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闇黒の悪役令嬢は溺愛される  作者: 葵川 真衣
第一部

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47/100

47.お茶会2


「着替えを持ってまいります」

「メラニー様、私はこのまま帰りますので──」


 メラニーは一方的に捲し立てる。


「わたし、ジークハルト様とお話をさせていただいておりますが、なんでもないんです。そのことについてお伝えしたかったんです」

「……ええ」

「ドレスですけど、わたし、以前自分の服を汚してしまったことがあるんですわ。それで念のため、着替えを持ってきているのです。馬車にありますから取ってきますね。そのドレスはお脱ぎください。おひとりでは着替えるのは難しいでしょうし、お手伝いしますから」

「メラニー様、私」

「さ、リア様、お早く! シミになってしまいます」


 彼女は後ろに回り込んで、強引に薔薇色のリボンをするすると解いていく。

 ドレスが落ちそうになり、リアは慌てた。


「メラニー様、私帰りますわ。リボンをつけていただけませんか。着替えずに、このドレスで帰ります」

「そんな! 折角、お茶会にいらしたのに、すぐ帰るなんていけません。わたし、持ってきているドレスは数着ありますし。リア様に合うものをお持ちしますから」


 さらに脱がせようとするメラニーに、リアは冷や汗が滲んだ。


「わかりました。着替えます」


 リアがドレスを両手で抱えて制止すると、メラニーは残念そうにしながらも手を離した。


「ではわたし、着替えを取ってまいりますね」

 

 彼女が退室し、リアは唇から吐息が零れおちた。ドレスを胸の前で抱え、椅子に腰を下ろす。

 

 ジークハルトも出席するし、複雑な思いが交差するので、婚約破棄が間近に迫った今、可能ならば顔を合わせたくない。帰れるものなら帰りたかった。


(着替えなんていいわ……。このドレスのまま、帰ったのに)


 一人でこのドレスを着るのは無理だ。メラニーのドレスを着るか、彼女にこのドレスの着替えを手伝ってもらうよりない。

 頭痛を覚えながら、リアが座っていると、部屋の扉が開いた。


 メラニーが戻ってきたのかと顔を上げれば、そこにいたのはイザークだった。


(え──)


「イザーク……!?」

「リア」


 彼はリアの元まで駆け寄ってくる。


「メラニーから聞いた。具合が悪いんだって? 大丈夫なのか」

「いえ、具合が悪いわけじゃないわ」 

 

 リボンは解かれ、ドレスを手で支えている状態だ。


「ドレスにジュースが零れて、着替えることになって……」


 それでようやく、イザークはリアのドレスが着崩れていることに気付いた。


「あ……」


 彼は赤くなって固まる。


「取り敢えず、ここから出て、イザーク」

「わかった」

「それと、メラニー様が着替えを用意してくれると話していたんだけど、彼女はどこに?」


 イザークはこちらをなるべく見ないように、横を向きながら言った。


「リアが大変だって俺のところに伝えにきたあと、すぐに立ち去ったから、わからないな」

「馬車に着替えがあるって話していたけど」

「馬車? その方向には行ってはいなかったと思う」

 

 では彼女はどこへ消えてしまったのだろう?

 ドレスの件を言わず、リアの体調が悪いとイザークに伝えた理由も不明だ。

 彼女が戻ってこないのだとしたら、ずっとこのままいなければならない……。


「私、このドレスを着直して、このまま帰るわ」

 

 難しいが、合わせ鏡をしてなんとか着るしかない。多少、おかしくなっても構わない。

 リアは椅子から立ちあがる。


「でもリア、ドレスを一人で着ら──」


 リアのドレスがずれそうになり、焦った彼がこちらに足を踏み出した。


「リア」


 彼はリアを包むように抱き寄せ、ドレスが落ちるのを防いでくれた。


「大丈夫か」

「……ええ。ごめんなさい」 

「いや」


 リアはほっとするが、今の体勢に困惑する。

 ドレスが落ちないように、リアはぎゅっと胸の前で掴んだ。

 イザークは潔癖な印象の唇を引き結ぶ。


「──リア、俺……」


 彼の声は掠れている。震える指を、リアの顎にそっとかける。

 顔を持ち上げられ、神秘的な彼の漆黒の瞳に、眼差しを注がれた。


「俺……君が──」


 彼の長い髪がさらさらと頬にかかる。投げうつような瞳で彼は告げる。


「君が好きだ」


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― 新着の感想 ―
[一言] あーあ イザーク、メラニーに良いようにはめられてるな
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