プロローグ
初投稿です。
趣味で書いているものですが、よかった暇つぶしにでも読んでください。
辛口なコメントは控えてくださると幸です。
・・・・ああ、アリア・・・。 愛している。
目の前に横たわるしなやかな肢体。ベットに広がるプラチナのさらさらの髪。規則正しく揺れる胸。
わずかに苦悶をたたえる美しいその顔。固く閉じられた双ぼう。
早く・・。早く眼を覚ましてくれ。
その美しい瞳の中に入り込みたい。
もう一生俺だけを写していればいい。その頭の中全部俺のことしか考えられなくしてやる。
こんなに強烈に何かを欲しいと思ったのは初めてだった。魂すべてを持って行かれたのだ。他にはなにも見えない。俺のものにしたい。誰にも渡したくない。たとえ世界中すべてを敵に回してでも奪ってやる。
びりっと乱暴に衣服を左右に裂いた。つつましやかな胸と、それを守る白い下着が破れた服の下からのぞき、俺の欲を刺激する。手に入れたい。欲しい。抱きたい。
ごくっと喉がなった。もう眼が覚めるまでなんて待てない。拒まれる前に。泣かれる前に。
手に入れてやる。
おそらくぎらついた眼をしているであろう。俺はそれを承知の上で手を伸ばした。
その先で。何かが指先に絡まった。
煩わしい。
チッと盛大に舌打ちをして、俺は指に絡み付いたそれを振り払った。シャラリと金属の音が静かな室内に響き渡る。それをは眠ったままの彼女の胸の谷間にポトリと落ちた。薄緑色の綺麗な宝石。彼女に首から下げられたペンダント。真ん中に何かの紋章が刻み込まれていた。何気なくそれに視線を落とした俺の心臓は。
ドクリと嫌な音をたてて鳴った。
「マジかよ・・・」
いつもの口癖が思わず口からでた。
「はは・・・。こりゃ逃がしてやらねぇといけねぇなぁ・・・」
すべてを奪ってやるつもりだった。親も、兄弟も、身内すべてからすべて引き離して。故郷を奪い友を奪い、
誰にも頼れない。逃げることもできないあの海の上で。俺だけに執着すればいいと思った。毎日愛日愛してやるつもりだった。宝石、快楽、酒、ドレス。お前が求めるすべてを手に入れてやる。どこからでも奪ってきてやる。愛するお前のために。そう、本気で思っていたのに。
なのに、俺がお前に与えてやれる幸せなどたかが知れている・・・。
お前の・・・。
お姫様としてお前がこれから歩む道を思えば、なんてちっぽけな・・・。
開けた胸の谷間に落ちたペンダント。
ユグレシアの正当な王位継承者だけが持つという翡翠のネックレス。
それがお前の身分を証明している。貴族の出だとは思っていた。さぞいい身分なんだろうな、と。だけどまさかお姫様とはな・・。
未だに眠りつづけるその体にバサリと毛布をかけた。
手に入れろ、と心が強烈に訴えてくる。俺のすべてが彼女を欲していた。今手に入れなければもう二度と手に入らない。お前は俺のものだと。凌辱され、毎晩抱き潰された女に、どこに嫁ぎ先がある。
俺だけを愛して生きろ。
そう思うと同時に・・。
幸せにしてやりてぇ・・。
そう強く思った。泣かせたいわけじゃない。笑っててほしい。あの無邪気に笑う顔が愛しかった。世間知らずで、少しも擦れてない抜けてるところが可愛かった。不思議そうに首を傾げる仕種が好きだった。好奇心で眼をキラキラさせて俺の話を聞く、あの表情にどうしようもなく惹かれた。俺が幸せにしてやるんだと思っていた。俺にしかできないと思っていたし、彼女もそれを望んでいるとわけもなく信じていた。
なのに・・・。
たかが海賊の俺に与えられる幸せ。ユグレシアという大国の頂点に立つものとして得られる幸せ。
そんなもの比べるまでもない。
抱きたい・・・。でも抱かねぇ・・。
欲しいと思うものはすべて手に入れてきた。命知らずだな、と呆れられるほどの無茶をした。
なのに今はそれができない。自分の欲を押さえ込んででも、相手の幸せを願うなんて初めてだった。
そうしてもう一生ない思った。