地下牢
容疑が固まっている海賊団を取り逃がした。しかもわざと。
どれだけ僕が彼らの無実を信じていようと、事実無実だったとしても。王命が降った以上僕が勝手にそれを覆すことはできない。それを判断するのは、裁判であり、最終的には王がする。いかに王の娘といえど、勝手に命令を無視しすれば、それは重罪な反逆行為だ。
なんとか意識を取り戻し、自らの足で歩いて帰還することができた僕は、その足で地下牢へと入った。
そこまでしなくてもいい、どうか部屋で休んでくれ、とみんな慌てて僕を説得し、最終的には憐れんだような目を向けられたけど。ここで生半可なことをしていては下に示しがつかない。甘えは規律を乱し、それは国の混乱にもつながる。全ての面会を断り、食事も囚人と同じものを出すようにしてもらった。
一日、二日と、かび臭い牢屋で過ごす。最下層のここは、最も罪が重い罪人が入るところで日の光はもちろん入らず、精神的に追い詰めるために環境は劣悪だ。風も抜けず、じめじめしていて、底冷えする。置いてあるのは固いベットと、薄い毛布のみ。寒さでぶるぶると震える体に毛布を巻いて、ベットに横になる。
なにもすることがなく、浅い眠りと覚醒を何度も繰り返した。
・・・・ノアは無事に航海を続けてるかな・・・・。
・・・・・今どの辺にいるのかな・・・。
・・・・・この国のこと・・嫌いになってないといいな・・・。
11日後の昼過ぎ、何の前触れもなく牢屋の鍵が開かれた。扉の前には父王と母、弟のレオ、少し後ろに控えるようにグレンとジュリーがいた。
出てきなさい、と父王の柔らかい声で促される。けれどまだ僕は罪を償っていない。反逆罪は謹慎最低3ヶ月だ。まだ出るわけにはいかない。頑として外に出ようとしない僕に、父王は困ったように眉を下げ大きくため息をついた。そうして僕に言い聞かせるようにゆっくりと口を開いた。
「黒髪の海賊団を捕縛した」
「!!」
え・・どうして・・・?
顔から一気に血の気が引いた ノアはあのまま海へ逃れたはず。追うことのないようにと厳命したのに。
なのにどうして?
「・・・・・・・・別人だった・・・・」
「・・・・・え・・・?」
「お前に討伐を命じたあの海賊団とは別の。比べものにならないずっと小物の仕業だった」
髪を黒に染め、大海賊団の威光を利用してそれに隠れる、こずるい小さな賊の集まりだった。
本物の海賊団達が港を発ったのを知らず、今までと同じように罪を犯しつづけたことで別の賊の集まりであることが露見。
グレンとジュリーが僕の言葉を信じてずっと調べていたことにより、すぐに偽の海賊団があがり、レオが軍を率いてこれを討伐、捕縛に至った、
動かしようのない証拠の数々がそろい、有罪が決定。それにより件の海賊団の疑いは晴れ、同時にお前の罪もなくなった、と。
疑いが晴れた。ではもうノア達が追われることはない。
その事実に、僕の体から力が抜ける。
「よかった・・・・・」
「姉上、もう大丈夫です。後のことも全て僕が致しますから、安心してここからでてきてください」
こんなところにいてはお身体を悪くしてしまいます。
そういって父王を押しのけるように駆け寄ってきたレオが温かい毛布を肩にかけてくれる。
レオが、そしてグレンとジュリーが僕のために力を尽くしてくれた。
レオは最近執務を少しつづ始めており、忙しいはずなのに。
グレンとジュリーだってそれぞれ大事な仕事があるはずなのに。
それらをいつもと同じようにこなしつつ、色々動いてくれた。そんなの大変だったに決まってる。
「レオ、ありがとう」
「そんな・・・。当たり前のことをしただけです、姉上。さあ、早くこんなところからでましょう。お身体が冷えきっております」
レオが体を支え起こしてくれる。その力は強く、頼もしい。あんなに小さかったのに。背だってもう僕よりも随分高い。その成長を目の当たりにしてうれしくて泣きそうになるのをぐっとこらえる。
レオに促され手を貸してもらって一歩踏み出した。
その足の膝が体重を支えきれずにカクリと折れた。
視界が回る。
「姉上!!」
焦ったレオの声が聞こえる。情けなく倒れ込む僕を抱き留めてくれた感触も。
大丈夫だよ、レオ。
そんな泣きそうな顔しなくても、お姉ちゃん大丈夫。
しかし言葉は口から出てくることはなかった。
もうとっくに、体力的にも精神的にも限界だった。
僕はそのまま意識を失い、三日間生死の境をさ迷った。
実はアリアさんには弟がいました。
第一部でノアが城に来たとき弟も城にいました。
弟は、ノアが大好きな姉を弄んで捨てたと思い込んでいて、切りかかりそうな勢いだったので王命により部屋に閉じ込められていました。
姉が大好きな少し腹黒の王子様です




