狂気と憎しみのはざまで
あれから何日立ったのか。何をしていても心が踊らない。ずっと捜し求めていた価値のあるお宝を手に入れても。仲間たちと酒を飲み交わしても。これからどうしようかと馬鹿騒ぎをしていても。
心はいつも冷えきっていた。
・・・憎い・・・。俺を騙して笑っていたあいつがただひたすらに憎い・・・。
俺の向けられた全てが嘘だったんだと思うと目に付くもの全てを壊して回りたくなる。
狂気と憎悪の間で俺の心はゆっくりと闇に染まって行った。
それでも夜眠ればあの頃の夢を見た。俺の話を目をキラキラさせて聞いてくれた。ノア、と、そう呼ばれる度に幸福感に満たされた。笑った顔が大好きだった。この笑顔が自分にずっと向けられるならなんでもすると本気で思った。
そうして・・・。目を覚ましては身を切るほどの絶望感に襲われつづけた。
飯がまずくて食えやしねぇ。夜も満足に眠れず、気晴らしに何かをする気にもならない。
心は徐々に擦り減って、気力をなくし・・・。狂ったような頭でそれでも思い出すのはうれしそうに目元を緩ませて笑うあの顔だった。
・・・・・何て言ったんだ・・・。
最後に見たあの時。俺を見送るあの船の上で。あいつはなにを・・・?
こんなに気になるくらいだったら、なぜちゃんと見ておかなかったのか・・・。
3ヶ月が過ぎた。それでも俺の中の憎しみは少しも色あせず、ずっと俺の心を燻り続けている。
最近おかしいですよ、と。部下達に何度も心配をされた。特に口うるさいイアンは俺の顔を見る度に渋い顔で何かいいたげな表情をする。わかってる。このままでいいいわけがない。いい加減に、けりを付けにいかなければいけない。俺をこけにしたあいつに。この憎しみをぶつけにいかなければ。
そうして俺は、半年ぶりにユグレシアへの船に一人飛び乗った。