表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/85

第53話 風と水とが入り混じり

 れ渡った空をフワフワと移動していたら、なんか、雲の上に乗ってるような気分になってきた。

 正確には、空島そらじまの上にるワケだけど。

 実質じっしつ、雲の上に居るのと変わりないよな?


「ハヤト、見て! 水龍すいりゅうの巣が見えて来たよ!」

「そうだな。それにしても、空から見下ろすと、圧巻あっかんだな」

 俺達の眼下がんかには、前に見た事のある巨大な穴と、その穴に流れ込んでいく大量のたきがある。

 かなり上空を飛んでるはずなんだけど、ここまで水飛沫みずしぶきが飛んでる気がするのは、気のせいか?

 いや、気のせいじゃないな。

 なにしろ、水龍すいりゅうの巣の周辺には、不自然に浮かんでる水流すいりゅう複数ふくすうあるワケだし。

 これも全部、水龍すいりゅう仕業しわざだろう。

 そう言えば、前に俺達が水龍すいりゅうの巣に居た時は、白いドラゴンが現れて、この水流に迎撃げいげきされてたっけ?

 ……あれは、ドラゴンだったから迎撃げいげきされてたんだよな?

 まさか、俺達も迎撃げいげきされたり、しないよな?


「どうしたの? ハヤト」

「いや、ちょっと嫌な予感よかんが……。ところで風龍ふうりゅう、このまま進んでいったら、俺達は水龍すいりゅう攻撃こうげきされたりしないよな?」

「う~ん。分からないね。もしかしたらされるかも? まぁ、お姉ちゃんとお連れの皆さんは、ボクがちゃんと守ってあげるから、キミは自分でどうにかしてよね」

「俺もマリッサの連れなんだよなぁ~」

「大丈夫だよ、ハヤト! アタシが守るから!」

「ありがとな、メイ。本気で頼もしいよ」

「えへへ」

「……私だって」

「ん? お姉ちゃん、何か言った?」

「な、何でもない。それより、そろそろどこかに降りた方が良いんじゃないの?」

「え~? どうせなら、穴の真上まで行こうよ。そうしたら、まっすぐ降りるだけじゃん」

「おいおい、オイラ達をあの穴の中に放り込むつもりか!? そんなことされたら、さすがに死んじまうぜ?」

「大丈夫だよぉ。ボクがちゃんと穴の底まで連れてってあげるから」

「え? それって、風龍ふうりゅう様もアタシ達に着いて来てくれるってこと?」

「そういうコト」

「着いて来てくれるって言うか、たださびしいだけだろ」

「ちょっと!? 何か言った?」

「何でもないです」

「ボクが悪口わるぐちを聞き逃すと思ったら、おお間違まちがいだからね? 風に乗って、全部届いて来るんだから!」

「それは、なんていうか、かわいそうに……」

あわれまないでよ!!」

いや、普通にかわいそうだと思うんだけどな。


俺達がそんな言い合いをしていると、メイが耳をぴくつかせながらつぶやいた。

「ねぇ、皆。なんか、周りの水が変だと思わない?」

「え?」

彼女の言葉に、真っ先に反応を示したのは、風龍ふうりゅうだ。

「あぁ……これは、ちょっとマズいかもしれないなぁ」

「ちょっと、風龍ふうりゅう様。それは一体どういう?」

真意しんいを聞こうとしたのかマリッサが口を開いたところで、今度はおぼろが叫んだ。

「おい、あれはなんだ!?」


 おぼろが示したのは、空島そらじまの一番近くに浮いている水流すいりゅう

 その中を、こちらに向かって泳いで来る大量たいりょうの影が見て取れる。

「あれは……サハギンのれよ!!」

「サハギン!?」

 サハギンって言ったら、いわゆる半魚人の魔物か?

