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アリアの部屋

 アリアの臭いがびっしりと染み付いた部屋。アリアの趣味が良くでた上品だけどかわいらしい部屋。

そして・・・おそらくアリアが最期を迎えたんであろう部屋。そこに俺は一人で立ち尽くしていた。

部外者で、しかも海賊だともちろん分かってるであろうに。その俺をこんな城の最奥まで案内して、しかも見張りの一人もつけないなんて到底信じられなかった。

 もはや働きもしない頭。泣きすぎてぼやける視界。ひどい脱水でふらつく体。なのにまだ生きてる俺。

早く俺の生も終わればいいのに。ぼんやりとそんなことを思いながら視線を巡らせた。

ふらりと何気なく足を踏み出したところで、床に転がっていた何かを弾みで蹴っ飛ばした。コロンと転がるそれはどうやらぬいぐるみのようだ。身を屈めて、拾ってやる。

「・・・・・・あいつ・・・。いったいどういう趣味してんだよ・・・」

拾い上げたそれは、ギョロリとした目が6つもついていて、腕が4本も生えている。口元には鋭い牙がついていてどうみても可愛いとは言いがたい。部屋を見てみれば、同じようになにを表現したかったのか分からないような不気味なぬいぐるみがいくつも飾ってあった。

「なんだよ、これ・・・」

くくっと乾いた笑みが喉からでた。笑ったのは実に数ヶ月ぶりだった。

手に持っていた不気味なぬいぐるみを、飾り棚の開いたスペースに綺麗に並べ直してやる。

 ついで顔を上げた先に、壁に綺麗に張られたそれらを見つけた。赤、黄、白。小さいのに大きいの。

見覚えがある。これは・・・。

「俺が、渡した・・・・」

俺が毎週一輪づつ渡した花。こんなに綺麗に押し花にして、綺麗な台紙にはって。まるで宝物みたいに丁寧に壁に貼付けてある。

「・・・・・・・・っ」

また涙混み上がってきて、俺はそれをなんとか押し止めた。

 机の上には、数冊の本。ぱらりと開けば、それが全て星関係のものだとわかった。

〈俺、星を見るのが好きなんだよな〉

あの船の上で。たわいもない話の中で確か俺はアリアにそう話した。へぇって、興味なさそうに返事をしていたくせに。俺の話を聞いてすこしは興味をもってくれたんだろうか・・・。

 机の正面には、世界地図が張ってあった。それだけ妙に部屋の趣味から浮いて見えて。違和感があった。

 視界を回せば、お姫様らしい天蓋つきのベットが見えた。綺麗に整えられているけれど、アリアはきっとここで・・・。

長いこと苦しんだと言っていた。何度も俺の名を呼んでいたと聞いた。

どうして俺は彼女を連れていかなかったのか。

どうして俺はこんなに馬鹿で、愚かなんだろう。

どうして、どうしてどうして・・・。

・・・・・・・・どうして彼女はここにいないのか・・・。

つーんと鼻の奥がいたんだ。視界がぼやけ、目元が熱くなり、ついには涙が溢れ出した。

アリアが最期を過ごしたんであろうベットに腰掛け、声を殺して泣いた。

そろそろ脱水で死ぬんじゃないかと思うくらい泣いた。

なのにしぶとい俺の心臓はいまだに動きを止めない。これほど痛くて苦しくてしょうがないのに。

 どれほど泣いたのか。動いた拍子に、胸にしまい込んだものがカサリと乾いた音を立てた。

・・・・・・そうだ、手紙・・・。

 ぐすっとみっともなく鼻をすすり上げ、ぼやける視界を励まして。俺は懐から手紙の束を取り出した。

一番上にあったものから丁寧に開けていく。





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