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闇黒の悪役令嬢は溺愛される  作者: 葵川 真衣
第一部

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45/100

45.前世の旅で


 屋敷に帰ったあと、自室でようやく魔物のヴァンと話をすることができた。


「ヴァン、会えて嬉しい。大好きよ」

「うん、ボクもリアが大好き!」


 ヴァンは瞳をきらきらさせる。

 リアは小さな竜のヴァンを抱きしめる。


「抱っこされた!」

「うふふ、抱っこしちゃったわ」


 ころころと、ゆったりした長椅子の上を転がる。

 再び会えて、純粋に嬉しかった。

 が、魔物のことは思い出したが、彼に殺されたときのことはよく覚えていなかった。


「私が呼んだから、来てくれたの?」


 ヴァンはこくんと頷く。


「そうだよ。君がボクを思い出して、呼んでくれたから。それで今生の君に会え、助けることができた。でもね……」

 

 

 ──ヴァンが語ったところによれば、彼は帝国内では力が思うように使えないらしい。

 

 帝国には、いにしえより強い結界が敷かれ、本来、高位の魔物でも入ってこられない。

 しかし契約した主がいる場合は別だ。

 リアが契約していたため、彼はやって来られた。が、契約したのは今生ではない。

 だから力をすべて使うことはできないようだ。

 

 契約済みなため、再度契約を結ぶこともできない。


「君を乗せて、飛翔するくらいはできるよ。けれどボクの全部の力を使って守り切ることはできない。それにもし、皇家直系の人間に弾かれたら、帝国に入ってくることもできなくなる」


 しゅんとするヴァンの背をリアは撫でた。


「屋上からおちたときに助けてくれたでしょう。それだけで充分。あのままだと私、きっと亡くなっていたもの」

「ん、亡くなっていたよ」


 ヴァンは悄然と認めた。


(あの高さから落ちたら、助からないものね……)


「助けてくれてありがとう」

「君を助けるのは当然だもん」

「でも前世で私、あなたに殺されたわよね? どうしてだったのかしら。よく覚えていないの」


 ヴァンは悲痛な眼差しになる。


「……君がボクに命じたからだ。殺すようにね」


 リアは眉をひそめた。


「私、なぜそんなことを命じたりしたの?」


 ヴァンは目を伏せる。


「君は前世旅をしていたでしょ。ボクと契約した後も」

「ええ」


 冒険者になり、各地を旅した。


「君は南西の島国の聖女と出会ったんだ」


 リアはぼんやりと、思い出す。


 南西には、魔物が現れる。

 その島国では神託によって聖女が選ばれ、危険な旅をしなければならなかった。

 大聖堂に辿り着いてはじめて、真の聖女とみなされるのだ。

 

 リアは旅で一人の聖女と出会った。

 彼女を、大聖堂まで送り届けることになったのだ。


「もう少しで辿り着くところだった。ボクたちは到着前、古い廃屋に立ち寄ったんだ。

 けどそこには第一階級の残忍な悪魔がいた。聖女は悪魔に憑りつかれ、取り込まれて死んでしまうところだった。

 彼女を守るため、リアは悪魔を自らの身体に引き受け、ボクに命じた。

 自分を殺し、悪魔を消滅させるようにって。

 高位の悪魔ほど、君に惹かれる。君の魔力にも、紫色の瞳にも。

 低位の悪魔は逆に恐れて近寄れなかったりするけれどね。

 初め、力の強すぎるリアではなく聖女のほうに悪魔は憑りついた。けど君が自ら受け入れたので、嬉々として君に移った。

 ボクは君に命じられ、君を殺し悪魔を消滅させた」

 

 彼の説明とともに、そのときの情景が思い出された。

 

 だからヴァンはリアの心臓を握りつぶしたのだ。


(殺された瞬間を思い出してしまった……)

 

 ヴァンを怖いとは思わず、逆に申し訳なく思う。彼はそのとき、泣いていた。

 リアはヴァンを優しく撫でた。


「ヴァン、ごめんね。嫌なこと頼んでしまった、私」

「そうだよ……君はひどいよ」


 大きな瞳に涙を溜めるヴァンをリアは抱きしめる。


「ごめんなさい」


 くすんとヴァンはぐずり、ぴたりとリアにしがみつく。


「でも、こうしてまた君に会えた」

「あなたには、ずっとその記憶があったの?」


 ヴァンはぷるぷると首を振る。


「ううん。君がボクを思い出してくれた瞬間に、ボクの記憶は蘇った。でも、ずっと気になってて、この帝国の傍をうろうろしていたの」


 彼は尾をくるんと回す。リアはヴァンを腕のなかに包み込んだ。

  

 

 リアはヴァンとその日、一晩中話をした。

 

 しばらく彼はリアの傍にいて、屋敷で一緒に暮らしていたけれど、帝国では力が弱まるようなので、この先旅にでるまでリアはヴァンを、自由にさせることにした。


「君の危機には駆けつけるから。いつでもボクの名を呼んでよね」


 広い空へと羽ばたいていくヴァンを、リアは見送る。

 あと少ししたら、リアは婚約破棄され旅に出る。そのとき会えるだろう。

 

 今、寂しさを感じているのは、ヴァンとしばらく会えないから?

 それとも、ジークハルトとの別れを思ったから?


 舞踏会の日は、刻々と近づいてきている。

 

 覚悟は固めているが、緊張感は日々増していた。


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