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第3話 勉強

「たしか次の予定は…」

「昼まで勉強していただくご予定となっています」

「ああ、そうだったな。では向かおうか」


 意気揚々と廊下を曲がる。記憶が正しければ勉強に使っていた部屋はこちらの筈である!


「お嬢様、僭越ながら申し上げますと勉強部屋へはこちらの、つまりは反対の角を曲がっていただく必要がございます」

「うっ……わざとだ。君を試していたに過ぎない。優秀だな」

「お褒めいただき至極光栄でございます」

「…」

「お嬢様」

「な、なんだ」

「次お褒めになる際はもう少しゆっくりとお話しいただきたく存じます」

「…わかった」


 …少しトラブルはあったもののなんとか勉強部屋へと辿り着いた。書庫を勉強部屋として利用しており、本が隙間なく収納されている本棚の間にまるで森の中のギャップのように開けられた空間に机が置かれており、そこで勉強している。


「それで、今日のカリキュラムは何だったかな?」

「本日は語学学習としてこちらの本を読んでいただきます」


 メイドはどこからともなく古びた本を取り出した。題名は…ダメだ、擦り切れていてわからない。


「表紙がかなり擦り切れているじゃないか。なんなんだこの本は」

「現在のご頭首様がそのお父上から頂いたと仰せつかっております」

「なんて古いものを引っ張り出してきたんだ…」


 意外にも表紙こそ状態は悪かったが虫食いなどは一切無く、日焼けもそこまで酷くはなかった。



 あるところに、一人のお姫様がいました。お姫様は散歩が好きで来る日も来る日も城下町で散歩をしていました。

 ある日、お姫様はお付きの者無しでの散歩がしたいと思いました。お姫様は使用人や両親の目を盗んで城の外に出ることに成功しました。

 しかし初めて一人で散歩できることに喜んでいるのもつかの間、気がつけば普段は行かないような暗くてジメジメとした路地に入ってしまいました。どこから来たのか、どうやって帰ればよいのかわからなくなってしまったお姫様はとうとう泣き出してしまいました。その泣き声を聞きつけたのか、ある男の子が話しかけてきました。


「どうしたんだい?」

「お家に帰れなくなっちゃったの」

「なんだ、そんなことか。それじゃあ僕が助けてあげる!」


 男の子はお姫様の手を引き、薄暗い路地をスイスイと走っていきあっという間に大きな通りに出ました。


「それじゃあ、僕はここまでだ」

「え?」

「それじゃあね!今度は迷わないでね」


 そう言うと男の子は人混みの中に入っていってしまい、お姫様は男の子を見失ってしまいました。

 気がつけばお姫様はお城にいました。お姫様がいないことに気がついて慌てたお付きの者が必死になって探し出して連れ帰ってきたそうです。お姫様のお父さんとお母さんはお姫様が勝手に散歩に出たことを叱っていましたが、お姫様は男の子のことを考えていたので全く耳に入ってきませんでした。男の子に会いたい。お姫様の願いは日が経つにつれてどんどん大きくなっていきました。

 ある日のことです。いつものように付き添いありでの散歩をしていると、ふと男の子によく似た人影を見かけました。あの男の子だ!そう思ったお姫様は付添の制止を振り切りその人影を追いかけていきました。

 ここまで読んで本から目を離した。…だんだんとお姫様の行動に嫌気がさしてきたからだ。


「一体何なんだこの童話は」

「如何なさいましたか?」

「伝えたいことが全くわからないしなによりこれはお姫様がただ自己中心的なだけじゃないか」

「童話とはそのようなものです」

「そんなものとは思えないが…」

「兎も角、本日の学習はそれをお読みいただくことです。嫌だとしても一回は読破していただきます」


 渋々、もう一度目を本に向けた。だが、一度目を話したときに集中が切れてしまったのか、なかなか内容が頭に入ってこない。仕方ないので適当に文字を目で追っていって読んだふりをしたことでなんとか解放された。次読むのはもう少しマシなのがいいな。


大遅刻でした…

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