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5.地下室

 三人は顔を見合わせた。

 開いたはいいが、中から冷ややかな空気が流れだしており、どうしようと思ったのだ。

 しかし探求心に抗えず、三人は中へと足を踏み入れた。


 室内は濃い闇が広がっている。

 ランタンの小さな灯りだけでは、隅々までは照らすことはできない。

 

 見回してみるものの、何もないようだ。


「帰ろうか」


 イザークが残念そうに言い、先程の通路に戻ろうとしたとき、パウルが奥を見て呟いた。


「――階段がある」

「え……」


 イザークは立ち止まり方向転換する。奥へと進み、こちらを振り返った。


「本当だ。降りる階段があるぞ」


 こくっとリアは喉を鳴らした。


「ど、どうするの?」

「ここまで来たんだし、降りてみよう」


 イザークが言い、パウルは吐息をついた。


「まあ、気になるね」


 リアは少し恐くも感じた。


(けれど、私も気になるわ……)


「君のことは僕が守るよ、リア」


 こちらを見つめてそう言ったパウルに、リアは頬が熱くなる。


「うん」


 ぎゅっと二人は手を握り合った。


「行こう」


 イザークが階段を降りていく。二人もそれに続いた。

 下に行くにつれ空気はさらに冷える。

 

 長い階段を降りた先に、ひとつの扉がみえた。

 さっきのものと似た模様。


「ここにも魔法陣だね」


 パウルが呟き、イザークは扉を手で押す。


「やっぱり開かない。厳重に閉じられてるな」


 三人、手を置き、魔力を解放すると扉は色を変え、音を立ててゆらりと開いた。

 小さな部屋だ。

 室内に入ると、壁際に台座があった。両手で掴めるほどの大きさの四角い箱が置かれている。それにも魔法陣が描かれていた。


「何だろう?」


 イザークが箱を手に取ろうとした瞬間、白い箱は突如かたかたと、自ら動いたのだ。


(え――)


 中に生き物がいるのだろうか?


 驚き、身構える三人の前で、不思議な箱は床におちた。

 パウルがそれを取ると、蓋が開き、拳大の漆黒のストーンが転がり出る。


「ストーン?」

 

 拾おうとしたイザークの手をパウルが掴んで止めた。


「駄目だ、イザーク。建物全体に漂う気配は、それだ」


 しかし、パウルの手の甲にストーンが触れ、パウルは低く呻いた。


「……っ!」

「うっ……!」

「パウル、イザーク……!?」


 リアが二人に触れた瞬間、びりっとした痺れを感じた。


(――!)

 

 全身がかっと燃えるように熱くなる。

 魔力が、膨れ上がり弾ける。

 

 そのあと一気に身体は冷え、リアはぐらぐらと眩暈がした。

 たぶん、パウルとイザークも同じ状態だ。

 全員ひどい体調不良を覚えていた。


 眉をきつく寄せ、パウルはストーンを手に取り、それを箱に戻した。


「二人とも、出よう、ここから」


 彼はリアとイザークを促し、部屋の外に出た。

 扉を閉め、階段を上る。

 通路まで戻れば、パウルはそこの扉も閉めた。

 

 道を進み、屋外に出ると、パウルはリアとイザークに目をやる。


「二人とも、大丈夫……?」

「ええ……」

「平気だ……」


 本当は、体調は最悪だったけれど、パウルが心配するから二人共そう返事した。


「それより、パウルは?」


 パウルも顔色が悪い。彼も体調が悪いのだ。


「僕は大丈夫。ごめん、こんな道通るんじゃなかった」

「通りたいって言ったのは、俺だ。パウルが謝ることない。すまない」

「私も通ってみたかった……。パウル、ごめんなさい」

「いや。でもあの建物は立ち入り禁止の場所だから、さっきのことを誰にも言わないでほしいんだ」

「了解」

「わかったわ」


 パウルは淡く微笑んだ。


「家まで送るよ、リア」

「いや、俺が送る。家、隣だしさ。パウル、君は早く戻って休んだほうがいい」


 リアもパウルが心配だったので、イザークに同意する。


「うん。パウル、イザークに送ってもらうから」

 

 パウルに来てもらうと、彼は多くの距離を歩かなければならない。


「送る。リアに話があるんだよ」


 彼はセルリアンブルーの瞳を静かに煌めかせる。

 彼がそう言うので、リアはパウルとイザークの二人に送ってもらって帰路についた。

 先に着いたイザークの家の前で立ち止まる。


「じゃあ、またな」


 そう言ってイザークが家に入り、リアはパウルと花壇に寄った。


「リア」


 パウルは手を伸ばして、リアの手を取った。リアはどきりとする。


「パウル?」

「僕と、将来結婚してほしいんだ」

「――え?」 

 

 突然の言葉に、リアは虚を衝かれて、目の前のパウルを仰いだ。


「――結婚……!?」

「そう。将来、僕のお嫁さんになってほしい」


 リアは全身が火照った。


「君のことをずっと好きだった」


 彼はぎゅっとリアの手を握りしめた。


「君のことを、僕が守りたい。大きくなったら、僕と結婚してほしい」


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