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第5話 ザワツキ

 知良の個展が始まった。地元住民はもちろん、他県から多くの来場者で会場はいっぱいになった。

 

 知良は来場者や知り合いに挨拶周りをしていた。そして、ギャラリートークの時間が始まった。

 

「菅先生が一番好きな作品はどれですか? 」 

 

「僕が好きなのは……」 

 

 知良がそう言って目を向けたのは、一枚の大きな絵だ。そこには他の作品と違って豪華な額がつけらている。しかもこれだけ、作風も違っていた。絵には一人の女性が振り返るようにして笑っていた。その目には誰かが映っているようだ。

 

「菅先生? 」

 

 知良はその絵を見て彼女を思い出していた。そうこの絵の女性は、知良の彼女だ。十年前に別れてから会っていない彼女は、今とは違う姿だろう。

 

「すみません。少し考え事をしていました」  

 

「この作品について、説明をして頂きたいても? 」

 

「もちろんです」  

 

 知良は、笑顔でそう答えた。

 

「タイトルは『また、会えますか』です。彼女は大切な人です。この絵の通りによく笑う人でした。僕は彼女のためにこの絵を描きました」

 

 知良は、話を聞いてくれた方にお辞儀をした。相手にある程度の理解が出来る人がいれば、今の説明で察せれる。タイトルは彼女が目に映る誰かに言った言葉なのか、誰かが彼女に言ったのかを。そして、関係を勘ぐられるのをせける為に、知良は先手を打った。

 

「すみません。説明はこれだけで、それと彼女と僕のことの質問は受け付けません。ご理解ください」

 

「分かりました。説明していただきありがとうございます」


 質問者が、礼を言った。


「あっ!いっぱい絵あるね 」 

 

「シッ!大きい声、出さない約束したでしょ」 

 

 知良は、自分を囲む人たちの隙間から子供が顔を覗かせてるのに気がついた。その女の子はまっすぐと、絵の女性を輝いた目で見ていた。

 

「あっ! 」 

 

「映璃ちゃん、まって! 」 

 

(えい)兄ちゃん、ごめんね」 

 

「いいよ」 

 

 女の子はグイグイと人がいるのを構わずに絵の前で進んでいく。それを男の子は、必死に追いかけた。

 

「お母さんだ! 」 

 

「えっ? 」 

 

 映璃と呼ばれた女の子は、まっすぐ絵の女性に指を指した。映兄ちゃんと呼ばれた男の子は、驚きながら絵を見た。

 

「お母さん……? 」 

 

「ねぇ!お母さんでしょ! 」 

 

「……」 

 

 映兄ちゃんは、黙って下を向いた。映璃は兄の手を引いて、絵の真ん前に行った。

 

「お母さん、きれいだね」 

 

 映璃の声はさっきと違って小さいが、近くにいた人たちのザワツキは隠せない。

 

「映兄ちゃん? 」 

 

 映璃はやっと兄の顔を見ようと覗きんだ。

 

「あの、君たちは彼女のこと知ってるの? 」 

 

 知良は、映璃たちの目線似合うようにしゃがんだ。 

 

「知っ」 

   

「知らない!」 

 

 映璃が言いかけようとしたとき、覆いかぶさるように兄が答えた。その声は何かを誤魔化そうとするように。

読んでいただき、ありがとうございます。

映太と映璃は、仲良しな双子です。

映璃には少し特性を持った女の子で、いつも映太に支えてもらっています。

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