第25話 この役割でまだいたい
この関係に答えが出ない日々を過ごす知良。
知良は、あの日からよく彼女の家を訪れていた。相変わらず、一人では行っていない。
それについては、村上も肉屋の娘も触れていなかった。知良が、いつも彼女の家に行くときの緊張した雰囲気を知っていたからだ。
まだ、答えを出しきれずに必死に自分が彼女のそばにいなかった十年間を知ろうしていたのをわかっていたからだ。
「ねぇ!先生! 」
「あっ、映璃ちゃんどうしたの? 」
「先生が次の番だよ! 」
この日は映璃と映太との三人で絵しりとりをしている。映太がイカを描き、映璃がカバの絵を描いていた。
「先生、今日はボーとしてる。元気ないの? 」
「映太くん、心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」
「ふ〜ん。それより、次描いて」
映太は、知良にだけツンとした態度を取っていた。それには知良以外は珍しくて驚いた。
彼にとっては、すぐに映太たちの母親についてどう思っているのかを応えれなかった自分への罰だと思った。
「バ、は何かあるかな〜」
知良は、口に出しながらアレやコレやと考えた。
「よし、これにしよう」
知良が描いてる途中から、映璃は目を輝かしている。
「え〜とね」
知良が書き描き終わる頃には、映璃はもう描こうとしていた。
「映璃ちゃん、先生の次は僕の番だよ」
映太は知良の次に描く順番を、守ろうとしない妹を止めた。
「ごめんなさい」
知良は、少しずつ二人のことが前とは違う意味合いでかわいく思えてきた。
それがどんな言葉に当てはめていいのかは分からなかった。
いや、分かっていたけど、分かってはいけないと思った。
三人の様子を見る大人たちは、ホッと安心した表情を見せた。無理に父親だと言わずに今まで通りの関係で今はいたほうが、まだ子供の双子にはいいんじゃないかと何度も話し合いで決まった。
そして、知良も焦って父親にならず、先生として双子の隣にいるほうがいいからだ。




