プロローグ
「……どこだ、ここ」
俺が目を覚ましたのは、一面の花畑だった。
……異常過ぎる。
「いや、マジどこだここ」
むろん、見覚えなぞない。というか俺が住んでるのは街だから目が覚めたら花畑なんてあるわけないのである。
『目が、覚めたかの?』
「うぉわっ!?」
目の前には、白い爺。
今さっきまでこんな爺いなかったはずだが……?
まあ、ここがどこかくらいはきっと教え『天国じゃ』
……はい?
「あーすいません、耳がおかしいみたいなんでもう一回お願いします」
なんか聞こえたけど、幻聴幻聴。きっと。
『じゃから、天国「聞こえねええええ!!」
何も聞こえなかったし何も言われなかった、うんそうだよそうだそうだっただいたい花畑とかファンタジーすぎてああ夢かもちろん夢だよなよし目覚めろ俺!
『落ち着け』
「はい!」
おお、なんか身体が勝手に反応した!?
『よし、それでこの状況について説明しよう』
「わかりました、爺ィ」
『本当にわかっておるのか?』
「わかったっつってんだろ爺ィ」
こっちは現在進行形でテンパってるんだからさっさと解説なりなんなりして欲しい。
『ふむ、ではまず、わしは神じゃ』
あ、痛い爺か。
『疑っておるな……?』
「いえいえ、思い込み乙。で、続きは?」
『疑っておらん!? 断定しとるではないか!』
うるさい爺だな。
爺の(大切っぽい)長いヒゲをわしづかみにする俺。
「いいから話せ」
『ハイ……』
立場逆転。さくさく聞き出そう、さっさと帰りたいし。
『うむ、本題じゃが』
うんうん。
『おぬしは死んだ』
うんう……なんだと?
『早い話が、今のおぬしは幽霊じゃ』
マジスカ。
『マジじゃ。死因も教えておこう、忘れておるみたいだしの』
で、爺曰く。俺は暴走したトラックから幼なじみを庇って死んだらしい。
今の俺に覚えはないが、当時の俺、格好良すぎる……本当に俺か?だいたいあいつならトラックがぶち当たる前に避けそうなもんだが。
『それなんじゃが、ぶっちゃけおぬしは死ぬ必要がなかったのじゃ』
……ゑ?
『おぬしが飛び込まんでも、無傷で助かるはずじゃった』
何やってんだ俺。
『というかおぬしが飛び込んだから少し怪我してしまったようじゃ』
何やってんだ俺ええぇ!?
『それで…って聞いておるのか?』
「あー駄目だ、俺ホント駄目だもう死のう、あもう死んでるのかあはははははははははは」
『……うわぁ』
爺、ドン引き。
しかし知ったこっちゃない。こっちは落ち込むのに忙しいんだ。
『うむ、気持ちはわかる。それなんじゃが、おぬしが死ぬのもイレギュラーでな』
つまり俺は自称神さまの想像を超えたっぽい。
すげえな俺、神さまでも予想不可能かよ。
『このまま天国へいても、地獄へ落とすにしても正直まずい』
「死ぬはずじゃなかったなら当たり前だろうな。生き返らせてくれるのか?」
『そこで、おぬしには異世界に行ってもらおう』
話聞けクソ爺。
『ぐちゃぐちゃのグロ死体が生き返ったらホラーじゃろうが。本来の寿命を全うするまで、おぬしには異世界で過ごしてもらう。ここで過ごすという手もあるが何、わしのちょっとした罪滅しじゃ』
「なるほど、で、本音は?」
『男なんぞ近くに置いときたくないわ』
「驚くほどのゲスな理由をありがとうクソ爺。見返りはそれだけか?」
暗に脅しをかけてみる。
生き返るにしても向こうの過失で死んだ以上、慰謝料は貰わないとな。
『む、確かにの……なら向こうの世界で一つだけ、好きな能力を使わせてやろうではないか』
「なら、自由に物を作り出す能力をくれ」
『本当にそれでいいのか? 不老だろうが無敵だろうが自由自在じゃぞ?』
「ああ、これでかまわない。行き先はどんなところだ?」
気になる。というか知ってないとまずい気がする。
『知らんよ。適当に飛ばすからの。』
オイ爺ー!
思わず、殴り掛かろうとした俺の前に巨大な扉が現れた。
『さらばじゃ〜オプションとして言葉は通じるようにしとくからの〜』
ごごごごご。
扉が開き、俺は扉の中から出てきた手に引きずりこまれた。
……ていうかこれハガ○ンの真理の門じゃね!?
「怖えええぇ!!」
そして、これが俺の異世界デビューだった。