第8話 少ない真実と過去の始まり
今更ですが、補足があります。
知良は海外に行く前に彼女と分かれています。
彼女は元彼女となります。
この作品では、女性を示す(?)彼女としてます。
恋愛の彼女でないです。
外はもう真っ暗で街灯の光が点々と道を照らした。遠くの空で月が笑うように雲から姿を現していた。知良はなんだかそれが自分を嘲笑ってるように感じた。自分のことだけ考えて、今になって後悔しても遅いのにというように。
自分の行いのせいで生まれた知らなかった十年の月日を現実に受け止ようとする心構えをしないといけないと思った。
あれから数時間後経って、知良は個展会場を出て村上の家に帰った。
「ただいま、戻りました」
「おかえり」
村上はひょこっと台所の方から顔を出した。玄関にはカレーのにおいが漂ってきた。
「手洗いうがいしたら、おいで」
そう言われて知良は洗面所に向かった。そこにある鏡を見ると、自分の顔が酷かった。こんな自分を彼女が見たらなんて言うんだろうと思った。独りの海外生活で、よくそう想いながら生活していた癖が出ていた。酷い顔を洗い流すように手洗いうがいのついでに顔も洗った。さっぱりはしなかった。
その後部屋に行くと、テーブルにはカレーやサラダにお酒が置かれていた。
「食べながら、飲みながらの方が落ち着いて話せるんや」
「はい」
知良は自分の席に行くと正座になる。二人は背筋を伸ばして「いただきます」と手を合わせた。黙々と彼らは食べて、それぞれ酒を飲んだ。
「何から話そうか」
村上はスプーンを置き、酒を一口、二口飲んだ。知良もそれにならう。
「菅くんはもう分かってると思うんやけどね。ワシが君と会った日に話した親子のことや。お母さんは、君の彼女さん。子供たちは、今日会った双子の映太くんと映璃ちゃんや」
村上は淡々と言ってるようだが、表情は悩んでいた。知良はそれを黙って聞いていた。
「菅くんたちが別れて、君が出ていった日にワシは彼女さんと会った。商店街のあの肉屋の前でな、泣いてたんや。いつも、かわいい顔でニコってしてる子がやで。肉屋のオッサンの息子と娘が、慌ててな。ワシは彼女さんの後ろで順番を待っていた」
村上は当時のことを思い出すように話し出した。
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