第11話:散策、そして暗雲
主人公ステータス
名前:カエデ=アキノ
能力
・言語理解Lv.2
言葉が理解できる。文字の読み書きができる。
・物質創造【防具】Lv.2
防具が作り出せる。特殊能力を付与できる。←new!
・物質創造【武器】Lv.2
武器が作り出せる。特殊能力を付与できる。
・物質創造【道具】Lv.2
道具が作り出せる。特殊能力を付与できる。
「こんなもんかな?サイズはどうだ?」
「ん、大丈夫みたい」
とりあえず、マオのための服を作ってみた。いくらなんでもあの布で外へ出るのは……ねえ。
耳を隠すための帽子、厚手のベストとズボン。スカートは超拒否された……動きづらいらしい。最後に銀で猫のデザインをあしらった黒いチョーカー。まだ防具には特殊な力はつけられないので、道具扱いのチョーカーに守りを仕込んでおいた。
「じゃあ買い物にでも出かけるかー。欲しいものあったら何でも言っていいぞ、お金なら腐るほどある」
正確にはお金を腐るほど偽造できる、というのが正しいのだが。常識外れの力は持ってるけどなんだかんだで常識を捨てきれないのか、貨幣の偽造には罪悪感がつきまとう。けどそれはそれ、これはこれ。ギルドで稼ぐか、何か商売でもして稼げればそれが一番だけどそんなことやってる時間はないし。大体この宿も偽造貨幣使用してるからいまさらだし。
「腐るほど……? カエデって貴族か何か? 服も見たことない素材で出来てるし……」
「まあ、貴族じゃないけどな。大丈夫だ、不自由はさせないよ」
「じゃあ、かろりーめいとが食べたい!」
「…………また今度な」
よほど気にいったらしい、カロリーメイト。ホントにあだ名はカロリーちゃんにしてやろうかな。
※
「ほい、マリカの実は2ブロンだ」
マオがマリカの実が食べてみたいと言ったので、買い物中。
この世界の金単位がブロン銅貨、シルヴァ銀貨、ゴルト金貨。銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。扱いやら見るに1ブロンおよそ100円。ただし物価が非常に安いようなので必ずしもその限りではないようだ。
「これ、おいしい!」
「そうかいそうかい、うちは新鮮なものしか取り扱わないからね。さあみなさん、こんな可愛い子も絶賛するマリカの実がたった2ブロン、安いよー!」
客寄せにマオを利用する店主。活気があって、なんだか元気になってくるようだ。
「カエデ、何か他に買うものあるの?」
「いや、別に何か欲しいものがあるわけじゃない」
見て、それを後で作ればいいし。自分でもらっておいてなんだけど、この能力実に便利だ。
「まあ、観光ってことでそこらを見てまわろうか。マオもお店とか良く知らないだろ?」
「うん、そんな余裕なんてなかったから……」
「じゃあお互い初めてだ、面白いもの見つかるといいな」
「おや兄ちゃん、面白いもん見たいならここはどうだ? 魔道具を扱ってる店だけど」
マオと話してると、変態から声をかけられた。
というか魔道具? セラからは聞いたことないけど――って。
「なぜお前がここにいる!?この変態がっ!」
「ひどくない? 俺、親切心で教えてあげたのに! だいたい、会ってから1日しか経ってないのにそんな可愛い小さな子連れてる兄ちゃんには言われたくねー!!」
「うぐっ……」
正論だった。
確かに教えてくれたのは事実、俺が小さい子と歩いているのもまた事実……!
「カエデ、この人誰?」
「マオは知らなくていい……ていうか知らないでくれ、汚れる」
「「汚れるっ!?」」
マオと変態の二重奏。ていうか変態のくせにマオと息ぴったり合わせてんじゃない、変態なんだから。
とりあえず、ロープで簀巻きにして店の前に転がしておいた。
※
「すごかったな…!」
「あんなのがあるなんて知らなかった…!」
10分後、テンション上がりまくりの俺とマオ。
いや魔道具すごいね、考えた人は天才だと思う。この世界に魔法があるのは知ってたけど、魔法式やら魔法陣とかいうのを使えば魔法の素養がなくても使えるってのは初めて知った。まあ違いはよくわからないんだが。今までは魔法ってのは魔力を流して、呪文を唱えて発動するもんだと思ってた、俺。
「利用できるかもしれないな、この技術」
矢とかに。爆発の魔法陣刻んで射てば、広範囲攻撃できる魔矢に……!?
今度実験してみよう。
「ふわわわっ!?」
そしてマオはスイッチを入れると火花を散らせるという比較的単純な魔道具で遊んでいた。
……火柱が噴きあがってる気がするけど、見なかったことにしよう。
「おうおう、あの時のガキじゃねぇかぁ?」
「ッ!!」
声をかけられて、いきなりびくん、とマオの体が跳ねる。魔道具は地面に落ちてからからと転がった。
「ホントだ、オイなに逃げだしてくれてんだてめぇ」
「ひひひ、ただじゃすまさないぜぇ……?」
いかにも、なチンピラ3人衆。というか今こいつらなんて言った!?
あの時の。逃げだした。まさか、このチンピラどもが?
「ひ、い、いやああああああああああっ!!」
「へへへ、もう逃がさないぜぇ、子猫ちゃぶべっ!?」
マオの手を握ったチンピラAを蹴り飛ばす。汚い手でマオに触れるな、ゲスめ!
「コラ、なにしてくれてんだあんちゃん?俺らが誰か知ってんだろうなあ!?」
「殺されてぇのか、ああ!!」
ぴーちくぱーちく、うるさいチンピラだな。
負け犬の遠吠えを聞いてやる義理もない、無視してマオを抱きよせる。
「大丈夫か?」
朝と同じ問いかけ、ただし今度の問いは精神的なものだ。
「だ、大丈夫。もう大丈夫だから」
震える声と体。何があったかは断片的にしか知らないが、最悪なことだったのは間違いない。その最悪が目の前に現れたんだ、大丈夫なはずもない。
「無視してんじゃねぇぞ、おらぁ!」
「そのガキよこせよ、聞こえねぇのかぁ!」
「蹴りくれやがって、ただですむと思うなよ!」
うるせえ。
てめえらこそ、のこのこと俺の前に顔を出して無事ですむと思うな―――!!