追放された男、SSSランク隠しダンジョンで目覚める
Sランクダンジョン【アルカディア】。それは勇者の称号が与えられた者しか入ることが許されない場所。
ダンジョンとしては最高ランクに位置し、誰もが畏怖の念を抱いていた。
「クソっ……なんだよこの階層主は……!」
「やばいわね……」
「二人とも、ここは俺が引き付ける!」
階層主であるグリフォンに対して、俺たちは苦戦を強いられていた。
相手のランクはもちろんのことSSSランク。正直、勝てる相手ではなかった。
俺――ルイトは他のみんなを守るために一歩前に出る。
俺は勇者パーティ『竜の息吹』の中で一番レベルが低く、正直お荷物であった。
だから少しでも役に立とうと死ぬ気で働いている。
閃光玉を投げつけ、相手の視界を奪う。
これでしばらく相手は動けないはずだ……!
怯んだのを確認した瞬間に、俺は背後にいるリイドとベレアに叫ぶ。
「さぁ! 早く援護を――」
「いや……これ以上は限界だ。引き返すぞ」
パーティのリーダーであるリイドが撤退指示を出す。
援護があれば突破できる可能性もあったが、リーダーの指示だ。
俺はグリフォンから距離を取ろうと、二人のもとへと走ろうとする。
「ルイト、お前は来るな」
「ごめんね、ルイト」
「は……?」
その瞬間、頭が真っ白になった。
撤退指示を出したのに、俺だけ来るなってどういうことだ?
「お前を犠牲にして、僕たちは再度レベル上げをしてここに挑む。我ら勇者パーティのお荷物なんだから、最期は役に立ってくれ」
「どういうことだよ! 俺は確かに荷物かもしれないけど、今の状況とどう関係があるんだ!」
「そのままの意味よ。あなたはレベルが一番低い。そして成長率も悪い。これからもお荷物になるのは確定なんだから、未来の英雄たちのために死んでちょうだい」
「ベレアまで!? ちょっと、本気かよ!」
俺は背後のグリフォンの様子を確認しながら叫ぶ。
なんで……どうして俺がこんな目に合わないといけないんだ!
これまで必死で戦ってきたのに……ここが最期なのか?
「僕はレベル121。ベレアは110だ。でもお前のレベルは55。そもそも勇者の称号を手に入れられたのは、僕たちの荷物持ちだったおまけだ。お前もしかして――僕たちと同列だと思っていたのかい?」
「だ、だけど俺はみんなのために必死でこれまで頑張ってきたじゃないか――」
そう言おうとした瞬間、グリフォンが目を覚ました。
「すまないが、時間切れだ」
リイドはそう言って、魔法を発動する。
起爆魔法。高威力ではあるが、事前に仕込んでいないと発動できないものだ。
それが何故か、俺の足元に仕掛けられていた。
「ルイト、君は勇者パーティから追放処分とする」
「え、どういうことだよ――」
――ドゴォォォォォォォォン!!
地面が爆破され、体が浮遊感に襲われる。
落下する瞬間、冷ややかな二人の顔が見えた。
俺は……裏切られたのか?
自由落下をする中、自分の死を悟る。
たった一階層分落ちるくらいなら死は回避できたかもしれない。
だが、下を見てみると永遠にも思える闇がそこにはあった。
どんなに現実から逃げようとしても、落下は止まらない。
「最期は仲間に裏切られて……終わりなのか」
気がつく頃には、俺の意識は失われていた。
◆
「あ、あれ……?」
目が覚めると、そこはダンジョンの最下層だった。
一目でそうだと分かった理由は、ダンジョンには必ずあるコアが目の前にあったからだ。
……っていうかどうして生きているんだ?
立ち上がろうと手を地面についたら、やけに柔らかかった。
「グリフォンの上に落下したのか……」
俺の下には、グリフォンの死体があった。
どうやらこれで助かったらしい。
「はは、奇跡だな」
思わず変な笑いがこみ上げてくる。
だって、これからどうしろってんだ。
生き残ったところで、ここからは脱出できないだろう。
なんせSランクダンジョンなんだぞ?
勇者しか入れないようなダンジョンで、その荷物持ちが脱出できるわけがない。
しかも辺りを見渡してみても階段、出口なんて一つも見当たらない。
そもそも誰かが入るような作りにはなっていないように見える。
俺はよろめきながら立ち上がる。
せめて、最期にダンジョンのコアを拝もうと思ったからだ。
俺にはSランクダンジョンのコアを破壊する攻撃力なんてないから、あくまで触れるだけ。
後は餓死して終わりだ。
浮かんでいるコアの方に歩き、俺はそれに触れる。
その刹那――
『ようこそ。SSSランク隠しダンジョンへ』
「な、なんだ!?」
急にコアが喋り始めたのだ。
こんなの……見たことがない。
そもそもコアに知性があるのか?
っていうか、今なんて言った。SSSランクだって?
ここって確か……Sランクダンジョンだったよな。
『分析完了。ルイトさんですね。お間違いないなら返事をしてください』
「は、はい」
思わず返事をしてしまった。
まあどうせ死ぬんだ。このまま流されてもいいだろう。
『声帯認識完了。それではあなたに最高のレベルアッププログラムを実施いたします。アドバイザーを用意いたしますか?』
アドバイザー? それにレベルアッププログラムってなんだよ。
まあいいや。どうせなるようになる。
「それじゃあ、アドバイザーをお願いします」
『了解。それでは、アドバイザー精霊を召喚いたします』
コアが回転を始め、パッと周囲が明るくなった。
俺は咄嗟に目をつむり、誰かに肩を叩かれて目がさめた。
「ようこそ! 隠しダンジョンへ!」
「……は?」
目の前に、何故か馬鹿みたいな美少女が現れた。
精霊と言っていたが……まるで人間みたいだ。
「いやー、ここに来る人間なんて千年ぶりだよ!」
「は? え?」
俺の動揺をよそに、精霊は語る。
「私はアイラ! これからよろしくね!」
「は、はぁ……」
俺は……知らないうちにとんでもない場所に来てしまったのかもしれない。
こんな作品もオススメ!新作です!
無自覚な最強剣士(暇人)が神々の迷宮を叩き斬る無双譚!
『器用貧乏だと追放されたSランク剣士、暇だったので神々の迷宮に挑む~無自覚にクリアしていたら知らないうちに最強へと成り上がっていた件。俺は別に英雄なんかじゃない、ただの暇人だ~』
下までスクロールしていただくと、作品ページへのリンクがありますのでそちらから飛んでいただければ!
または下記をコピーしていただけても飛べます!
【https://ncode.syosetu.com/n1512hw/】
絶対に面白いので、何卒【☆☆☆☆☆をタップして★★★★★】に染めて応援、ブックマーク登録をしていただけると嬉しいです!
また本作品も引き続き連載していきますので、よろしくお願いします!