後悔
どうして俺はこんなに馬鹿なんだ?
どうして俺はこんなにも鈍い!?
ちゃんと見ていたなら気がついたはずだ。
誰よりも好きだといいながら、なぜ大事なことには一つとして気づけなかった!?
あの夜。確かにアリアは、「行けない」といった。行かないでも、行きたくない、でもなくて、
「行けない」、と。それは俺のためか・・・?
あの時何かを言いかけて口をつぐんだ。あれは、「行きたい」と。そういいかけてたんじゃないのか?
胸を押さえて俺から距離を取っていた。俺は怖がられたものだとばかり思っていたけど。
本当は心臓が痛かったんじゃないのか?心臓が痛くて苦しくて、それでも必死で立っていたんじゃないのか?
体が動かない中で、俺を思って距離を取り、行けないと拒絶をしながら。
それでも俺の望み通りに一晩だけさらわれてくれたんじゃないのか?
なのに・・・。なのに俺はそんな彼女を一人宿に置き去りにしたのか・・・・っ!!
自分の愚かさが嫌になる。
愛している、なんてどの口が言えるのか。
幸せを誰より願っているなんて、どの面下げていえるのか。
結局俺は自分のことばかりで、彼女のことなどなにも考えてはいなかった。
苦しい苦しい苦しい・・・。
さらってしまえばよかった。あの時、心のままアリアをさらっていれば少なくても側にはいられたのに。
手を握って、汗を拭いて。俺の名を呼ぶあいつに、ここにいる、と。そう笑いかけて。話を聞いて話をして。
アリアが旅したかったという海にも連れていってやれたのに。
「う・・あああ・・・・!!」
心が痛くて、潰れてしまいそうで。苦しくて苦しくて、顔を上げた。その先に。
部屋の雰囲気にあっていない世界地図が見えた。
【ノア 今どこを旅していますか?】
あの地図を見て、俺のことを思ってくれていたんだろうか。どの辺を旅しているんだろう、と。無事でいるだろうか、と。自分の体が徐々に弱っていく中で。
もっと話をすればよかった。もっと話を聞けばよかった。
嘘をついたりせず、海賊だと打ち明けてさえいれば、少なくてもあんなふうに別れることもなかったのに。アリアならきっと話をちゃんと聞いてくれた。
後悔してもしきれない。
「ううう・・・!!」
喉からでた叫び声を必死で押さえて押さえて。しかしそんなものは簡単に失敗して。
俺はもの心ついてはじめて。声を張り上げて思い切り泣いた。
顔を上げた先に眩しい光が見えた。あまりの眩しさにクラリと視界が揺れ、目を細めた。
《ノア・・・!!》
不意に呼びかけられた。ドクリと心臓が高くなり、俺の細胞全てが反応した。
鈴の音のような、少し高めの綺麗な声。一番聞きたかった大好きな声が俺の名を嬉しそうに呼ぶ。
急いで俺は振り返る。
「アリア!!」
叫んだ瞬間、俺ははっと目を開けた。いつもより随分と高い天井。はあはあとやけに生々しい自分の息遣いが暗い室内に響き渡る。のそりと起き上がれば、自分の頬からまた涙が溺れ落ちた。
頭が痛い。体がだるい。喉がカラカラだ。
・・・・それでもまた生きている。
しぶとい俺の心臓。いったいどうやったらその活動を終えるのか・・・。
「・・・・・・・・ああ、そうか・・・・・」
なぜそんな簡単なことに今まで気付かなかったのか。そうして何故もっとはやくにそれを実行しなかったのか。
長いこと待たせてばかりだった。今もきっと待っている。今度は俺が会いに行かないと・・。
喜びにもにた開放感を覚えながら、腰から刀を引き出そうとして。
そこで、今まで自分がアリアのベットにいつの間にか体を預けるように眠っていたのだと知った。
《幸せになってね》
ふと声が聞こえた気がした。
そうだ、・・・・俺は夢を見ていた・・。どこか明るい場所にあいつが立っていて。そう、なぜだか随分と髪の短くなったあいつが俺を見てニコニコと笑ってた。
どこに行ってたんだよ、と俺は聞いたんだ。ずっと探してたんだぞ、と。
なのにあいつは穏やかに笑うだけでなにも答えてはくれなくて。ただ俺のことをすげぇ大事にものを見るような柔らかい目で見て笑ってた。
そして最期に・・・。
《幸せになってね》
そういって俺の頭を小さな子供にするかのように撫でてくれた。
「・・・・・・無理だよ・・・・・・」
無理だよ、無理だ。
お前がいないのに、俺一人で、いったいどうやって幸せになんてなれっていうんだよ。
「・・・ずりぃよ・・・」
こんなタイミングで夢の中に表れて。俺の逃げ道まで奪って。
それでもただの夢とはどうしても思えなくて。
俺はまたその場にうずくまって朝まで泣いた。




