第2話 朝食
「失礼します。お嬢様をお連れいたしました」
「うむ、入れ」
凝った装飾の施された白亜の扉を開くと既にリビングには両親は着席しており、何人かの使用人も後ろに控えている。どうやら、俺達が最後だったようだ。
「おはようございます。…少し待たせてしまいましたか?」
「おはよう。そんなことはない。いつも通りだ」
「おはようシルヴィー。さ、座って朝食にしましょう。ヘンリエッタ?」
「只今」
母がパンパンと手を叩くとどこからともなく使用人が現れまたたく間に配膳を済ませていく。あっという間にテーブルには朝食の準備が済まされていた。
今日の献立は、パンとスープ。それにスクランブルエッグとサラダだ。どの料理にもスパイスなどは一切使われておらず、塩や香草などで味付けされている。ひょっとしたらこの世界は大航海時代以前の世界なのかもしれない。
「本日も我らにこのような恵みを賜られたこと、深く感謝いたします」
「我らを本日も見守りくださいますことを祈り申し上げます」
「そして我らは永遠に貴方様と共にありますことをここに誓い申し上げます」
祈りの詞を二言三言述べた後、食事を開始する。未だに教会などの宗教施設へと連れて行かれた覚えはないがこれらの詞から察するに、恐らくは唯一神的信仰体型であるようだ。
そして貴族らしく厳しいテーブルマナーがあり、食事中は誰一人として物音一つすらたてない。粛々と淡々と進んでいく食事には非常に好感が持てる。確かに食事は楽しむものであると言う者もいるが別に全てがそうであるべきではない。ましてや、朝食などは単なる栄養補給的な面が強いのだ。言葉など少なくてよいだろう。…それにしても美味いな。とても塩や香草のみの味付けとは思えない。これが貴族の朝食か。
そして朝食を済ませたあと、父から声をかけられた。
「そういえば、シルヴィーもそろそろ3歳になってもう半年になるのだったな」
「あー…そうですね」
「折角だ、お父さんも教会に用があるし司祭様への御挨拶を済ませておこう」
「司祭様への御挨拶?」
「ああ。3歳になって半年からは教会の祈りへと参加できるようになる。そして、その報告を司祭様にする必要があるんだ」
そうか、もうそんなになるのか。気がつけば3歳になってから半年が過ぎていた。しかし、はっきりとした意識が芽生えたのは極最近である。…今までの言動と食い違いが起きてないことを願おう。
そして、遂に教会へと行けるようになるのか。楽しみだな。
遅刻しやした