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闇黒の悪役令嬢は溺愛される  作者: 葵川 真衣
第一部

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49/100

49.彼らの事情1


「イザーク?」 

 

 間近の、幼馴染の端整な顔をリアは、瞬いて見た。


「私もあなたを信頼しているし好きよ?」


 彼は呟く。


「俺の好きはそういうのじゃなくて……」

「え?」

「……いや」

「ドレス、押さえているからもう大丈夫よ」

「ああ」


 彼は腕を解いて離れた。


「……着るの手伝うよ。リボンを付ければいいのか?」

「ええ」

 

 彼はリアの後ろに回り、ドレスのリボンを結んでくれ、言った。


「ちゃんとできてるか、わかんないけど」


 リアは鏡で、背を映してみる。綺麗にまとまっていた。


「ありがとう、イザーク。助かったわ」

 

 これで帰れる。


「私、屋敷に戻るわ。メラニー様に、帰ったと伝えておいてくれる?」

「了解。馬車まで送るよ」


 それでリアは、彼と部屋から出た。

 お茶会でジークハルトと顔を合わさずにすみ、残念に思うのと安堵が入り混じっていた。

 

 ジークハルトと会えば、感情が揺れて仕方ないのだ。



 

※※※※※




 メラニーは目の前の少年を熱い眼差しで見つめる。


「ふうん、そうなんだ。姉上と君の兄上がね……」

「はい」


(ああ、今日もなんて素敵なのかしら。カミル様……)


 メラニーは、リアの弟──カミル・アーレンスに、恋焦がれていた。


 名門アーレンス公爵家は、美貌の血筋で有名だ。

 

 彼の父も年齢を感じさせない若々しさで、美青年と呼べるほどだし、カミルの叔母も、月の女神と評された綺麗な女性で、現皇帝が皇太子だったときに、一目惚れして婚約が決まったらしい。


 アーレンス家の血を引く、オスカーとカミルの二人は、女性人気が凄まじい。

 メラニーも彼らを慕う一人である。

 オスカーもカミルもメラニー好みだ。どちらも大好きだが、特に弟のカミルが好きだった。

 

 カミルと庭園の彫像前で落ち合い、今日あった出来事を報告していた。

 彼は柔らかい雰囲気の少年で、姉──といっても従兄弟──と似ていない。

 彼ら同様、リアもアーレンス家の人間なので、綺麗だ。だが美少女すぎ、纏う空気が冷たくみえ、悪役っぽい。

 

 そのため誤解されやすい。

 メラニーが、リアにいじめられたと周囲にほのめかせば、信じてもらえる。

 皇太子に近づく女性──特にメラニーをリアがいじめているという噂を、メラニーはせっせと広めていた。


 だがさすがに、リアと一緒に暮らしているカミルやオスカーには嘘だとバレてしまう。前にちらりとそれらしいことを話したら、日頃声を荒げないカミルに叱責されてしまった。

 だから、そういったことは話していない。

 カミルには事実のみを告げている。


(ジークハルト様も素敵だし、皇太子という唯一無二の存在だけど、威圧感があるし)

 

 一つ下のカミルは母性本能を擽られる可愛らしさと、どこか小悪魔的な婀娜っぽさがある。

 そんな彼にメラニーは夢中だ。

 数年前、カミルからジークハルトに近づいてほしいと言われたときはショックだった。

 

 だがカミルの言う通りにすれば、彼と接点をもてる。

 報告する際、他の幾多のライバルを押しのけて彼と話ができる。

 それに皇太子であるジークハルトに気に入られれば、正妃は無理だとしても愛妾になれるかもしれない。

 それはそれで魅力的だ。

 

 メラニーはカミルの言葉に従い、彼の喜ぶ顔もみたくて、逐一報告していた。

 カミルの兄オスカーは、リアと結婚をしたいらしく、ジークハルトとリアの仲をこわすよう、弟のカミルに命じているらしい。その手助けをメラニーはしているのだ。


「ん、ありがとう。よくわかったよ」


 にっこりとカミルは天使のような笑顔を浮かべた。


「ということは、君は殿下に求婚されたってことだね」

「そうです」

「おめでとう。幸せになってね」


 彼はとても嬉しそうで、メラニーは複雑な心持ちとなる。

 愛妾でも、と思っていたところ、ジークハルトに結婚を考えると言われ、歓喜したが、メラニーが恋しているのはカミルなのだった。


「でもわたしが本当に好きなのは……」


 カミルと結ばれるのが、メラニーの最上の願いだ。

 カミルは小首を傾げ、人差し指をメラニーの唇の前に柔らかく立てた。

 彼は優しく囁く。


「君は帝国において、将来、最も高貴な女性となるんだ。何も口にしないで。ね」


 メラニーはぽうっとする。


「じゃあね」

 

 笑顔で優雅に立ち去るその姿を、メラニーはうっとりと見送った。


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― 新着の感想 ―
[一言] この兄弟黒! これはさすがに予想外
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