61.朝まで二人きり1
リアは、気が急いて仕方ない。
夕食を終え、就寝の準備をし、すべて終われば侍女は下がった。
続き部屋には再度鍵がかけられた。
悩んでいたが、はっとひとつ案が浮かんだ。
(そうだわ、こちら側からだと、鍵がかかっていて出られないけれど、ジークハルト様の主寝室のほうにいれば、廊下に繋がる扉を開けて、出られる)
主寝室は、鍵は内側からしか、かけられないのだ。だから隣の部屋にいればいい。
すると執務を終えたジークハルトが部屋に戻ってくる音がした。
彼は続き部屋に来る。
いつも彼は最初にここの扉を開ける。
「リア、変わったことはなかったか」
さっきまで、共に夕食を摂っていたし、それからは就寝の準備をしただけで、変わったことなどなにもない。
「いいえ、何もありませんけれど」
「そうか。ゆっくり休め。明日、少し話がある」
ジークハルトは扉を閉める。
お風呂に入ったのが、隣室から聞こえる音でなんとなくわかった。
リアはしばらく考えたあと、扉を叩いた。
がちゃりとそれが再度開く。
「まだ起きていたのか?」
彼の髪の毛先は濡れ、透明な雫を作っていた。
「あの、ジークハルト様」
「ん?」
「私、ジークハルト様と同じ部屋で休みたいのです」
彼の部屋の長椅子で休めば、彼が寝静まったあと、内側の鍵を開けて出られる。リアはそう考えた。
ジークハルトは真顔となり、まじまじとリアを見た。
「同じ部屋で?」
「そうですわ」
「本気か」
「本気ですが」
「オレはいいが、君はいいのか」
「もちろんですわ」
「──わかった」
彼は続き部屋の扉を閉める。
「では今日は、この部屋で休む」
(え……)
リアは当惑した。
自分が彼の部屋に行こうと思っていたのだが……。
しかし同じことだ。彼がこちらに来るのであれば、向こう側から鍵はかけられないのだから。
「休む支度はもう終わったか?」
「終わりました」
「オレもだ。じゃあ休もうか。……ああ」
彼は隣の部屋に一旦戻り、呼び鈴を鳴らして侍女を呼んだ。
少ししてやってきた侍女に、ジークハルトは命じた。
「オレがこの部屋に入れば、そちら側から鍵を閉めろ。朝、起こすときまで掛けたままでいい」
「かしこまりました」
仕切りの扉は向こう側から、がちゃりと閉められてしまった。
リアはさあっと青ざめる。
(え……嘘……!? どうしよう……これじゃ朝まで出られないじゃないの……)
「どうしたんだ」
俯いたリアにジークハルトが問い掛ける。
「ジ、ジークハルト様。これでは主寝室の鍵がかけられませんわ。不用心では?」
「夜は衛兵が建物の外に控えているし、オレの宮殿に入りこむ不届き者はいない。何も心配ない」
リアは計画が潰え、内心激しく気落ちした。
(駄目だった……)
「では寝台へ」
そう言って彼がリアの手首を掴んだので、リアはさらに慌てた。
「わ、私は長椅子で休みますわ」
「君を長椅子で休ますことなどできないが」
彼はリアの背に手を回し、寝台へと連れていく。
彼はリアの顔を覗き込んだ。
「君がオレと同じ部屋で休みたいと言ったんだ」
(ど、どうしよう……)
狼狽してしまうと、彼は笑い、リアから手を離した。
「どうせ、オレが眠っている間に、部屋から出ようとでも思ったんだろう」
図星を突かれ、リアは目を泳がせた。
「オレにも鍵は開けられない。一緒にいるしかない。さあ、婚約者のオレと君で、二人きりで、朝まで何をして過ごそうか?」
彼は寝台に腰を下ろし、長い脚を組んだ。




