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第21話 知良の父親からの手紙

『知良へ

 お父さんは、罪を犯しました。お母さんや知良のために仕事を頑張って、毎日必死でした。

 お母さんが病気をしていて、早く元気になって欲しいと思いました。

 知良が絵を描くのが好きで、たくさん描いて見せてくれる時の笑顔が見たかったのです。

 お金のことで、学校で嫌なことを言われて欲しくなくて、やってはいけないことをしました。

 お母さんと息子である知良を言い訳に罪を犯しました。

 そして、同期に怪我をさせてしまいました。同期から被害者届けを出さないと言われたときは驚きました。

 その理由は、「無理やりでも話しを聞いて手助けが出来たはずなのにしなかった。それとお前の大丈夫って言葉を信じた俺の罰だ。俺がバランスを崩して倒れて怪我をした。すぐにお前は逃げることも出来るのに、手当てをしてくれたから許す」と言ってくれました。

 同期の言う通りで、誰かに話して助けを求めることが出来たと思います。

それでも、お父さんは家族の笑顔を守るためと罪を犯して、たくさんの人の顔を曇らせました。本当に申し訳けありません。

 お母さんや知良にも、結局は迷惑をかけてしまうことを気づくのが遅かったです。

 知良が、お金のことで学校のことでイジメられないようにしたことなのに、結果的にニュースで取り上げられてイジメられることになってしまいました。

 刑務所で面会に体調が悪い中、お母さんが来てくれました。たくさん、泣いてました。

 これ以上、迷惑をかけないように離婚をすることになりました。

 本当にすみません。真面目に刑に服してます。出所しても、お父さんは二人に会うつもりはありません。 

 二人の幸せをこれ以上邪魔はしたくないです。

 せめてこれだけは言わせてください。知良、生まれてきてくれありがとう。こんなお父さんでごめんね。お父さんを許さなくていいです。恨んでください。                          

                 父より』

 

 村上は手紙にこれ以上滲ませたくないから、涙を拭いとった。

 父から息子への想いを他人が言葉に現せるのはもったいない程に感じたからだ。

 父親は家族を言い訳に罪を犯したことを深く反省している。その中には、少し他人事のように感じる文章もある。人間は、自分で犯した罪を他人のせいだと思い、己の心を少しでも軽くするのだ。

 父親は、二人のために会わないことを決めたという。周りに助けを求めずに、家族のために金が必要だと悪に手を染めた己の戒めのために。 

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