海賊あらわる
「見ろよ、こんなところに上玉がいるぜ?」
・・・・・ありがとう、今のは褒め言葉だよね? ・・・でもちっともうれしくない。
ドスドスと重い足音を響かせて3人の大男達が姿を表す。いかにも荒くれ者、という風体の、濁った目をしたボサボサの髪の男たち。口元にはなんとも言えない下品な笑みを浮かべ絡み付くようなネットリとした視線をこちらに向けて来る。めちゃめちゃに気持ち悪い。ニヤニヤと笑みを浮かべ視線は上から下へ。そうしてまた上へ。僕の胸の辺りで一旦止まって・・。いくばくか残念そうにその眉が寄る。
・・・失礼にも程がある。
メラっと心の中で闘志が燃え上がる。どうやら懲らしめて欲しいようだ。数歩向こうにあるデッキブラシに手を伸ばそうとして。
視界の端に艶やかな黒が見えた。足音を全く立てず、一切無駄のないしなやかな筋肉が躍動するのが海賊達の背中ごしに見えた
「そいつに近づくんじゃねぇよ!!」
それは今まで僕が聞いてきた、優しく穏やかな声じゃない。冷たくて威圧に満ちた声だった。怒りを存分にはらみ刃物のように鋭いその声の主は、海賊が腰から下げていた曲刀をいとも簡単に奪い取り、一撃のもとそれを昏倒させた。残りの二人が驚いたように振り返る。けれど状況を理解する前に、突然の乱入者、ノアによってあっといまに昏倒させられた。
僕はその流れるような無駄のない美しい動きを、瞬きをするのも忘れて見入っていた。強いんだろうな、とは思っていた。軽快な身のこなしに、隙のない足運び。何の気負いもなく話しているふうに見えて常に周りを警戒しているところとか。その全てがノアが強者だと言っていた。だけどここまで強いとは思っていなかった。
襲ってきた海賊は、ノアが一人で。息を乱すこともなく全員倒してしまった。
・・・・・・そう、僕は確かにここで、ノアの強さを目の当たりにしてた。
明らかに君は絶対強者であり、戦いなれていた。
なのに、君がついた嘘を見抜けなかった。
僕は本当に、馬鹿でぐずで、自分が嫌になるよ、ノア・・・。




