第17話:悪いのは…?
主人公ステータス
名前:カエデ=アキノ
能力
・言語理解Lv.2
言葉が理解できる。文字の読み書きができる。
・物質創造【防具】Lv.2
防具が作り出せる。特殊能力を付与できる。
・物質創造【武器】Lv.2
武器が作り出せる。特殊能力を付与できる。
・物質創造【道具】Lv.3
道具が作り出せる。特殊能力を付与できる。無言で作り出せる←new!
・物質創造【地形】Lv.2
地形を作り出せる。特殊能力を付与できる
「ありがとうございましたっす」
「気にしないでいいって。マオの知り合いだったんだし、薬の調整でも手伝ってもらってるしな」
「それでもっす。腕がなくなった奴や病気になった奴は、今までは確実に死んでたっす。でもあれで治してもらえたんっすから」
また来てくださいっす~という声に送られ、俺とマオは路地裏を後にした。ただ、やはりというべきかなんというか、
「………………」
マオがふさぎこんでいた。
気持ちはまあ、分かる。あのチームに入ってなかったとはいえ、仲は決して悪くなかったのが少ない会話でも見て取れた。小さい子には好かれてたし、あの犬耳にだって憎まれ口こそ叩いていたものの嫌いなわけじゃないだろう。だからこそ、罪悪感があるはずだ。
「……帰るか。悪いけどおすすめの店はまた今度連れてってもらえるか」
「……うん。ごめんね、カエデ」
「気にするな……って今日は俺この台詞言い過ぎだな。これ以上言わせないでくれよ?」
「……うん」
結局、その日は言葉少なに帰路についた。
マオはやはり元気がなく、夕食を食べるとすぐ部屋へ戻っていった。
「マオちゃん、どうしたんだ? 元気ないみたいだったけどって、はっ! まさか兄ちゃんが無理やり」
「しねーよ。ていうか空気読め」
最近はジャックとは夕食を共にしている。変態ではあるがさすがベテランの冒険者だけあって最新の情報にも詳しく、俺のような何もわからないような新米にはありがたい情報も聞くことができるからだ。
「ちょっとな、昔の仲間のことでいろいろ考えてるんだよ。今日偶然大通りで会ってな」
「へえ。なるほどなるほど、それじゃあ悩むのも当然ってもんだ。仲間はつらい生活を続け、自分は単なる偶然で不自由のない生活! 嗚呼、私はなんて罪深いの! ってな」
「茶化すなよ。マオは真剣なんだぞ」
「そういう割には兄ちゃん、冷静だよねぇ? どこか他人事っていうか、共感できてない感じ?」
そう言ってにやにやとこちらを覗きこんでくる。こっちの内心を読んでいるかのように。そしてそれを、楽しんでいるかのように。
「他人事だからな。大体、それこそ偶然なんだから誰のせいでもないだろう。自分の幸運に感謝だけしてればいいんだよ。一歩間違ってたら死にかけてたんだから」
俺が、トラックに轢かれたように。もしくは、俺が椿の家に気にいられたように。
神様の気紛れであっさりそれまでの、これからの人生なんて変わるもんだ。……あの爺に操作されてると思うと腹は立つが。
「兄ちゃんは本当に面白いねぇ。お人よしかと思ったら冷酷、冷静かと思えば激情家……」
だから男だけど一緒につるんでるんだよ、と言って笑う。やめろ気持ち悪い。
「気紛れなだけだ。それより聞きたいことがあるんだが……」
※
夜が深まる。ぬくぬくとした柔らかいベッドで寝ているアタシは、堅い、冷たい路地で寝ているであろう彼らの事を思う。
「ごめん……ごめんなさい……」
聞こえないと分かっていて許しを請う。誰に謝っているのか、そもそも何に対して謝っているのか。それすらも不明瞭になっていく。
「ごめんなさい……助かってごめんなさい……」
忘れていた。告白します、私は彼らのことを忘れていた。ぼろ雑巾のようになっていたアタシを救い上げてくれた人に甘えて、浮かれていました。魔法のように出てくる食べ物や、温かい部屋を見て浅ましくも喜んでいたのです。
「ごめ……なさ……」
最低だ。アタシは、彼らを見捨てた。この生活には、彼らなんていらないと。路地裏の生活を、なかったことにしようとした。
「ひっ……ひぐっ……」
明日。明日、カエデと別れよう。アタシは知ってしまった。自分がどれだけ自分勝手か。このままでいたら、もっと、もっとと求め続けてしまう。そうなる前に、別れよう。出来ればアタシの代わりに彼らを助けてくれるように、それを最後のわがままにして。
だから。さよなら。