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闇黒の悪役令嬢は溺愛される  作者: 葵川 真衣
第一部

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36/100

36.兄弟の心配1


「リア、おまえに幸せになってもらいたい」

「私も、お兄様に幸せになってもらいたいと思っておりますわ」

 

 とてもモテる兄は、どういった相手を選ぶのだろうと、妹として気になっている。将来、自分の義姉となる。けれど、その頃には、きっとリアは帝国を出ているが。


「お兄様は、どういったかたがお好みですの」

「おまえだよ」

「え?」

「私の好みはリアだ」


 オスカーはそう言って、リアの額に口づけた。青みがかった髪の下で、美しい双眸が煌めく。

 リアはじっと兄に視線を返した。

 オスカーはリアの髪を指で梳く。


「私が好きなのはね、おまえだ」

「お兄様……」


(これほど美しい容貌で、さらりと甘い言葉を吐くのだもの。女性に人気なのも当然ね)


 リアはひどく感心してしまった。


「お兄様、流石ですわ……!」

「……何がだい?」


 リアはぐっと拳を握った。


「その調子で、世のご令嬢をメロメロになさるのね……女性が失神してしまうのもわからなくはありませんわ!」


 オスカーに声をかけられて、感極まって失神した女性も実際に今までいたのである。


「けれど、いつか刺されるのではないかと私、心配でもありますわ。どうぞお気を付けください」

 

 リアは以前から思っていたことを口にした。

 オスカーは人気がありすぎるから、女性間で刃傷沙汰になり、兄がそれに巻き込まれてしまうのではと、本気で危惧していた。


「私は、皆にこんなことを言っているのではないんだよ、リア?」


 妹に対しても雰囲気を出してしまうのだから、推して知るべしである。


「おまえは何か、誤解をしているよ?」

「そんなことはありませんわ! 私、お兄様のこと、よく存じています。八歳のときから、兄妹なんですもの!」


 リアがきりっと言えば、オスカーは物憂く両腕を組んだ。


「ふうん。本当に、私のことをおまえはよく知っているかい?」

「もちろんですわ」

「そうだろうか?」

「そうですわ」

「ならいいんだけれど……」


 オスカーは腕を解いて、リアの手を取った。


「だがもっとリアに私のことを知ってもらいたいんだよ。それに、おまえのことを私はもっと知りたい」


 兄はしっかりしてみえて、その実、寂しがり屋なのではないかと感じていたが、やはりそうなのかもしれない。


「兄妹の絆は強いでしょう?」

「では今日何があったか、話してはくれないかい?」


 リアは兄から手をそっと引き抜いた。


「本当に何もないのですわ。もし心配なことがあれば、最初にお兄様に相談します」

 

 そう言い、リアは部屋を後にした。

 

 前世のことは話せない。

 

 

 

 自室へと戻り、一人になると、今後のことをぐるぐると考えてしまう。リアは窓辺に寄り、心を落ち着かせるため美しい庭を眺めた。


(お茶でも飲みましょう)

 

 部屋を出ようとしたとき、扉を叩く音がした。

 兄だろうか。

 扉を開ければ、弟のカミルの姿があった。


「カミル」

「姉上」


 カミルは可憐な笑顔をみせる。


「ぼく、タルトを作ったんだ。一緒に食べない?」


 カミルは料理が得意で、お菓子をよく作る。

 ワゴンに甘い香りの漂うフルーツのタルトレットと、紅茶のセットが載っていた。


「ありがとう、嬉しいわ。丁度、お茶にしようと思っていたの」

「よかった」

 

 リアはカミルを室内に通し、一緒にテーブルについた。

 

 カミルお手製のタルトレットは、サクッと生地が口内で崩れ、苺やベリーは甘酸っぱく、生クリームととてもよく合い、美味しかった。


「本当にカミルは料理上手ね」


 カミルはにこにこと笑う。


「ふふ。姉上は、甘いものが好きだから。ぼく、お菓子作りの腕を磨いているんだ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 鈍いなぁ 相変わらず
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