 そんな種族しゅぞくまで居るんだなぁ。

 なんて、感動してる場合じゃないか。


「もしかして、サハギンって狂暴きょうぼうなのか?」

狂暴きょうぼうどころじゃない! 狡猾こうかつ俊敏しゅんびんでおまけに力が強いから、かなり厄介やっかいな相手だよ」

さすがはマリッサ、くわしいな。とりあえず、油断ゆだんできる相手じゃないらしい。

「ハヤト、援護えんごをお願い!!」

「分かった」

「お、オイラに出来ることはあんまりなさそうだな」

「みんな、そんなに慌てなくても。ここにはボクが居るんだよ? あんな奴ら、ボクがちょっと風を起こせば、水流すいりゅうごととおくに吹っ飛ばして……」

 そう言いながらうで風龍ふうりゅう途端とたんに、彼女が巻き起こした暴風ぼうふうが、浮いている水流すいりゅうを一気に吹き飛ばした。

 ……かに思えたんだけど、次の瞬間しゅんかんには、さっきまでよりも太い水流すいりゅう次々(つぎつぎ)と現れて、空島にせまり始める。


「あ、あれぇ? おっかしいなぁ」

状況じょうきょうが悪化してるじゃねぇか!!」

「う、うるさいなぁ!! わかった、水龍すいりゅうだよ!! あのがボクの邪魔じゃまをしてるんだ!! むぅぅ。邪魔じゃまするつもりなの!? 水龍すいりゅう!!」

「うぉぉぉ!? おい、やべぇよ!! このままじゃオイラ達、水と風に吹き飛ばされて、地面に落ちちまう!!」

風龍ふうりゅう様!! 落ち着いてください!!」

「マリッサ! メイ! おぼろ! 一旦そこの岩陰いわかげかくれるぞ! このままじゃマジで、おぼろの言う通りに……」


 必死に風龍ふうりゅうに声を掛けているマリッサ達に、俺がそう声を掛けた時。

 頭上ずじょうから、複数ふくすうかげが落ちてきた。

 長いもりを持ったその影達は、着地ちゃくちすると同時にマリッサと風龍が居る方に突進とっしんしていく。


「サハギンか!! マリッサ!! 危ない!!」

 咄嗟とっさ籠手こてかまえてけ出した俺のすぐそばを、メイがけ抜けていく。

 地面をうような低い姿勢しせいで突き進んだ彼女は、空へと突き上げるようなつめ一撃いちげきで、1体のサハギンを切りいた。

 それと同時に、俺は別のサハギンに向けて、魔素まそだん発射はっしゃする。

 ねらいはサハギンの足元だ。


 見事みごと、サハギンの片足かたあしを地面にい付けることに成功した俺は、足の異変いへんに気付いてあわてているサハギンの後頭部こうとうぶ籠手こてなぐり飛ばす。

「よしっ!!」

 あとは、マリッサの方に行った残りの1体だ。

 と思ったのもつかの間、くだんのサハギンはマリッサを守るように渦巻うずま暴風ぼうふうによって吹き飛ばされていく。


 風と水とが入り混じって、周囲をめちゃくちゃにしてる。

 俺もメイもマリッサも、ずぶれだ。

 だけど、取りえずの危機ききまぬがれたらしい。

 急いで風と水をしのげる場所に身をかくした方が良いよな。

 なんて、安堵あんどする俺の耳に、メイの声が響き渡った。


「ハヤト!! けて!!」

「っ!?」

 もちろん、俺がそんな彼女の警告けいこくに対して、迅速じんそく対応たいおうできるわけがないよな?

 右後方みぎこうほうから現れたデカい水流すいりゅうに全身を飲まれた俺は、そのまま水に流されてしまう。

 ながれが強すぎて、息を止めることができない。

 うであしも自由に動かせるわけがなく、俺はただ、流されるしかなかった。

 息苦いきぐるしさの中、俺の視界しかいと耳に、とぎれとぎれの情報じょうほうが飛び込んでくる。

「ハ……が……!! アタ……っ!?」

 くぐもった声と、たまに見える毛むくじゃらな耳は、多分、メイなんだろう。

「が……はっ」

 彼女に声を掛けよう。

 と口を開いたところで、俺は何も言葉に出来ず、意識いしきを失ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