勇者、お前を戦いから追放する
ちょっと思いついたネタ
「勇者、お前を戦いから追放する」
「な、なんでだよ剣聖!俺の力が無いと魔王は倒せないんだぞ!」
勇者である俺に、剣聖から突如告げられたのは戦力外通告であった。
今、この世界は魔王と呼ばれる魔物たちを統べる恐ろしき存在に脅かされている。
それを倒すため、勇者、剣聖、魔導王、聖女の4名で、各地で暴れている魔物を討伐しながら、魔王の下へと向かっていた。
魔王軍四天王や魔王直属幹部など、どれも強大な敵であった。それらを打ち倒して俺達は遂に魔王の城目前まで来ていた。
後はみんなで力を合わせて、魔王を討伐するだけだって言うのに……なんでこのタイミングで戦力外通告なんだよ!剣聖!
「確かに、お前の聖なる力……浄化が無ければ魔王を倒す事はできない」
「だったら!」
「しかしなぁ……これ、総意なんだよ」
「へ……?」
総意?総意ってまさか!?
そう思ったら、俺達の話しを聞いていた魔導王と聖女が話しに入ってきた。
「私も勇者が魔王討伐の戦いに出るの、はんたーい」
「えっーと……勇者さまは、ね?こう、後方支援というか……そう!応援!応援してて下さい!」
「そ、そんな……」
剣聖だけじゃなく、魔導王や聖女まで……。
ど、どうして?なんでだよー!!
あまりの言われように悲しくなる。俺達はいつだって一緒で、苦楽を共にして来たっていうのに!
「確かに、俺には剣聖のように優れた剣術もない。魔導王のように数多の魔法を使いこなせない。聖女のようにあらゆる傷を癒やし、障壁を張ることもできない。けど……浄化!魔物とかの浄化だけならピカイチだろ!魔王だって浄化しないと倒せないのにどうやって……」
「いやだって……」
「そりゃー、ねぇ……」
「えっと……はい……」
「な、なんだよ?」
皆んなして、なんか可哀想な奴を見るような感じしてるぞ?
一体、何だってんだ?
「勇者。お前の浄化の力はお前の身体から常に発せられてるんだ。それは忘れて無いよな?」
「ああ!勿論だ!」
「ちなみにー、魔法とかにもソレ乗るよね?」
「ああ!俺の身体から放たれた魔法は自動的に浄化の力を秘めている!」
「勇者さま。勇者さまが使っている剣や鎧……装備品にも自動で浄化の力は付与されますよね?」
「ああ!魔物が触れれば大ダメージだぞ!」
「「「…………はぁ」」」
なんで皆んなしてクソデカい溜め息をするんだよ!?
「勇者……俺達はいつだって一緒だ」
「離れたくても、離れられないねー」
「ええ。一心同体……いえ、四心同体ですね」
「当たり前だろ!何てったって……」
「「「「一つの身体に四つの魂が入っているんだから!!」」」
ん?あれ、一つの身体?
あれ?え?も、もしかして……。
「そうだ。俺が剣を振っても」
「あたしが魔法を使っても」
「私が障壁を張っても」
「「「全部、浄化の力が発動する!!」」」
……うん。そういやそうだった。
よく考えたら、これまでも強敵と戦う時は、自然と戦ってなかったな……俺。
「……フッ。剣聖、魔導王、聖女。後は……頼んだぞ!!」
「「「OK」」」
斯くして、魔王は討伐された。
たった一人で魔王を討伐した勇者は、国の英雄として讃えられ、名を残した。
しかし、コロコロ話し方が変わったり、性格が変わったり、女性らしくなったりと……そのおかしな言動から『変人勇者』としても後世に語り継がれたらしい。
仲間はいつだって心に居る