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闇黒の悪役令嬢は溺愛される  作者: 葵川 真衣
第一部

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57/100

57.閉じ込められる


 ローレンツについてはわからない。イザークは留学に関心を寄せてはいたが……。

 リアは違和感を覚えた。


(同時期に……こんな急に?)


「ああ、それと、君の幼馴染の妹だが」


 ジークハルトは長椅子に座り、表情は冷ややかとなる。

 リアはどきりとした。


「メラニー様が何か?」

「彼女は、人買いに君の誘拐を依頼した疑惑がもたれている。彼女は、そういった輩を金で雇っていた」

「──え?」

「今、監督官が尋問中だ。彼女の友人である伯爵家の嫡男から、密告があったのだ。もうこれ以上、彼女を放っておけないと。おかしな噂を広げていたのも彼女で、他にも色々画策していたようだ。君を屋上庭園から突き落とそうともしていたらしい」


 リアは白くなる。

 屋上庭園で誰かに背を押された気がした。前世では人買いに捕まった。


(けれどそれ……まさか……メラニー様が……!?)


「その様子なら、思い当たるフシがあるようだな。メラニー・クルムのおぞましい所業が事実と判明すれば、彼女に極刑を言い渡す」


 冷酷に告げて、立ち去ろうとしたジークハルトをリアは慌てて引き留めた。


「お待ちください、ジークハルト様!」


 ジークハルトはこちらを振り返る。


「なんだ」

「極刑というのは……どういうことですの」

「噂を流すだけでも、不快だが、メラニー・クルムは数々の残虐な計画を企てていたのだ。死をもって贖ってもらう」


 リアは喉を鳴らした。

 屋上から突き落としたり、誘拐が事実彼女の仕業なのだとしたら、それは罪に問われる行為だ。

 誘拐については今生では行われなかったが、前世は非常に恐ろしい思いをした。

 

 今生、突き落とされたのも、ヴァンがいなければ死んでいた。

 想像すれば寒気がする。

 

 でも彼女はイザークの血を分けた妹なのだ。


「万一、彼女がそういった計画を立てていたとしても、被害者が出たわけではありません」

「出ているじゃないか。オレも君も噂で忌まわしい思いをした。運がよかっただけで、君は亡くなっていたかもしれないんだ。彼女は断罪されなくてはならない」

「大きな被害は出ていません。極刑なんてどうかやめてください」


 妹のメラニーがそんなことになれば、イザークが悲しむ。

 ジークハルトは一旦黙し、リアとの距離をゆっくりと詰めた。


「そういえば、リア」

「……はい……」


 彼はすいと目を眇める。


「君の荷物を従僕に屋敷へ取りに行かせた際、室内が整理され旅支度がされていたとの報告を受けた。今すぐにでも家を出られる状態だったと。長期の旅を想定したものだったと」


 リアは視線を揺らせた。


「君は、オレという婚約者がいながら、帝都を離れる気だったのか」


 口ごもれば、彼は皮肉な笑みを唇に漂わせた。


「やはり、君をここに留め置いたのは正解だったな。舞踏会のあとすぐにでも、旅にでるつもりだったのか?」

「私は……」


 言い当てられ、リアは目を伏せた。


「今後そんなことを考えないことだ。オレの言ったことを決して忘れるな」

 

 彼は念を押し、退室した。




◇◇◇◇◇




 リアが『闇』術者であることを、ジークハルトは誰にも話していないようだった。

 

 皇太子が溺愛する婚約者を、結婚が待ちきれず置いていると、皇宮内では思われている。

 身の回りの世話をしてくれている侍女たちの様子から、そうわかった。

 丁重な扱いだ。

 必要なものは何でも、用意してもらえた。

 

 しかし基本的にリアはこの部屋から一歩も出ることはできない。

 鍵を掛けられているのだ。

 唯一出られるのは、ジークハルトと庭園で過ごすときだけだった。


 食事は侍女によって運ばれてき、トイレもお風呂も部屋に備え付けられ、生活に困ることはない。

 窓から外の景色をみることはできる。

 が、ここに来てすぐ窓に格子が取り付けられた。

 閉じ込められている、と感じてしまう。


(これは軟禁ではないの……?)


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― 新着の感想 ―
[一言] ヤンデレがここにきて爆発したなあ
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