お屋敷だよ!」
豪邸と言って差し支えない、巨大な屋敷。
「ここが今日から、君たちの家だ」
きょとん、としてこちらを見てくる子供たち。最初は何を言われているのか理解できなかったのか呆然としていたが、じわじわと理解が及んだのか――――
『えええええええええええええええ!!??』
爆発した。