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船への帰還

 いつまでも申し訳なさそうに謝るアリアを何とか励まして。それと同時にいつまでしょぼくれる自分の情けない心を何とか浮上させて。

悪いと思っているならこれからも付き合えよ、なんて。随分と卑怯な言葉で脅しをかける。

弱みに付け込んでいる自覚はあるが、使えるものはなんでも使う。なりふりなんて構っていられない。

「勿論これからも会ってくれんだろう?」

そんな余裕など少しもないのに。けれどどうしても彼女の前では格好を付けたくて。ニシャリと口角をあげて笑って見せる。

俺の言葉を受けて、アリアが一瞬驚いたように眼を見開いた。やはり誘い方がまずかったかと一瞬焦ったが。すぐにアリアがいつもの穏やかな笑みを向けてくれたので、ほっと安堵の息を吐き出した。

心臓に悪い。緊張で口の中はカラカラだ。

「えっと・・。じゃあ、毎週水の曜日、ユグレシアの水月亭ってお店でどうかな・・・?」

場所は、ユグレシア王都のはずれにある飯所らしい。そんな洒落た名前の場所、勿論行ったことなどないが、多分調べればすぐにわかるだろう。

その提案に勿論応と答える。しかし日にちは・・・。・・・水の日か。

・・・水の日なんて今から4日も先だ。正直先すぎる。

明日にでも会いたい。そして毎日会いたい。何なら今から一緒に滞在先に行きたいくらいだ。

とはいえいきなり距離を詰めすぎて引かれても困る。とりあえずは次の約束を取り付けられただけで充分だと思わなければ。

俺は渋々、しかし顔には一切不服感を出さずに承諾をした。

 アリアとはいったんそこで別れた。アリアはユグレシアの船、俺はそのまま客船でユグレシアの国に入国した。相変わらず凄まじくでかい国だ。貧富の差が少なく治安もいい。活気もあるし、行き交う人々の顔は総じて明るい。よほど統治者が優れているのだろう。

けれど、どんな国でも抜け道はある。俺のような薄ぐらい道を歩く人間でも平気で受け入れるような。

むしろそんな奴らが落とす金で発展を遂げている町もあるのだ。

海賊団船長である俺が、仲間たちと待ち合わせを予定したのもそんな町の一つ。

ユグレシア王国の北端の町アグル。海賊船を無条件で受け入れ、修理まで請け負ってくれる町だ。

馬を買い、全速力で駆けても三時間かかった。

港に行き、自分の船がドックに繋がれているのを見ると自然と気分が上がる。仲間達に会うのはいつぶりか。さっそく船に乗り込もうと桟橋に足を駆けたとき、一番隊隊長を任せているイアンがいち早く俺に気がついた。そうしてでかい声で俺の帰還を周りに知らせる。あっという間に俺の周りは仲間たちでいっぱいになり。

毎度のことだが、大袈裟過ぎるほどの迎えを受けた。

 日があけて土の日。俺の帰還を祝う宴が昨日の夜からずっと続いている。いい加減解放して欲しいところだが、仕方なく付き合うことにする。

 ・・・・・・・・・あと3日・・・。

 翌、日の日。二日酔いに苦しむ部下達の体が屍のようにあちこちに転がった。まああれだけ飲めばそうなるのは当然だ。自業自得だな。笑いながらそういい放つ俺に部下達の恨みがましい視線が絡み付く。まあ俺も同じぐらいは飲んだが。二日酔いにはならない体質なんだから文句を言われても困る。

 ・・・・・・・・あとまだ2日もある・・・。

 月の日。未だ酒が抜け切らない部下達に苦笑しつつ、船を見て回る。足りない物品がないか。破損している箇所はないか。細かく見て回ったが、そんな必要もないほどどこもよく整理整頓されていて、補給も完璧だった。頼もしい限りだ。

 ・・・・・・・・日がたつのが遅すぎやしないか?

火の日、部下達に誘われて町に繰り出した。今までは気にもならなかったような品物ばかりに目が行く。

小さな宝石をちりばめた髪飾り。こんな町では珍しいほど細かい細工がされた腕輪。果ては、店先に飾られかわいらしい洋服にまで。

どんな色が好きだろうか。どんなものをあげたら喜ぶだろうか。

彼女は余り派手な装いは好きじゃないみたいだから、装飾品は小振りのものがいい。けれど質は決して落とさず、彼女が身につけても見劣りしにような・・・。あれなんかいいんじゃないか・・・?いや、だめだ。

こんな安物じゃ彼女には似合わない。もっと、もっとだ。

・・・・結局彼女にあうものなんてこんな辺鄙な町では一つも見つからなかった。

そうしてやっと夜が明けた。正直4日は長すぎた。会えない日が一日増えるたびに、彼女に忘れられる気がして気が気じゃなかった。でもやっとだ。やっと約束の日。楽しみすぎて朝から動悸がやばい。乙女のように選びに選び抜いた服を着て、髪を整えて。そうして俺は意気揚々と馬を走らせた。


約束の水月亭にたどり着いたのは、待ち合わせの二時間も前だった。






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